
アイスクリームや冷凍食品をしっかり冷やしてくれるドライアイス。飲食店のデリバリーサービスやテイクアウトを利用する際にありがたい存在ですが、処分方法にふと迷ったことはありませんか?
ドライアイスは、屋外で処理するのが簡単かつ安全な方法です。捨て方そのものはとても簡単ですが、間違った捨て方や取り扱いをしてしまうと怪我や体調不良を起こしたり、家の設備を傷めたりする可能性もあります。
この記事では、ドライアイスを正しく屋外で処理する方法を解説します。早く処理するコツややってはいけない捨て方も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
ドライアイスの正しい捨て方は「屋外で放置」
ドライアイスを処分したいときは、屋外に数時間放置しておくのがおすすめです。簡単で後片付けもラクなうえ、安全に処分できます。
処分したいドライアイスは、屋外の直射日光が当たらない場所に置いておきましょう。地面やコンクリートに直置きでもよいですが、発泡スチロールや段ボールなどに入れておくとわかりやすいです。
屋外に放置していると、早ければ3時間程度で消えてしまいます。ここでは、このような捨て方をする理由を解説します。
ドライアイスは「固体化した二酸化炭素」
「なぜドライアイスは『屋外に放置』で処分できるの?」
この理由は、ドライアイスが元をたどれば「固体化した二酸化炭素」だからです。
ドライアイスは、二酸化炭素から不純物を取り除いた「液化炭酸ガス」という液体をプレス機で圧縮した物質です。ドライアイスには次のような性質があります。
- 固体から直接気体(二酸化炭素)に変わる
- 極めて低温
- 溶け始めると白い煙を発生させる
ドライアイスは溶けても液体には戻らず、直接気体に変わる物質です。固体が直接気体に変わることを「昇華」といいます。
氷が溶けると水が残りますが、ドライアイスは何も残りません。自然と空気中の二酸化炭素に戻るため、ドライアイスは屋外に放置しておくと処分できるのです。
ちなみに、氷が基本的に0℃なのに対し、ドライアイスはマイナス78.5℃です。非常に冷たい固体のため、食品や医療品の保存・輸送に活用されています。特に料理のテイクアウトやデリバリーサービスを利用する機会が増えた近年は、多くのドライアイスが家庭に届くようになりました。
また、ドライアイスから立ちのぼる白い煙は、急速に冷やされた空気中の水蒸気。この白い煙を活かして、ドライアイスはイベントでの演出や理科の実験にも使われています。
【参考資料】
液体 気体 固体 自然の中で姿を変える水|国立極地研究所
12月6日の土曜楽交!(第4期)|和歌山大学
ドライアイスをごみ回収に出せないのはなぜ?
ドライアイスは、通常の家庭ごみのようにごみ回収に出すことができません。
ドライアイスは固体から気体に変わると体積が約750倍に膨らみます。そのため、例えばごみ袋に入れて回収に出すと、そのうちに膨らんでパンパンになってしまいます。回収場所や収集車内で破裂すれば、近隣住民や作業員の方が怪我をしかねません。
また、収集車内でごみ袋が破裂したり二酸化炭素が漏れ出したりすると、作業員の方が酸欠を起こしてしまう恐れもあります。空間の二酸化炭素濃度が上がると、酸素を十分に吸えなくなるためです。
ごみ回収車ではないものの、ドライアイスの運搬中に車内の換気ができていなかったために運転者の方が意識障害を起こして亡くなるという事故も起こっています。ごみ回収作業員の方をこのような危険にさらさないためにも、ドライアイスはごみ回収に出さず、昇華させて処分してください。
【参考資料】
ワゴン車でドライアイスの運搬作業中の酸欠|職場のあんぜんサイト|厚生労働省
ドライアイスを処理する際のポイント
ドライアイスの処分は「屋外で放置」といっても、「いったい屋外のどこに置けばいいの?」と悩む方も多いかもしれません。また、できるだけ早く気化させるコツも知っておきたいですよね。
ここでは、ドライアイスを溶かすために置く場所の選び方と早く気化させるコツをご紹介します。
ドライアイスを放置する場所の選び方
ドライアイスは、風がよく通り抜ける日陰に置くのがおすすめです。屋外でも屋根のある場所や軒先、ベランダなどがよいでしょう。
直射日光が当たる場所では、急速に気化が進むため二酸化炭素が過剰に発生します。屋外であっても、その場に二酸化炭素が急速に増えると体調不良を招く恐れもあるため、日陰に置いてゆっくり溶かすようにしましょう。
また、ドライアイスが水に濡れると白い煙が発生します。そのため、屋外に放置しているドライアイスに雨が降ると煙が立ちのぼり、はた目からは火事が起きているように見えかねません。近所の方に要らぬ心配をかけないために、突然の雨にも濡れないような場所を選んでください。
「通気性がよい日陰で、雨に濡れない場所が思い当たらない…」とお困りの方は、発泡スチロールや保冷ボックスに入れて屋外に置いておくのがおすすめです。少し時間はかかりますが、ふたの隙間から少しずつ二酸化炭素が漏れるため安全に処理できます。
ドライアイスから発生する二酸化炭素は、蚊を集めやすいです。処理の際は刺されないように対策しておくとよいでしょう。
ドライアイスを早く気化させるコツ
ドライアイスを早く気化させるコツは、表面積を増やすことです。空気に触れる面積を増やすと、溶けきる時間を短縮できます。
ドライアイスの表面積を増やすには、次の2つの方法がおすすめです。
- ハンマーなどで砕いて小さくする
- 1つひとつを離して置く
ドライアイスを砕いて小さくすると、体積に対しての表面積をぐっと大きくできます。
しかし、ドライアイスに直接ハンマーを叩きつけるのはNGです。飛び散って顔や身体に付着する恐れがあります。新聞紙や古布で包んで飛び散らないように保護した後、ハンマーで砕くようにしてください。
また、複数のドライアイスをひとかたまりにして置くと、空気に触れる面積が小さくなってしまいます。早く気化させるためには、1つひとつの距離をきちんととって置くとよいでしょう。
ちなみに、ドライアイスの気化速度は、気温や湿度、風の強さなどその日の天候に大きく左右されます。気温が高い日や風が強い日にはより短時間で処分できるので、処理の際は天気も気にしてみてください。
ドライアイスを水につける場合は換気を徹底
先にも触れたように、ドライアイスは水に触れると白い煙を発します。
そのぶん早く溶けるため、洗面器やボウルに張った水に入れて処分するのもおすすめです。プラスチックやシリコン、耐熱ガラスなど、急激な温度変化にも強い素材の容器を選びましょう。
水につけるのであれば、キッチンや洗面台、お風呂場などで処理すると簡単そうですよね。確かに、屋内の水回りでドライアイスを水につければ、外に出ずに済むうえ片付けも簡単です。
しかし、水につける場合は気化の速度が早いため、急速に空間の二酸化炭素濃度が上がります。また、二酸化炭素は空気の1.5倍重い気体です。そのため下方に溜まりやすく、空間に留まりやすい性質があります。
屋内で処理する場合は部屋の換気を徹底し、二酸化炭素が充満しないように気を付けてください。
二酸化炭素が溜まっている室内で過ごすと、二酸化炭素中毒による酸欠や気分不良、頭痛・めまいなどを起こしかねません。職場環境に関連する労働安全衛生法でも、「二酸化炭素濃度が1.5%の環境には立ち入り禁止」と定められています。ご家庭でドライアイスを水に浸ける場合も、二酸化炭素が溜まらないように窓やドアを開け放ち、換気扇を回すようにしましょう。
【参考資料】
二酸化炭素の特性について|経済産業省
倉庫内の保管庫内でドライアイスを収納する作業で酸素欠乏症に罹る||職場あんぜんサイト|厚生労働省
ドライアイスは絶対に素手で触らない!
ドライアイスを処理する際、換気の徹底と合わせて注意してほしいのは「素手で触らない」ことです。
ドライアイスは、マイナス78.5℃の「超低温」の物質。うっかり素手で触ると、皮膚にくっついて離れなくなってしまいます。水ぶくれや凍傷を起こす恐れがあるため、絶対に素手では触らないでください。
スコップやトングを使って処理するのが1番よいですが、どうしても手で触らなければならない場合は、厚手のゴム手袋や革手袋を使いましょう。手袋類がなければ、乾いた厚手のタオルで包むように掴むのもおすすめです。
万が一触れてしまった場合は、その部分をぬるま湯に浸してゆっくり温めてください。やけどのような症状が起きますが、冷水で冷やすのはNGです。
ドライアイスが皮膚にくっついても無理やり取らずに、温めながら少しずつ剥がします。痛みや水ぶくれ、皮膚の変色を起こした場合はすぐに病院を受診しましょう。
ペットや子供にも触らせないように注意
ドライアイスは、少し触れただけでも怪我をする可能性があります。小さなお子さんやペットがいるご家庭では、特に注意が必要です。
溶けていくドライアイスからはモクモクと白い煙が湧きあがるため、小さなお子さんの興味を惹きやすいです。気になって触りたくなる可能性は十分ありますよね。また、ペットが鼻を近づけたり、なめたりしてしまうこともあり得ます。
お子さんやペットを危険にさらさないためにも、ドライアイスを処理する際は十分気を付けてください。お子さんの手が届かないところや、ペットが近寄らない場所で溶かすとよいでしょう。
やってはいけないドライアイスの捨て方3つ
繰り返しになりますが、ドライアイスは溶ける際に二酸化炭素を発生させる超低温の物質です。そのため、やってはいけない処分方法が3つあります。
- 密閉容器に入れる
- お湯をかける
- シンクや排水口に流す
ここからは、この3つの方法がNGの理由を解説します。
NG捨て方① 密閉容器に入れる
先にご紹介したように、ドライアイスは気化すると体積が約750倍に膨らみます。そのため、密閉容器に入れて処理するのはNGです。
通常、例えば発泡スチロールの箱や保冷ボックスにドライアイスを入れていても、二酸化炭素はその隙間から自然に抜けていきます。
しかし、密閉容器に入れると気体が抜けません。そのまま放置していると、ドライアイスが溶けるにしたがって容器内の圧力が高まり、破裂してしまう恐れもあります。
怪我を防ぐためにも、ドライアイスは密閉容器ではなく発泡スチロールなどの通気性がよい容器に入れましょう。ドライアイスを使ってお子さんと遊んだり実験をしたりする場合も、ペットボトルやガラス瓶、魔法瓶などは使わないようにしてください。
NG捨て方② お湯をかける
ドライアイスを早く溶かそうとして、お湯をかけるのはNGです。
ドライアイスと熱湯の温度差は約179℃もあります。お湯をかけると一気に気化が進み、大量の二酸化炭素が発生します。ドライアイスや熱湯が飛び散るため、大変危険です。
早く溶かしたい場合は、先ほどご紹介したようにドライアイスを細かく砕いて水につけるとよいでしょう。
NG捨て方③ シンクや排水口に流す
キッチンのシンクや排水口に直接ドライアイスを流すのは避けましょう。
多くのシンクに使われているステンレスや排水管の塩化ビニルは、急激な温度変化に弱い素材です。ドライアイスを流すと表面が急速に冷え、ひび割れや破裂を引き起こす恐れがあります。
生活に支障が出るうえ修理費用もかかるため、ドライアイスはシンクや排水口に流さずに溶かして処理しましょう。
まとめ
ドライアイスを正しく屋外で処理する方法を解説しました。
ドライアイスは、屋外に放置すれば数時間で自然に消えてしまいます。置き場所は直射日光が当たらない、風通しのよい場所がベストです。
非常に冷たい物質のため、肌や目に当たると怪我をする恐れがあります。取扱いの際はスコップやトング、厚手のゴム手袋などを使用して十分に注意しましょう。













