
引越しや遺品整理のために写真を整理する際、ある程度は捨てなければと思いつつ「写真を捨てるのって、縁起が悪そう…」と悩んだことがある方も多いのではないでしょうか?
また、嫌な思い出がある写真であれば「早く捨てたいけれど、捨てると良くないことが起こりそう」と不安を感じる方も多いはずです。処分するのに抵抗がある品物は、できるだけ縁起が良い捨て方をしたいものですよね。
この記事では、写真を捨てるのは縁起が悪いのか、また縁起が良い捨て方の1つとして「お焚き上げ」について解説します。家庭ごみとして写真を捨てる方法や、個人情報に配慮した捨て方も詳しく紹介しているので、ぜひご覧ください。
目次
写真の処分は「縁起が悪いこと」?
写真を捨てるのは、必ずしも縁起が悪いことではありません。
日本には、古くから「大切にしてきたものには魂が宿る」という考え方がありました。人形やぬいぐるみ、亡くなった方の愛用品などにも、魂の存在を感じて「捨てるのに抵抗がある…」という方も多いはずです。
写真には、撮影者や写っている方の大切な思い出が残っています。また、写真という技術が日本に入ってきたころに「写真に撮られると魂を抜かれる」という迷信が生まれたのも有名な話です。このように考えると、魂が宿った写真を捨てるのに「縁起でもない」「バチが当たりそう」と感じてしまうのも納得できるでしょう。
このような考え方がある一方、現在もこだわる方が多い「風水」では写真の処分は運気を上げる行いだとされています。
風水では、空間によい気(エネルギー)が流れていることを重視します。よい気を流すことがその空間のバランスを保ち、健康や運気の上昇をもたらすという考え方です。例えば「見るだけで心が沈む」「嫌な気持ちが蘇ってくる」写真を家に保管し続けるのは、悪い気をわざわざ引き留めておくようなものだとも考えられます。
さらに、近年流行りの「断捨離」でも同じように考えます。本来の「断捨離」はヨガの思想に基づく言葉で、「不要なものを断ち、捨て、執着から離れる」という精神を鍛えるステップを端的に表しています。掃除・片付けにおける断捨離もあわせて考えてみると、写真があることで心が思い出や記憶に占領されているともいえるのではないでしょうか。
これまで捨てられなかった写真を「捨ててもいいかな」と思えるようになったのは、新たなステージに進んだ証です。大切な思い出をこれからも増やしていくために、写真を捨てるのはむしろ縁起がいい行いだとも考えられます。
【参考資料】
捨|生活の中の仏教用語|教員エッセイ|大谷大学
捨てる写真・残す写真を選ぶ基準
「写真がたくさんあって、どれを残せばよいかわからない」というときは、次の基準で選ぶと判断しやすいです。
- 撮影当時のころを思い出すと温かい気持ちになれるもの
- いい思い出があるもの
- 被写体の写りがよいもの
遺品整理やご実家の片付けの際には、亡くなった大切な方の写真を整理することもあるでしょう。その場合でも、「この写真、楽しそうだな」「いい笑顔だな」と思えるものを手元に残すのがおすすめです。
反対に、処分候補となる写真は次の基準で選べます。
- 嫌な思い出があるもの
- なぜ撮影したのかよく分からないもの
- 同じような写真が何枚もあるもの
- 写りが悪いもの、ピンボケしているもの
「捨てると後悔しそう…」と心配な方は、写真をデジタル化・データ化してパソコンやオンラインストレージに保存しましょう。現在は、古い写真やネガフィルムをデジタル化してくれるサービスもあります。スマホの画像編集アプリでもある程度データにできるため、ぜひチャレンジしてみてください。
縁起の良し悪しが気になる方は「お焚き上げ」がおすすめ
縁起の良し悪しが気になる方、写真をただのごみとして処分することに抵抗がある方は、「お焚き上げ」で供養してみてください。
お焚き上げとは、神仏に関わるものや故人の遺品、不要になった愛用品など、大切にしてきた品物を手放すための儀式です。今までの感謝を込めて祈祷や読経を行い、品物を供養して焼却します。品物に宿った魂や思いを天に還す、または故人の大切なものを天に届けるため、古くから日本で行われてきた慣習です。
大切な写真だけでなく、嫌な思い出が残る写真の処分にもお焚き上げは向いています。嫌な出来事が起きたとき、関連する品物をお焚き上げすることで「悪縁を断つ」と考えられているためです。「当時と同じ思いはしたくない」という方も、ぜひ検討してみてください。
写真をお焚き上げで供養する方法4つ
写真をお焚き上げで供養する方法は、主に次の4つです。
- 神社・お寺の祭祀に参加
- 神社・お寺に個別供養・合同供養を依頼
- お焚き上げ専門業者を利用
- 自分でお焚き上げ・供養
これから1つずつ詳しく解説します。
ちなみに、お焚き上げの対象となるのは次のような品物です。
神仏に関わる物 | お札、お守り、絵馬、破魔矢など |
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季節の飾り物 | 門松・しめ縄などの正月飾り 新盆用の白提灯や色付きの盆提灯など |
祈りや願いが込められた物 | だるま、千羽鶴など |
故人に関係がある物 | 亡くなった方の愛用品、形見など |
そのほか、大切にしてきた物 | 人形・ぬいぐるみ、日記・手紙、パワーストーンなど |
神社・お寺や業者によって違いがあるため、事前に問い合わせて確認しておきましょう。
神社・お寺の祭祀に参加
写真は、神社やお寺で定期的に開催される祭祀でお焚き上げしてもらえます。
祭祀の中でも、1月15日または14~16日に実施される「どんど焼き」はお正月飾りや前年分のお札・お守り、破魔矢などをお焚き上げする行事です。どんど焼きの炎で焼いた餅や団子は、食べると1年間健康でいられる縁起物とされています。
正月飾りのみを対象とする神社・お寺もあるものの、どんど焼きのタイミングで写真の供養を依頼するとほかの方法よりもコストがかかりません。無料で対応してもらえるところもあるため、ぜひお近くの神社・お寺をチェックしてみてください。
神社・お寺だけでなく、自治体が主体となってどんど焼きを開催する地域もあります。例として、以下に栃木県那珂川町と福岡市のWebページをご紹介します。
【参考資料】
伝統行事「どんど焼き」|那珂川町
無病息災を祈って「どんど焼き」@石丸校区|ふくコミ
神社・お寺に個別供養や合同供養を依頼
行事としてだけでなく、個別供養や合同供養としてのお焚き上げに対応している神社・お寺もあります。個別供養は依頼主1人分、合同供養は複数人分の品物を同時にお焚き上げする方法です。
供養の際は、お焚き上げの料金をのし袋に入れて渡します。ホームページなどで金額が明示されている場合は、指定の金額を渡してください。明示されていない場合の決まりはないものの、それぞれの目安は次の金額です。
- 個別供養…2.5~7万円
- 合同供養…3,000~1万円
神社やお寺に問い合わせをしたときに、料金についても確認しておくと安心です。
のし袋の表書きには、神社の場合は「玉串料」「初穂料」「御焚上料」、お寺であれば「お布施」と書きます。水引などは不要ですが、白無地の封筒を用意しておきましょう。
お焚き上げ専門業者を利用
「忙しくて、神社やお寺になかなか出向けない…」
このような方には、お焚き上げ専門業者の利用もおすすめです。供養したい品物を業者に郵送すると、提携している神社やお寺でしっかりとお焚き上げをしてもらえます。基本的に年間通して受け付けているため、時期を逃してしまう心配もありません。
手続きも、申し込み後に送られてきた箱やパックに品物を詰めて送るだけで完了します。各業者さまざまな大きさの箱やパックを取り揃えているため、処分したい品物の量に合わせて選びましょう。申し込み時に供養したい品物の量や種類を伝えておくとより安心です。
写真をお焚き上げしたい場合は、まとまった量になるとは限りませんよね。1枚、または数枚の写真を供養するために「神社やお寺まで出向くのは仰々しい」と感じる方も多いはずです。このような場合は、お焚き上げ専門業者の中でもレターパックやスマートレターでの郵送を受け付けているところを選ぶとよいでしょう。
デメリットは、神社やお寺への直接依頼と比べると費用がかかること、業者選びに注意する必要があることです。サービス内容や会社情報、ネットでの口コミなどはしっかりチェックしておいてください。
自分でお焚き上げ・供養
簡易的な供養として、自分でお焚き上げをすることもできます。写真数枚程度であれば、自宅で小さく供養してしまうのもおすすめです。
自宅でお焚き上げをする手順は次のとおりです。残った灰はポリ袋に入れて、可燃ごみとして処分しましょう。
- 白い紙で写真と塩を包む
- 火をつけ、感謝して手を合わせる
- 火が消えるまで見届ける
ただし、大量の写真やアルバムを自宅で燃やすのはNGです。廃棄物処理法における「野焼き(野外焼却)」とみなされるため、自宅敷地内であっても罰則を課される恐れがあります。供養したい写真が多い場合は、先にご紹介したように神社やお寺、業者にお焚き上げを依頼しましょう。
【参考資料】
野焼きは原則禁止ですが例外があります|香南市
家庭ごみとしての写真の捨て方
一般的に、写真は可燃ごみとして処分できます。縁起の良し悪しが気にならない場合は、通常の可燃ごみの日に回収に出したりごみ処理施設に持ち込んだりするとよいでしょう。
「紙類だから、資源ごみに出せるのかな?」と思う方もいるかもしれませんが、古紙・新聞の間に写真を混ぜるのはNGです。
写真に使われている紙は、耐水性があるため処理が難しく、リサイクルできません。インクを完全に除去できないため、古紙と一緒にリサイクルすると再生紙の品質を落としてしまいます。資源ごみではなく、ほかの可燃ごみと一緒に回収に出すようにしましょう。
【参考資料】
紙類の禁忌品(入れてはいけないもの)|宇都宮市
捨て方に悩んだら不用品回収業者の利用もおすすめ
写真の捨て方に悩む場合は、不用品回収業者の利用も検討してみてください。
不用品回収業者では、写真やアルバムだけでなくほかの品物もあわせて引き取ってもらえます。引越しで慌ただしいときや、生前整理・遺品整理などご実家の片付けの際には特におすすめです。
しかし、業者の中には引き取った不用品を不法投棄したり違法に輸出したりする悪質な業者も存在します。極端に安い価格や無料での不用品回収を謳う業者には特に注意しましょう。
信頼できる業者を見極めるには、「一般廃棄物収集運搬許可証」を持っているか(もしくは、許可を持った業者に委託しているか)どうかが重要です。業者のホームページやパンフレットをチェックしてみてください。必須資格ではないものの、「遺品整理士」の資格の有無まで確認できるとより安心です。
写真を捨てる際には個人情報漏洩に注意!
ご自分や周囲の人が写った写真は「個人情報」に含まれます。不用意に捨てると、例えば次のようなリスクも起こり得ます。
- 写真の背景から、撮影場所や何をしていたかを特定される
- 制服などから通学している学校が特定される
- 住所の特定に至る
ご自分や大切な方々を危険にさらさないためにも、処分の際には十分に注意してください。
個人情報を保護する写真の捨て方・対策
処分の際の個人情報対策としては、次の4つが効果的です。
- シュレッダーにかける・はさみで切る
- 塩素系漂白剤に漬けてインクを抜く
- 色つきの袋や紙で包む
- 粘着テープを巻く
写真から個人情報が漏れないようにするには、誰が写っているのか分からないようにする必要があります。
シュレッダーやはさみで細かくする場合は、何が写っているのか分からない大きさまで切りましょう。写真が大量にあるとはさみだけでは大変なので、この機会に手動式のシュレッダーを用意するのもおすすめです。
キッチンやトイレ掃除用の塩素系漂白剤をぬるま湯に溶かし、写真を30分ほど漬けておくとインクが溶けて真っ白になります。白くなった写真の用紙は、可燃ごみとして処分可能です。手指を守るためにゴム手袋をつけ、換気をしながら作業しましょう。
まとめ
写真を捨てるのは縁起が悪いのか、お焚き上げや家庭ごみとして捨てる際のポイントと合わせて解説しました。
「大切にしてきた品物には魂が宿る」という日本古来の考え方をふまえると、写真を捨てるのに抵抗を感じる理由がわかります。
しかし、インテリアにおいて気にする方も多い風水やヨガの思想では、昔の記憶が詰まった写真を保管していることで気の流れが滞ってしまうと考えます。どちらの考え方がしっくりくるかは人それぞれなので、ご自分の気持ちを優先するようにしましょう。