産業廃棄物収集運搬とは?産業廃棄物を扱う作業員には資格は必要?

産業廃棄物は、企業や事業活動から出るゴミで、家庭から出るゴミとは異なる方法で処理されます。事業者は、産業廃棄物を適切に管理するために、専門の資格を持った責任者を設置しなければなりません。

さらに、産業廃棄物の収集、運搬、処分を行うためには、特別な許可と資格が必要です。

この記事では、産業廃棄物収集運搬とは具体的にどんなことをするのかや、産業廃棄物の処理に必要な資格などについて解説します。

産業廃棄物収集運搬とは?

産業廃棄物収集運搬とは、企業から発生する産業廃棄物を収集し、運搬する業務を指します。

この業務を行う事業者は「産業廃棄物収集運搬業」と称されますが、誰もがこの業務を行えるわけではありません。事業者は、都道府県知事から交付される「産業廃棄物収集運搬業許可」を取得する必要があります。

排出事業者が産業廃棄物の収集を業者に委託する場合は、必ずこの許可を持つ業者に依頼しなければなりません。

さらに、廃棄物がどのように処理されるかを適切に管理するために、「マニフェスト」という書類を発行することが求められます。

これにより、法令遵守の観点からも適切な対応が必要となります。

産業廃棄物とは?

産業廃棄物は、企業や工場などの事業活動に伴って発生する廃棄物のことで、一般家庭から出る家庭ごみとは区別されています。

産業廃棄物には、有害なものも含まれることがあるため、適切な処理が求められます。

具体的な産業廃棄物の種類は以下の通り。

全ての業種に共通しているもの(12種類) 燃えがら/汚泥/廃油/廃アルカリ/廃プラスチック類/ゴムくず/ガラス・コンクリート・陶磁器くず/絋さい/瓦礫類/ばいじん
特定の事業活動に伴う廃棄物(7種類) 紙くず/木くず/繊維くず/動物系固形不用物/動植物性残渣/動物のふん尿/動物の死体
その他 上記に該当しないもの(コンクリート固型化物など)

参考 環境都環境局 「産業廃棄物の種類

特定の事業に伴う廃棄物は、排出する業種によって扱いが変わるものもあり注意が必要です。

マニフェストとは?

マニフェストとは、産業廃棄物を業者に処理してもらう際に必要な専用の伝票のことです。

この伝票は「産業廃棄物管理票」とも呼ばれています。排出事業者は、マニフェストを産業廃棄物と一緒に業者に渡すことで、廃棄物に関する情報を正確に伝え、その処理が適切に行われているかを確認します。

マニフェストには紙の形式と電子の形式の2種類があり、特に特別管理産業廃棄物を多く排出する事業者は、電子マニフェストの利用が法律で義務付けられています。

マニフェストの管理は複雑になりがちですが、義務のない事業者でも電子マニフェストを利用することで、管理が楽になり、多くのメリットがあります。

産業廃棄物収集運搬業に関連した資格・許可の概要

産業廃棄物収集運搬業に関する資格や許可は、大きく分けて次の2つがあります。

  1. 国家資格:産業廃棄物の管理者としての資格
  2. 都道府県知事の許可:産業廃棄物の収集や運搬、処理を行うための許可

この章では、産業廃棄物収集運搬業に関する資格や許可について見ていきましょう。

国家資格

産業廃棄物収集運搬業に関連する国家資格は主に以下の2つです。それぞれの資格について詳しく説明します。

特別管理産業廃棄物管理責任者

産業廃棄物には、鉄くずや廃プラスチックなどの一般的なものに加え、「特別管理産業廃棄物」と呼ばれるものがあります。特別管理産業廃棄物は、人や環境に非常に悪影響を及ぼす可能性がある危険な物質です。

具体的な例としては、廃油や医療現場から出る感染性のある物質などが挙げられます。

特別管理産業廃棄物管理責任者は、廃棄物処理法に基づき、これらの特別管理産業廃棄物を適切に処理するための指示を出し、その過程を監督する重要な役割を担っています。

参考:環境省「特別管理廃棄物規制の概要

廃棄物処理施設技術管理者

廃棄物処理施設技術管理者の主な職務は、一般廃棄物処理施設及び産業廃棄物処理施設において、法令に違反する処理が行われないように指導し、その実施状況を監視することです。

廃棄物処理及び清掃に関する法律第21条では、廃棄物処理施設には必ず廃棄物処理施設技術管理者を配置しなければならないと明記されています。これにより、適正な廃棄物処理の確保が義務付けられています。

都道府県知事の許可

ここからは、都道府県知事によって許可が得られる、産廃収集運搬業の4つの許可についてご説明します。

これらの許可はすべて、有効期限が5年間となっており、取得から5年が経過した場合は更新が必要です。

更新を怠ったまま産業廃棄物に関する事業を行うと、法律違反となります。したがって、期限の管理を厳格に行うことが求められます。

産業廃棄物収集運搬業許可

産業廃棄物収集運搬業許可とは、簡単に言うと「産業廃棄物を集めて運ぶための許可」です。

この許可を持っている業者は、産業廃棄物を収集して運搬することができますが、実際にその廃棄物を処理することはできません。

また、産業廃棄物収集運搬業には「積み替え・保管」を含む場合と含まない場合があります。

積み替え・保管を含む場合とは、例えば、廃棄物をトラックから別のトラックに移し替えたり、一時的な保管場所に降ろしたりする作業を行うことを指します。

産業廃棄物処理業許可

産業廃棄物処理業許可とは、特定の施設で産業廃棄物を処理するための許可を指します。

この許可を持つ業者は、廃棄物の処理を行うことが主な業務ですが、産業廃棄物を集めたり運んだりすることはできません。

特別管理産業廃棄物収集運搬業許可

特別管理産業廃棄物収集運搬業許可とは、環境や人体に非常に有害な産業廃棄物を集めたり運んだりするための許可です。

この許可を持つ業者は、毒物や爆発物など特別な管理が必要な廃棄物を扱うことができます。

一般の産業廃棄物収集運搬の許可では、これらの有害物質を収集したり運搬したりすることはできません。

特別管理産業廃棄物処理業許可

特別管理産業廃棄物処理業許可とは、特別管理産業廃棄物を専用の処理施設で処理するための許可です。

この許可を持つ業者は、特別管理産業廃棄物を処理することができますが、産業廃棄物を集めたり運んだりすることはできません。

まとめ

産業廃棄物収集運搬とは具体的にどんなことをするのかや、産業廃棄物の処理に必要な資格などについてまとめました。

産業廃棄物収集運搬の作業員全員が資格を必要とするわけではありませんが、特定の役割や業務に関しては資格が求められます。

一般的に、産業廃棄物収集運搬業許可は業者が取得するものであり、作業員個々に資格が必要というわけではありません。

ただし、特別管理産業廃棄物を扱う場合には、特別管理産業廃棄物管理責任者のような特定の資格を持った者が必要となります。

そのため、作業員全員が資格を持っている必要はありませんが、特定の業務を行うためには、資格を持った責任者や監督者の存在が求められます。

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