
毎年、ご先祖様がこの世に帰ってくるお盆の時期。以前と比べて簡略化されてきたものの、盆提灯を出したり果物やお菓子をお供えしたりするご家庭も多いのではないでしょうか。
しかし、送り盆の後に「お盆飾りや残ったお供え物って、どう処分すればいいんだろう?」と悩む方も少なくないはずです。通常のごみとして回収日に出してよいものか、そもそもずっと保管しておかなければならないのか…と悩んでしまうこともあるでしょう。
この記事では、お盆飾りの処分方法を丁寧に解説します。処分する際の注意点や、保管するお盆飾りの収納方法もご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
お盆飾りには「その年しか使わないもの」と「翌年も使うもの」がある
お盆飾りは、地域や仏教の宗派によって異なるもの。そのなかでも一般的に使われている品物を、以下の表にまとめました。みなさんのご家庭では、どのような飾りを使っていますか?
| 植物や食べ物 | ・精霊馬(牛) ・生花、ホオズキ ・野菜や果物 など |
| 装飾品類 | ・新盆の白提灯、盆提灯 ・まこものござ、蓮の葉 ・ほうろく・おがら ・お膳、十三仏 など |
お盆飾りを正式に設える場合は、仏壇の手前に「盆棚」を設置します。盆棚は、雛飾りを並べるようにお供え物やお盆飾りを置くことができる2~3段の祭壇です。現在はだいぶ簡略化されていますが、経机を出してお盆飾りを並べるご家庭は多いのではないでしょうか。
上に挙げた飾りのほか、地域によっては昆布やミソハギの花、そうめんやうどんなども使われます。東京近郊では新盆に故人の旅装束を用意する地域もあるなど、ご先祖様をお迎えする方法は千差万別です。また、そもそもお盆飾りを準備しない浄土真宗のような宗派もあります。
これらのお盆飾りには、「その年限りで処分するもの」と「翌年以降も使えるもの」があります。1回きりしか使えない品物は送り盆の後に処分して、次の年にも使用するものは防虫・防カビ対策を施したうえで保管しましょう。
その年限りのお盆飾りの処分方法
先に挙げたお盆飾りの種類のうち、その年のお盆が終わったら処分するものは次の4点です。
- 新盆の白提灯
- お供え物の野菜・果物や菓子類
- きゅうり・なすの精霊馬
- ほうろく・おがら
これらのお盆飾りの処分方法について、それぞれ解説します。
自治体によっては、これからご紹介する処分方法以外にお盆飾りを回収している場合もあります。参考例として、京都市と静岡県焼津市の公式サイトのページをご紹介します。お住まいの自治体がこのような回収を行っていないかどうか、ぜひ確認してみてください。
【参考資料】
お精霊送り後のお供物収集について|京都市
新盆・旧盆の精霊送り|焼津市
新盆の白提灯
新盆とは、亡くなって四十九日が経ってから初めて迎えるお盆のことです。地域によっては、初盆(はつぼん)とも呼ばれています。
通常のお盆では絵柄のついた一対の提灯を飾りますが、新盆の際は無地の白提灯(白紋天:しろもんてん)も一緒に飾ります。
この白提灯は使いまわしができないため、お盆が終わったらお家の菩提寺に依頼してお焚き上げをしましょう。菩提寺が近くにない場合は、お焚き上げの品物を郵送受付している寺社や民間サービスを利用するのもおすすめです。
しかし、「忙しくて、なかなか手が回らない」という方も多いものです。近年は、次の手順で簡易的に供養してもよいとされています。
- 白提灯にお清めの塩をふり、手を合わせる
- 火袋(灯りがともる部分)の一部を小さく切り取る
- 切り取った部分を少しだけ燃やす
残った大部分の白提灯は、可燃ごみとして処分できます。「紙くずなどと一緒に捨てるのは抵抗がある…」という方は、提灯のみを入れたごみ袋を用意するとよいでしょう。ごみ袋にもお清めの塩を入れておくのがベストです。
お供え物の野菜・果物や菓子類
ご先祖様へのお供えとして飾った食べ物・飲み物は、できるだけ家族で食べましょう。生野菜や果物が傷みそうであれば、お盆が終わる前に食べても構いません。
食べきれなかったお供え物や生花は、お清めの塩をふって白い紙で包み、可燃ごみとして処分します。可能であれば庭に埋めたり、菩提寺にお焚き上げを依頼したりするとよいでしょう。
きゅうり・なすの精霊馬
きゅうりやなすで作られる「精霊馬」は、ご先祖様がこの世と彼岸を行き来するための乗り物です。生野菜で作った場合は、お盆が終わったら処分しましょう。お盆飾りセットに見られるレプリカであれば、翌年以降も引き続き使えます。
精霊馬を捨てる際は、お清めの塩をかけて手を合わせた後に可燃ごみとして処分します。
「手を合わせるとき、決まった手順で何かしなければいけないのかな?」と思う方も多いですが、家庭でのこのような処分については特に決まりはありません。気になる場合は、手を合わせたときにお家の宗派の念仏(南無阿弥陀仏、南無妙法蓮華経など)を唱えるとよいでしょう。
先に「お供え物はできるだけ家族で食べる」と紹介しましたが、精霊馬に使用したきゅうりやなすを食べるのは控えてください。ご先祖様の乗り物としての労をねぎらい、正しい分別方法で処分すればOKです。
【参考資料】
お盆に想う|赤門教員コラム|仙台赤門短期大学
ほうろく・おがら
迎え火や送り火を焚く際に使用する素焼きの皿を「ほうろく」といいます。この上に麻の茎を乾燥させた「おがら」や新聞紙、松明(たいまつ)などを組んで火をつけ、ご先祖様をお迎えするご家庭も多いです。
素焼きのほうろくは割れやすいため、基本的にその年の送り盆が終わったら処分します。奥の自治体では、ほうろくのような陶皿は「不燃ごみ」です。ごみ袋には「ワレモノ」と明記しておきましょう。
ほうろくに欠け・ひびが入っていない場合は、翌年以降も使用して構いません。以前は「仏事に使用したものの使い回しは厳禁」とされていましたが、近年は「あまりこだわらなくてよい」という考え方に変わってきています。ほうろくもまだ使えそうであれば柔らかな布で汚れを拭き取り、保管しておくとよいでしょう。
なお、未使用のおがらや松明は、保管した場合も翌年には湿気で使えなくなっていることがほとんどです。余ってしまった分は可燃ごみとして処分してください。
お盆飾りを処分する際の注意点
お盆飾りを処分する際に気を付けてほしいのは、次の3点です。
- 白提灯の使い回しはNG
- 個人での「お焚き上げ」は違法
- 海や川に流すのは「不法投棄」
1つずつ詳しく解説します。
白提灯の使い回しはNG
新盆用の白提灯は「故人1人につき1つ」が原則です。使い回しは亡くなった方への失礼にあたります。
ただし、このルールも地域や宗派の考えによって異なります。例えば、「家紋入りの白提灯は繰り返し使える」とする場合もあります。心配な方は、ご近所の方や親戚に確認してみてください。
ちなみに、通常のお盆で使用する絵柄入りの盆提灯は2つ1組で左右対称に飾るものですが、白提灯は1つで構いません。玄関先や軒先に下げたり、仏壇の前に設置したりして、亡くなった方が迷わずご自宅に帰ってこれるようにしましょう。
個人での「お焚き上げ」は違法
お盆飾りの「お焚き上げ」は、菩提寺やお近くの寺社に依頼するようにしてください。自宅敷地内であっても、個人がお焚き上げとして品物を燃やすのは違法です。
お焚き上げは、故人を弔う役目を果たした品物を燃やすことで穢れのない状態に戻し、天に返すための儀礼です。数十年前は、送り火を焚く際やその次の日に自宅の庭や河川敷などでお焚き上げをするご家庭も多いものでした。
しかし、お焚き上げは「野焼き」に該当するため、現在は廃棄物処理法で禁止されています。禁止の理由は、主に次の3つです。
- 低温での焼却はダイオキシンなどの有害物質を発生させる恐れがあるため
- 山火事・森林火災を防ぐため
- 煤煙や悪臭による生活環境の悪化を防ぐため
「野焼きによって喘息が悪化した」「洗濯物にニオイが移った」など、住民間のトラブルの原因となる可能性もあります。たとえ自宅の敷地内であっても、個人でのお焚き上げはしないようにしてください。
ちなみに、廃棄物処理法では野焼き禁止の例外として「風俗習慣上又は宗教上の行事を行うために必要な廃棄物の焼却」を挙げています。「それならお焚き上げはしてもいいのでは?」と思うかもしれませんが、これはお寺や神社が祭祀として行うお焚き上げやどんど焼きのことです。個人でのお焚き上げには当てはまらない点に注意しましょう。
【参考資料】
野焼き|松江市
海や川に流すのは「不法投棄」
たとえ天に還す意味合いでも、お盆飾りを個人的に海や川に流すのはNGです。不法投棄に該当してしまうので、絶対に止めましょう。
日本では、古くから「川の向こう岸や海の向こうにご先祖様がいる」という考え方が根付いています。送り盆に火をともした灯篭を川に流し、ご先祖様を見送る「灯篭流し(精霊流し、精霊送りともいう)」を見たことがある方も多いはずです。
灯篭流しと同じように、お盆飾りやお供え物を「精霊舟」に乗せて海や川に流していた地域もあります。しかし、現在は灯篭流しでもお盆飾りやお供え物を流せる地域は少ないです。
だからといって、個人で海や川に流すと廃棄物処理法の「不法投棄」として罰則を科せられる恐れがあります。お盆飾りをきちんと供養して処分したい場合は、別の方法をとりましょう。
行政や近くのお寺が灯篭流しを開催する場合は、お盆飾りやお供え物が対象となっているか事前に確認してみてください。会場でお盆飾りを回収している場合も、処分しづらい飲食物のお供えや缶・瓶、金属・ガラス製の品物は避けるのが無難です。
【参考資料】
精霊送り|神戸市
精霊流しのお供物は減量しましょう|明石市
使い続けるお盆飾りの収納方法
次のお盆にも使える飾りは、虫食いやカビ、傷みが発生しないように保管しておきたいですよね。
例年のお盆で使用する、絵のついた盆提灯とまこものござの収納方法をご紹介します。
絵のついた盆提灯
絵柄入りの盆提灯は、お盆が済んだら丁寧に手入れをして収納しましょう。ほこりを落として分解し、部品を綺麗に拭いて元の箱にしまいます。
明かりがともる「火袋」の部分は、薄くて特に繊細なパーツです。絵柄を傷めないためにも洗剤・薬品は使わずに、柔らかい布で優しく拭いてください。
さらに、火袋の素材には和紙や絹が使われている場合もあります。収納の際は箱の中に防虫剤や乾燥剤を入れ、虫食いやカビを防止しましょう。衣類用・日本人形用の防虫剤のほか、仏具店で販売されている「防虫香」を使うのもおすすめです。
また、片付け始めたはよいものの「どうやって箱に入っていたっけ?」と悩むこともありますよね。送り盆の後の収納に困らないように、迎え盆の前に盆提灯が箱に入った状態で写真をとっておくとよいでしょう。
古くなった盆提灯を処分するには?
絵のついた盆提灯は、使える間は何年飾っても構いません。古くなった盆提灯を処分する際は、新盆の白提灯と同じようにお寺に納めてお焚き上げをしてもらいましょう。
年間通してお焚き上げの品物を受け付けているお寺もありますが、寺社によってはお盆明けの一定期間しか受け付けていない場合も多いです。
また、送り盆の後すぐに依頼できなくても、お正月過ぎの「どんと焼き」の際に一緒に焚いてもらえることもあります。ご家庭の菩提寺に問い合わせたり、お焚き上げが可能なお近くのお寺を探したりしてみてください。
そのほか、仏具店が引き取り処分サービスを展開している場合もあります。盆提灯や仏壇を購入した店舗に相談してみるのもおすすめです。
まこものござ
お供え物や装飾品の下に敷いていたまこものござは、少々の水濡れや汚れ程度であれば翌年も使用できます。
しかし、稲の一種であるまこもは、害虫や湿度の影響を受けやすいです。汚れを拭き取った後はしっかり乾燥させ、収納の際は防虫剤と乾燥剤を忘れないようにしましょう。
自然素材でできているため、きちんと保管していても変色やシミ・カビが発生することもあります。お盆直前にカビを発見し、「使えない!」と慌てたことがある方も多いのではないでしょうか。ぎりぎりになって困らずに済むよう、迎え盆の数週間前に1度状態をチェックしておくと安心です。
まとめ
お盆飾りの処分方法と注意点を解説してきました。
廃棄物処理法による規制が厳しくなり、お盆飾りも数十年前と同じ処理はできない地域が増えています。小さい頃にご実家で行っていた方法で処分しようとしても、今はできない…というケースもあるでしょう。
この記事でご紹介できたのは、全国共通でよく見られる処分方法です。「今暮らしている地域独自のルールがないか心配」という方は、迎え盆の前に市区町村のホームページを確認したり、身近な方に尋ねたりしてみてください。














