
スマートフォンやタブレット、ノートパソコンにワイヤレスイヤホン…持ち歩ける電子機器の充電切れは一大事。充電不足に備えて、外出の際にモバイルバッテリーを使用している方も多いでしょう。
モバイルバッテリーの寿命は1~2年といわれています。しかし、「捨て方が分からないから」と、使えなくなったモバイルバッテリーを家に放置している方もいるのではないでしょうか?実は、使わなくなったモバイルバッテリーの保管にはリスクもあります。できるだけ速やかな処分が重要です。
この記事では、モバイルバッテリーの正しい捨て方を解説します。捨て方の手順まで丁寧に紹介しますので、ぜひ試してみてください。
目次
モバイルバッテリーは「家庭ごみ」として捨てられない!
モバイルバッテリーは、ご家庭で不燃ごみや可燃ごみとして処分することができません。ごみ収集車での破砕や他のごみと合わせた処分によって、発火・爆発を起こすリスクがあるためです。
特に、現行のモバイルバッテリーのほとんどが採用している「リチウムイオン電池」は、不適切な処分によって火災や環境汚染の原因となり得ます。
リチウムイオン電池は、繰り返し使える充電式電池の1つです。他の電池よりもエネルギー密度が高いため、例えば同じくモバイルバッテリーに使われることもある「ニッケル水素電池」と比べて約1.5倍の電力を充電できます。
しかし、リチウムイオン電池には「衝撃や熱に弱い」というデメリットもあります。エネルギー密度が高いため「床に落とした」「車の中で熱くなった」などのきっかけで発火するケースも少なくありません。
実際、リチウムイオン電池の誤った取扱いによる火災事故は年々増加しています。東京消防庁の管轄内では、2023年度にリチウムイオン電池に関連する火災が167件発生しました。そのうち、最も多い出火元はモバイルバッテリーです。
【参考資料】
リチウムイオン電池搭載製品の出火危険|東京消防庁
モバイルバッテリーは「リサイクル回収ボックス」に持っていくのがおすすめ
モバイルバッテリーは、家電量販店などに設置されている「リサイクル回収ボックス」に入れて処分するのがおすすめです。簡単かつ安全なうえ、不要なモバイルバッテリーを資源として再利用できます。
モバイルバッテリーをはじめ、スマートフォンやパソコンなどのIC機器や家電には、リチウムやコバルトなどの貴重な金属(レアメタル)が含まれています。これらの製品は、リサイクル回収ボックスや不用品回収業者を活用して適切に処分すれば、新たな資源採掘や環境負荷の削減につながります。
お住まいの自治体のリサイクル回収ボックス設置場所は、一般社団法人JBRCのホームページで検索可能です。
【参考資料】
『協力店・協力自治体』検索|一般社団法人JBRC
リサイクル回収ボックスで処分できるモバイルバッテリーの条件は?
リサイクル回収ボックスに入れられるモバイルバッテリーは、次の3つの条件をすべて満たしている必要があります。
- JBRCの会員企業で作られたモバイルバッテリーである
- 電池の種類がリチウムイオン電池・ニッケル水素電池・ニカド電池のどれか
- 破損や膨張などの異常がない、かつ水濡れしていない
どれもご自分で簡単にチェックできるので、ぜひお手持ちのモバイルバッテリーを確認してみてください。
JBRCの会員企業で作られたモバイルバッテリーである
リサイクル回収ボックスでの処分ができるのは、小型充電式電池のリサイクル団体「JBRC」の会員企業によって製造されたモバイルバッテリーのみです。
モバイルバッテリーなどの小型充電式電池は、2001年に施行された「資源有効利用促進法」において製造元や輸入事業者による回収・リサイクルが義務付けられています。
JBRCは、会員企業が製造した製品を全国の協力店や自治体から回収・リサイクルする団体です。リサイクル回収ボックスに入れられたモバイルバッテリーのリサイクル費用は、JBRCの会員企業が負担しています。そのため、海外メーカーのモバイルバッテリーや製造元不明品は回収できません。
JBRCには、現在約350の法人が登録しています。お手持ちのモバイルバッテリーがリサイクル回収ボックスに入れられるかどうかは、以下の会員企業リストをチェックしてみてください。
【参考資料】
JBRC会員企業リスト|一般社団法人JBRC
電池の種類がリチウムイオン電池・ニッケル水素電池・ニカド電池のどれか
リサイクル回収ボックスに入れられるモバイルバッテリーは、内蔵されている電池の種類が「リチウムイオン電池」「ニッケル水素電池」「ニカド電池」のどれかだと明確に分かる必要があります。
電池の種類を示すため、モバイルバッテリーの本体には「リサイクルマーク」が印刷(または刻印)されています。3つの矢印で循環を表す「スリーアローマーク」は共通ですが、電池の種類ごとにマークの色とアルファベット表記が次のように異なります。
- リチウムイオン電池→マークは水色、表記は「Li-ion」
- ニッケル水素電池→マークはオレンジ、表記は「Ni-MH」
- ニカド電池→マークは黄色、表記は「Ni-Cd」
現在流通しているモバイルバッテリーは、リチウムイオン電池が主流です。しかし、少し古い製品にはニッケル水素電池やニカド電池が使用されている場合もあります。
3種類すべてリサイクル回収ボックスで処分できますが、回収できる電池だとはっきり分かることが重要です。マークが薄れて読み取れない場合、回収してもらえない可能性もあるので注意しましょう。
【外部リンク】
見分け方|一般社団法人JBRC
破損や膨張、水濡れなどの異常がない
次のような異常を起こしているモバイルバッテリーは、リサイクル回収ボックスに入れることができません。
- すぐに熱くなる
- 変色している
- 異臭がする
- 電池が膨張している
- 外側のプラスチック部分が外れている、ひびが入っている
また、このような異常があるモバイルバッテリーは、すぐに使用を止めましょう。通常時よりも発火・爆発のリスクが高いためリサイクル回収ボックスでは処分できませんが、不用品回収業者に依頼すると対応してくれる可能性もあります。もしくは、購入した店舗やモバイルバッテリーの製造元に対処法を問い合わせてみてください。
特に、膨張したモバイルバッテリーには注意が必要です。リチウムイオン電池を内蔵したモバイルバッテリーは、電池の酸化によってガスが発生し、内側から膨らむことがあります。とがったものに触れるだけでも爆発する恐れがあるため、取り扱いには十分注意して処分しましょう。
携帯ショップでもモバイルバッテリーを引き取り可能
家電量販店だけでなく、各携帯ショップでもモバイルバッテリーのリサイクル回収に対応しています。
「モバイル・リサイクル・ネットワーク(MRN)」というこの取り組みは、各通信キャリアとメーカーで構成されているリサイクルシステムです。そのため、どの携帯ショップでもメーカーに関係なくモバイルバッテリーを回収してもらえます。
MRNを利用する場合は、携帯ショップの店頭でスタッフにモバイルバッテリーを手渡すだけでOKです。スマートフォンやタブレット、充電器も回収してもらえるため、ご家庭に処分したい品が溜まっている方はぜひ試してみてください。
【参考資料】
MRNの概要|一般社団法人電気通信事業者協会
モバイルバッテリーの捨て方の手順
モバイルバッテリーは、次の手順で処分します。
- 放電してバッテリーの残量を0%にする
- セロハンテープを貼って絶縁対策
- リサイクル回収ボックスや携帯ショップなどで処分
モバイルバッテリーは、バッテリーの残量が0%の状態での処分が推奨されています。電力が残った状態で処分すると、発火・爆発や感電のリスクが高まるためです。
バッテリーが残っている場合は、電力を消費できるデバイスに接続したり0%になるまで放電したりすると空にできます。
次に、モバイルバッテリーの端子にセロハンテープやビニールテープを貼って絶縁します。処分の際に端子が金属に触れて発火するのを防ぐためです。テープは、端子部分をしっかりと覆うように貼りましょう。
モバイルバッテリーを捨てる際の注意点
モバイルバッテリーを処分する際の注意点は、次の3つです。
- 「小型家電回収ボックス」に入れるのは基本的にNG
- 火気や水・湿気に触れないように気を付ける
- 自分で分解しない
3つの注意点をそれぞれ解説します。
①「小型家電回収ボックス」に入れるのは基本的にNG
スーパーマーケットやショッピングセンターには、自治体の「小型家電回収ボックス」が設置されていることも多いです。先にご紹介した「リサイクル回収ボックス」とよく似た名前ですが、基本的に「小型家電回収ボックス」ではモバイルバッテリーを処分できません。
小型家電回収ボックスが対象としている「小型家電」とは、スマートフォンやデジタルカメラ、DVDプレイヤーや美容家電などです。これらの製品をボックスに入れる際、バッテリーや充電式電池は極力取り外すことが推奨されています。
自治体のホームページやごみ分別のガイドブックには、小型家電回収ボックスの回収できる製品リストが掲載されています。製品リストにない物品は、多くの場合回収できません。モバイルバッテリーは、小型家電回収ボックスでの回収を認めていない自治体が多いです。
以下のリンクは、横浜市と大阪市のホームページです。小型家電回収ボックスで回収できる製品について紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
小型家電の回収・リサイクルにご協力ください|横浜市
使用済小型家電をリサイクル回収しています|大阪市
② 火気や水・湿気に触れないように気を付ける
処分予定のモバイルバッテリーは、火気や水・湿気に触れないように保護しておきましょう。火気には十分に注意している方も多いかと思いますが、水気からも遠ざけることが重要です。
リチウムイオン電池は、水気と反応すると引火してしまう恐れがあります。さらに、水に濡れたリチウムイオン電池に触れると、感電する可能性もあるので注意してください。
使用中のモバイルバッテリーも、外出時に濡れたり落としたりして水濡れしてしまうこともあるかもしれません。水に濡れたモバイルバッテリーは、JBRCのリサイクル回収ボックスの対象外になります。使用し続けるのも危険なため、不用品回収業者や製造元に連絡して速やかに処分しましょう。
③ 自分で分解しない
モバイルバッテリーを自分で分解するのは非常に危険です。内部の電池が本体と一体化しているため、無理に分解しようとすると電池を刺激してしまいます。
うかつに外そうとすると、発火・爆発を招く恐れもあります。また、分解したモバイルバッテリーはJBRCのリサイクル回収ボックスでは処分できません。リサイクル回収ボックスで簡単に処分したい方は、先にご紹介した手順で処理をしたらそのまま回収に出しましょう。
まとめ
モバイルバッテリーの正しい捨て方を解説しました。
これまで、モバイルバッテリーに含まれるリチウムイオン電池の回収方法には明確な指針がありませんでした。自治体によって捨て方が異なるケースも多かったため、どのように処分したらよいのか悩む方もたくさんいたはずです。
そのような状況をふまえ、環境省は2025年4月に市区町村へリチウムイオン電池の回収方針を提示しました。法的拘束力はないものの、今後は自治体の回収サービスも推進されていくでしょう。