高齢化社会を迎えるにつれて、問題になってくるのが紙おむつ問題。
年々増え続ける紙おむつ使用量をどのように処分するのか、国土交通省では下水道へ流す案を検討しています。
現在の紙オムツ事情、国土交通省の検討内容をまとめています。
目次
増え続ける紙おむつ問題
使用済みの紙おむつの重量は約4倍になると言われており、特に介護施設では大量の重たい紙おむつをゴミに出す作業が負担になっています。
乳幼児用、大人用紙おむつの生産量
乳幼児用紙おむつの生産量をみると、2011年約87億枚、ピークは2017年の約160億枚、2019年は約142億枚でした。
近年は減少傾向にあるものの、2011年に比べると倍近い生産がされているのが分かります。
参照一般社団法人 日本衛生材料工業連合会「乳幼児用紙おむつの統計データ」
さらに、大人用紙おむつの生産量をみると2011年は約58億枚だったものの、2019年では約87億枚と増加の一途をたどっています。
参照一般社団法人 日本衛生材料工業連合会「大人用紙おむつの統計データ」
現在の紙おむつ処理方法
使用済み紙おむつは一般ごみとして焼却処理をされるのがほとんどです。
使用済みオムツは水分を多く含んでいて、焼却炉の温度を下げてしまったり、素材の半分以上がプラスチックでできているため、焼却炉を傷めてしまいます。
紙おむつを下水に流す案を検討
平成30年、国土交通省は「下水道への紙オムツ受入実現に向けた検討会」を設置しました。
この検討会で、おむつの新しい処理方法として3案が議題に上がっています。
A案固形物分離タイプ
参照国土交通省 Aタイプ(固形物分離タイプ)の実証試験等実施における基本的な考え方(案)【下水道への紙オムツ受入に関するガイドライン(案)】
使用済みの紙オムツを紙オムツ処理装置で、洗浄と汚物を分離します。
洗浄・脱水後の紙オムツはごみ処理やリサイクルへ。汚物や排水は下水道を通じて下水処理場で処理をするプランです。
メリット | 紙オムツ保管時の悪臭とゴミ出し時の重さが軽減 紙オムツリサイクルとの連携も可能 |
デメリット | 軽量化した紙オムツの保管・ゴミ出しが可能 |
紙オムツの汚物のみを下水道に流すことができるA案は、臭いや重さ問題を解決できるので、介護の負担を軽減できる効果があるとされています。
現在パナソニック株式会社による実証実験がされています。
B案破砕・回収タイプ
参照国土交通省 Baタイプ(Bタイプ破砕回収一体型)の実証し検討実施における基本的な考え方
使用済みの紙オムツを紙オムツ処理装置で破砕します。
破砕した紙オムツは下水道へ排出する前に分離・脱水し、回収、ゴミ処理やリサイクルへ。
汚物を含む分離排水は、下水道へ排出するプランです。
Baタイプとは、紙オムツ破砕物の専用配管を使用せずに破砕、回収等の全ての機構をパッケージ化したタイプ(破砕回収一体型)を指します。
メリット | 紙オムツの保管・ゴミ出しが不要 紙オムツリサイクルとの連携も可能 |
デメリット | 破砕のほかに分離・回収装置の維持管理が必要 |
A案と異なり、紙オムツを破砕するため、下水道への影響を調査する必要があります。
破砕回収分離型のBb案は今後検討していくことになっています。
C案破砕・受入タイプ
参照国土交通省 下水道への紙オムツ受入実現に向けた これまでの検討状況
使用済み紙オムツを紙オムツ破砕装置で破砕し、汚物とともに下水道に排出するプランです。
メリット | 紙オムツの保管・ゴミ出しが不要 |
デメリット | 下水道施設や水環境への影響について十分に評価が必要 |
C案については2021年度以降に検討されるようです。
汚物とともに破砕した紙おむつを流すので、下水道施設や水環境についての評価が重要な検討素材となります。
紙おむつとマイクロプラスチックの関係
紙おむつの原材料は紙だけではなく、不織布、パルプなどたくさんの素材が使われています。
中でも紙おむつの内部には数回分の尿を吸収できるように、高分子吸水材(高分子ポリマー)=水を吸うプラスチックが含まれています。
国土交通省が示したB案やC案で、破砕した紙おむつを下水道に流した場合、下水処理場を潜り抜け、河川や海に流出する可能性も考えられます。
マイクロプラスチックが世界中で問題視されている流れに逆行する可能性もあり、慎重な検討が必要でしょう。
まとめ
使用済み紙オムツを独自の方法で回収しリサイクルする自治体もあります。
また、株式会社ユニ・チャームなどおむつを生産する企業もよりリサイクルしやすい製品を作る取り組みを行っています。これからますます増える紙おむつの処理問題にぜひ注目してみてください。
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