
揚げ物など、たくさんの食用油を使う料理の後に「この量の油、どうやって捨てたらいいんだろう…?」と悩んだことはありませんか?
油は、その性質上「引火や発火を起こしやすい」もの。だからこそ、正しい方法で処分したいですよね。
食用油は、注意点さえしっかり押さえればご家庭でも簡単に処理できます。この記事では、食用油の正しい捨て方や注意点を詳しく解説します。「未開封の食用油はどう捨てる?」「揚げ油って何回まで使えるのかな」など、多くの方が抱く疑問にも触れていますので、ぜひご覧ください。
目次
家庭用食用油は「可燃ごみ」
ご家庭で使用する食用油は、基本的に可燃ごみとして処分できます。
ただし、油を捨てるには「吸収させる」「固める」のいずれかの処理が必要です。液状のままボトルに入れてごみとして出すと、回収の際に容器が割れて油が飛び散ったり、発熱・発火する恐れがあります。正しい方法で処理をして、このようなリスクを軽減しましょう。
なお、自治体によっては食用油を資源ごみとして回収し、リサイクルできる場合もあります。リサイクル回収については、後ほど詳しく解説しますのでぜひご覧ください。
食用油のボトル・瓶の捨て方は?
家庭用の食用油の容器は、プラスチックボトルやガラス瓶が一般的です。どちらの容器も付着した油が落ちにくいため、ごみとしての扱い方は自治体ごとに差があります。
「容器包装リサイクル法」では、食用油のプラスチックボトルは「その他プラスチック製容器包装」に区分されています。その点を踏まえ、次の自治体では以下のように分別しています。
東京都世田谷区 | 可燃ごみ |
神奈川県横浜市 | 基本的に「プラスチック製容器包装」 「PET」の識別表示マークがついていれば「缶・びん・ペットボトル」へ |
愛知県名古屋市 | プラスチック資源 |
さらに、同じ自治体では食用油のびんを次のように分別します。
東京都世田谷区 | 不燃ごみ |
神奈川県横浜市 | 缶・びん・ペットボトル |
愛知県名古屋市 | 空きびん |
自治体ごとに分別ルールに差があることが分かっていただけたかと思います。
細かな分別ルールは、自治体のごみ出しルールブックを確認すると安心です。いずれの場合も、ボトル・瓶は中身を使い切ったうえで軽く水ですすぎ、ごみとして出しましょう。
【参考資料】
資源とごみの分け方・出し方|世田谷区
ごみと資源物の分け方・出し方|横浜市
家庭ごみ・資源の分別早見表|名古屋市
未開封の食用油の捨て方は?
未開封のまま賞味期限が過ぎた食用油も、中の油と容器を分けて処分する必要があります。
未使用の油の処理も、使用済み油と同様です。これからご紹介する方法で簡単に処理できるため、ぜひチャレンジしてみてください。
食用油の捨て方①キッチンペーパーや新聞紙に吸収させる
使用済みの食用油は、キッチンペーパーや新聞紙、古布などに吸収させて捨てることができます。
特に、油が少量の場合は、菜箸でつまんだキッチンペーパーで油が温かいうちに拭き取るとスムーズです。使用済みの油は、冷えると粘り気が出て扱いにくくなります。温かさが残っているうちに拭き取るのがラクですが、やけどしないように十分注意しましょう。
吸収させた油が完全に冷めたらポリ袋に入れ、口を縛って可燃ごみとして処分します。油が熱いうちにポリ袋に入れようとすると、ビニールを溶かしてしまう可能性があります。油漏れを防ぐためにも、油が完全に冷めてから入れるようにしましょう。
牛乳パックやポリ袋を使うと簡単!
処分したい油が多い場合は、牛乳パックやポリ袋にあらかじめキッチンペーパーなどを詰めておき、冷ました油を注ぐのがおすすめです。油を十分に吸収できるよう、キッチンペーパーなどはクシャクシャにした状態で詰めておきましょう。
すべて染みこませたら、油の自然発火を防ぐために少量の水を加えます。特に気温の高い時期に油を捨てる際は、必ず水を一緒に染みこませるようにしてください。
水を加えたら、牛乳パックやポリ袋の口を密閉します。牛乳パックであれば、粘着テープを巻きつけると簡単です。ポリ袋の場合は、口を結ぶか輪ゴムなどで縛るかするとよいでしょう。油漏れが心配な方は、ポリ袋を二重にすると安心です。
食用油の捨て方②凝固剤などで固める
食用油の処分には、市販の油凝固剤を使うのもおすすめです。
凝固剤は粉末状の薬剤で、油に溶かすとおよそ1時間で全体をカチカチに固めてくれます。固まった油をフライ返しですくってポリ袋などに入れ、口を縛ればそのまま可燃ごみとして処分可能です。
油が固形になるため、注いで移し替えるような手間がかかりません。揚げ物をした後、そのまま油を処分したい場合などにおすすめです。製品によって冷めた油に入れるものと熱いうちに入れるものがあるため、事前に使い方を確認しておきましょう。
未開封の油を処分したい場合、熱いうちに入れなければならない凝固剤だと手間がかかります。冷めた油に入れる凝固剤か、先にご紹介したキッチンペーパーなどで吸収する方法で処分するとよいでしょう。
「片栗粉」で固めるのもおすすめ
少量の油を固めて処分したい場合は、凝固剤ではなく片栗粉も使えます。
油が熱いうちに同量程度の片栗粉を入れて混ぜると、冷めたころにはドロドロの状態になります。凝固剤のようにカチカチにはなりませんが、お玉ですくってポリ袋などに入れて口を縛れば可燃ごみとして処分可能です。
ただし、この方法には油の量と同じくらいの片栗粉が必要です。揚げ物をした後のように、たくさんの油を処分したい場合には向きません。揚げ焼きなど、少なめの油の処理に活用してみてください。
食用油の捨て方の注意点3つ
食用油を処分する際の注意点は、次の3つです。
- 食用油はシンクにそのまま流さない
- 捨てる際は完全に冷めた状態で
- 処理した油は早めに捨てる
NGな捨て方やリスクとあわせて、1つずつ解説します。
食用油はシンクにそのまま流さない
食用油を捨てようとして、シンクなどの排水口に流すのはNGです。
油は水と混ざらないうえ、冷えると固まる性質があります。排水管の中で固まってしまうと、詰まり・破損の原因になりかねません。流した油が下水道や河川まで到達すれば、水質や動植物への悪影響も引き起こします。
以前、「食用油を排水口に流せる状態まで分解できる」と謳う油処理剤が話題になったことがあります。しかし、東京都下水道局の商品テストでは、これらの製品は「油を乳化できる」だけなので「環境負荷を軽減するとはいえない」ことが確認されました。
ご自宅の排水設備のためにも、環境保護のためにも、食用油を処分する際は先にご紹介した方法で適切に処分しましょう。
【参考資料】
油・断・快適!下水道~下水道に油を流さないで!~|東京都下水道局
捨てる際は完全に冷めた状態で
油を新聞紙などに吸収させる際は、完全に冷めた状態で作業しましょう。熱い油はサラサラとしていて扱いやすいものの、やけどなどのリスクも高いです。
さらに、熱い油を牛乳パックやポリ袋で密閉すると内部で温度が上がり、自然発火する恐れもあります。油を冷たい状態で吸収したうえで、パックの口を閉じる際に少量の水を加えることも忘れないようにしてください。
処理した油は早めに捨てる
捨てられるように処理した油は、できるだけ早く可燃ごみの回収に出しましょう。
油が染みた新聞紙やキッチンペーパーを長期間そのままにしていると、発熱・発火のリスクも高まります。特に、夏の暑い時期には要注意です。
可燃ごみの日まで保管しなければならない場合は、直射日光が当たらないできるだけ涼しい場所に置くようにしてください。
使用済み食用油をリサイクル回収している自治体も
食用油を資源ごみとして回収し、リサイクルしている自治体もあります。このような自治体では、油の処分の際はペットボトルなどふたがついた容器に入れて回収場所にもっていくだけでOKです。
特に近年は、家庭の使用済み油を「バイオディーゼル」にリサイクルできる自治体が増えています。
バイオディーゼル(BDF:Bio Diesel Fuel)とは、植物性の油から製造されるディーゼルエンジン用の燃料です。ガソリンや灯油のように石油由来ではないうえ、酸性雨の一因である硫黄酸化物をほとんど含まないため「環境に優しい燃料」として注目されています。
例えば、京都市は全国に先駆けて1997年から使用済み食油のBDF化に取り組んでいます。捨てたい食用油があるときは、市内に約1700カ所ある回収拠点に設置されたポリタンクなどに油を入れるだけで処分完了です。製造されたBDFは、市バスやごみ収集車の燃料として活用されています。
また、横浜市では回収した食用油を「SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)」にリサイクルしています。
SAFは、使用済み食用油や木くず、サトウキビなど植物性の原料から作られる航空燃料です。SAFを使うと、原料調達~使用・消費の過程で発生するCO2排出量を従来の5分の1まで削減できます。
京都市や横浜市のように、お住まいの自治体が食用油のリサイクル回収を行っていないかどうかぜひ確認してみてください。
【参考資料】
家庭用廃食用油回収の自治体事例集|環境省
廃食油のSAF(持続可能な航空燃料)への利活用の取組|横浜市
揚げ油は何回まで使える?
揚げ物をした際、1度きりで揚げ油を使い捨てるのはもったいないですよね。
使用済みの油は、正しく保管すれば3~4回使えます。ただし、1回目の使用から2~3週間以内に使い切るようにしましょう。
1度しか使っていなくても、保管しているうちに油は酸化します。「揚げ物の頻度が少なくて、時間が経ってしまう…」という方は、具材を焼いたり炒めたりするときにも活用して早めに使い切るようにしましょう。
揚げ油の正しい保管方法
揚げ油を保管する際に、押さえておきたいポイントは次の3つです。
- 使用した油を必ずろ過する
- 暗くて涼しいところに
- きっちりふたを閉める
揚げ物をした後に残る揚げかすは、そのままにしておくと油の劣化の原因になります。保管する前に油こし器でろ過し、できるだけ綺麗な状態にしておきましょう。このとき、油はほどほどに冷ました状態にしておくと作業がラクです。
その後、完全に冷えてからふたを閉め、シンク下などの暗く涼しい場所に保管してください。
古い油の見分け方
揚げ油は「3~4回繰り返して使える」ものの、あくまでもこれは目安です。次の5つのポイントで油の見た目や香りをチェックすれば、捨てどきを見極めることができます。
捨てるべきサイン | |
---|---|
油の色 | 黒ずみが気になるようになったら |
油の香り | 油くささが鼻につくようになったら 生臭いようなニオイがしたら |
冷めた状態の油 | 粘り気が強く、ドロドロとしていたら |
熱した状態の油 | 180℃で煙が出て来たら |
食材を揚げているとき | 小さな泡がたくさん出て来たら 泡がなかなか消えなかったら |
古い油を使うとあまり美味しくないうえ、腹痛や下痢・嘔吐の原因になりかねません。揚げ油を繰り返し使う際は、3~4回を目安にしたうえで見た目や香りで状態を判断するようにしましょう。
まとめ
食用油の正しい捨て方について、注意点や揚げ油の保管方法などと合わせてご紹介しました。
使用済み・未開封に関わらず、食用油は可燃ごみで処分できます。捨てる際は、油を「キッチンペーパーで吸収」または「凝固剤で固める」という処理が必要です。
また、自治体によっては廃食用油をリサイクル回収しているところもあります。その場合、油を吸収させたり固めたりせずそのままの状態で回収してもらえるため、より手軽です。ぜひ、お住まいの自治体のホームページなどをチェックしてみてください。