
日本では建設資材について、有効な利用の促進・廃棄物の適正な処理を目的として、平成12年から通称「建設リサイクル法」が適用されています。国土交通省では循環型社会の構築を目指して「建設副産物交換システム(COBRIS)」を開発し、運用しています。SDGsのような世界規模の取り組みも進められているなかで、建設業界において欠かせないシステムの一つになっているといえるでしょう。
この記事では、そんな建設副産物交換システム(COBRIS)について、概要から主な機能や特徴、利用上の注意点を解説します。
目次
建築副産物とは
はじめに、建設副産物とはどのようなものなのか、どのような種類が存在するのか、について解説します。
建築副産物とは
建設副産物とは、建設工事にともない副次的に得られたすべての物品を表します。例えば、建設発生土や建築汚泥、アスファルト・コンクリート塊などが挙げられます。また、建設廃棄物は建設副産物の一部です。
建築副産物の種類
建設副産物は主に再生利用可能なものが該当しますが、建設廃棄物も内包しています。建設廃棄物建設現場で発生する「一般廃棄物」と「産業廃棄物」を表す言葉です。産業廃棄物は「廃棄物処理法」で定義された20種類の廃棄物であり、そのなかでも「揮発性・毒性・感染性のあるもの」は「特別管理産業廃棄物」となります。
これらの違いについては、こちらで詳しく解説しているため、併せてご覧ください。
参照建設副産物の種類とは?それぞれの違いを一覧で解説
建築副産物情報交換システムとは
建設副産物情報交換システムとは、建設副産物のリサイクル推進に向けて国土交通省が開発した情報交換システムです。システムの運用は日本建設情報総合センター(JACIC)が行っており、別名「COBRIS(Construction Byproducts Resource Information interchange System)」と呼ばれています。
建築副産物情報交換システムを利用することで、排出事業者・処理業者・発注機関を結び、施設情報の検索や工事情報の検索などが行なえます。加えて、建設リサイクル法によって義務付けられた書類をWeb上で作成することも可能です。
日本建設情報総合センターでは、建設副産物情報交換システム以外にも「建設発生土情報交換システム」「建設発生土の官民有効利用マッチングシステム」を運用しています。今後、これらのシステムは統合され、2025年度中に「建設副産物・発生土情報サービス(仮称)」として一体的なサービスとして提供される予定です。
COBRIS(コブリス)とCREDAS(クレダス)とは
CREDASとは「建設リサイクルデータ統合システム」のことであり、建設リサイクル法に関連する書類の作成機能を提供するシステムです。平成29年に廃止されましたが、現在では同様の機能が建設副産物情報交換システム(COBRIS)に含まれています。COBRISのCREDAS機能は有料となりますが、再生資源利用(促進)計画書などの作成に用いられるシステム(機能)です。
建築副産物情報交換システムの適用範囲
建設副産物情報交換システムの適用範囲は、操作マニュアルによると次のとおりとなっています。
項目 | 適用範囲 | ||
---|---|---|---|
副産物システム | 再生資源材利用(詳細) | 対象副産物を材料とする再生資源を再生資源化施設より搬入する場合
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建設副産物搬出(詳細) | 対象副産物を再資源化施設または最終処分場に搬出する場合
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CREADAS | 建設資材利用 |
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建設副産物搬出 |
・アスベスト(飛散性) |
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引用元「建設副産物情報交換システム操作マニュアル[簡易版]」(日本建設情報総合センター)
建築副産物情報交換システムの機能・特徴
建築副産物情報交換システムの機能・特徴としては、主に次の7点が挙げられます。
インターネットでどこからでもリアルタイムに情報を取得できる
建築副産物情報交換システムを利用する際には登録が必要になりますが、インターネットに繋がっていればどこからでもアクセス可能です。建築副産物に関する情報交換をリアルタイムに実施でき、時間や場所を問わずに利用できる点は、大きな特徴の一つといえるでしょう。
地図を利用した工事情報の登録・更新が可能
建設副産物情報交換システムでは、工事発注者や請負会社情報、工事名、後期などの工事概要情報だけでなく、デジタル地図を利用した工事情報の登録が可能です。また、重複の可能性のあるデータを検索し、重複した工事情報を削除する機能もあります。
工事情報の検索が可能
建設副産物情報交換システムに登録された工事情報は、地図検索だけでなく文字検索や道のり検索でも検索できます。地図検索では、地図画面上で自工事・他工事別に発注機関などの工事に関する条件で検索可能です。文字検索は工事に関する条件により検索を行い、道のり検索では検索の中心と成る起点及び検索の範囲と工事に関する条件により検索できます。
工事情報の集計機能が実態調査に活かせる
登録した工事情報を集計する機能も備わっており、帳票の集計や国土交通省が行う建設副産物実態調査(センサス)に対応した書類の作成も可能です。CREDAS情報の集計機能を用いることで、自社で登録した情報の集計結果のファイルをダウンロードできます。
施設情報の検索で搬出先が探せる
工事情報と同様に施設情報も検索できます。地図検索・文字検索・道のり検索に対応しており、建設副産物の搬出先だけでなく、再生資材の購入先も検索することが可能です。建設副産物情報交換システムは、排出事業者・処理業者・発注機関の3者が登録して利用しているため、それぞれを結びつけるためのシステムとしても活用されています。
施設までのルート計算・所要時間の計算が可能
再資源化施設などが登録されている場合、工事現場から施設までのルート検索や所要時間を計算する機能も備わっています。この機能を利用すれば、工事現場から施設までの最短ルートの検索・運搬の距離や時間も検索することが可能です。
処理事業者はPRを掲載できる
廃棄物の収集運搬・処分事業者は各都道府県知事(政令市長)の許可を得ている必要があり、対応可能な品目も事業者毎に異なります。建設副産物情報交換システムでは、これらの処理事業者の情報も登録でき、PR欄を使って自社のPRを掲載することが可能です。
建築副産物情報交換システムの利用申請方法
建築副産物情報交換システムを利用するためには、次の3つの手順を実施する必要があります。
サービスへの利用登録
インターネットを使って日本建設情報総合センターの「建設副産物情報センター」にアクセスし、画面右上の「ユーザ情報変更・申込」からサービスの利用登録を行います。新規に登録する際にユーザ区分として「発注者/排出事業者/処理業者」を選択し、利用責任者のメールアドレスを入力してください。その後、会社情報などの必要情報を入力します。
必要書類の郵送手続き
利用登録を進めて利用申請書の作成・登録を行います。建設副産物情報交換システムを利用するためには、利用登録だけでなく利用申請書を郵送して日本建設情報総合センターのチェックを受けなければなりません。前述のユーザ区分ごとに利用申請書と併せて送付する書類も変わるため、画面の指示に従い必要情報の印刷・郵送を行いましょう。
登録費の入金
利用申請書のチェックが完了した後、日本建設情報総合センターから利用料金の請求書がメールまたは郵送にて届けられます。システムの利用料金は発注者/排出事業者/処理業者でそれぞれ異なります。詳しくは「システム利用料金について」をご確認ください。日本建設情報総合センターにて入金を確認した後、システムのユーザID・初期パスワードがメールで送付されます。
なお、発注者の場合は、建設副産物情報交換システムの無料お試しサービスも用意されています。最長6ヶ月間利用可能であるため、利用前に活用することも検討するとよいでしょう。
建築副産物情報交換システムの注意点
建設副産物情報交換システムを利用する際の注意点として、年度ごとに更新手続きが必要になる点が挙げられます。システムの利用期限はユーザIDを取得した日から当該年度の末日(3月31日)までとなっており、更新手続きを行わなければ利用停止処理が進められます。利用料金も「年度間利用料金」であるため、更新手続きと併せて支払わなければなりません。また、利用料金の支払いは請求書を受理した日から30日以内に支払うことが利用規約に明記されているため、請求書が届いたら早めに対応するようにしましょう。
まとめ
建設副産物情報交換システムは、国土交通省が開発した情報交換システムであり、日本建設情報総合センターにて運用されています。建設副産物情報交換システムを利用すれば、排出事業者・処理業者・発注機関の3者がリアルタイムに情報交換でき、建設リサイクル法に則った建設副産物の適切な取り扱いを効率的に実施できます。
建設副産物情報交換システムは、建設事業にとって欠かせないシステムの一つであり、業務の効率化にも役立てることができるでしょう。利用には年度間利用料金を支払う必要がありますが、発注者であれば無料お試しサービスを利用することも可能です。
建設副産物情報交換システムの利用を検討している場合には、無料お試しサービスの利用も検討してみてはいかがでしょうか。