化学物質管理者とは?選任が必要な事業所や法的な位置づけを解説

2024年4月から化学物質の管理について新しい規制が始まりました。

この規制では、企業や事業者が自分たちで化学物質を適切に管理することが求められ、さらに「化学物質管理者」と呼ばれる担当者を必ず任命することが義務付けられています。

本記事では、化学物質管理者の役割や専任が必要な事業所、法的な位置づけなどについて解説していきます。

化学物質管理者とは?

「化学物質管理者」とは、事業所で化学物質を安全に管理するための技術的な面を担当する人を指します。

以前から、労働安全衛生法の57条の3に基づき、化学物質が持つ危険性や有害性を調査する「リスクアセスメント」を行う際に必要とされていました。この役割は、2015年の指針に基づいて定義されていました。

しかし、2024年4月の規制改正により、新しい化学物質管理の制度の下で、この「化学物質管理者」が事業所における化学物質管理の重要な技術的責任者として正式に位置付けられることになりました。

化学物質管理者は、事業所における化学物質の適切な管理を進めるために、いくつかの重要な役割を担っています。

まず、化学物質の安全性を伝えるためのラベルや安全データシート(SDS)の作成とその管理を行います。

また、化学物質が持つ危険性や有害性を評価するリスクアセスメントを実施し、リスクを適切に把握します。

さらに、化学物質が作業者に直接触れないようにするためのばく露防止措置を計画し、実施することも重要な役割です。

これらすべてを通じて、化学物質を安全に管理するための中心的な役割を果たします。

参考:厚生労働省「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針

リスクアセスメントとは?

化学物質による労働災害を防ぐため、各事業所では「リスクアセスメント」を行う必要があります。

リスクアセスメントとは、化学物質が持つ危険性や有害性を確認し、それによって労働者にどれくらいの危険や健康被害が発生する可能性があるかを評価し、リスクを減らす対策を検討するプロセスです。

このプロセスは、次の5つのステップで進められます。

  1. 危険性・有害性の特定:どの化学物質がどのようなリスクを持っているか確認します。
  2. リスクの評価:そのリスクがどれくらいの影響を与えるかを見積もります。
  3. リスク低減策の検討:危険や有害性を減らすための対策を考えます。
  4. 低減策の実施:検討した対策を実際に取り入れて実施します。
  5. 効果の確認と改善:実施した対策が効果的かどうか確認し、必要に応じて改善します。

このように、リスクアセスメントは事業所での安全管理のための重要なステップです。

化学物質管理者の選任や法的な位置づけ

化学物質管理者の選任義務は、2024年4月1日より施行されています。

化学物質管理者を選任すべき事由が発生した場合、発生日から14日以内に選任を行う必要があります。

また、選任後は、選任した化学物質管理者の氏名を事業所内の見やすい場所に掲示することが義務付けられています。

この章では、化学物質管理者の選任が必要な事業所や法的な位置づけについて見ていきましょう。

化学物質管理者の選任が必要な事業所

化学物質管理者を選任する必要がある事業所には、業種や規模に関係なく、リスクアセスメントが必要な危険・有害物質(リスクアセスメント対象物)を製造・取り扱い・譲渡している場合に該当します。

化学物質管理者は、作業現場ごとではなく、工場や店舗、営業所など事業所単位で選任する必要があります。

ただし、一般消費者向けの製品のみを取り扱う事業所は、この規則の対象外です。

参考:厚生労働省「職場のあんぜんサイト

法的な位置づけ

前述の通り、化学物質管理者は、事業所における化学物質の技術的な管理を行う役割を担っています。

具体的には、以下のような仕事に携わります。

  • 表示や通知に関する事項の管理
  • リスクアセスメントの実施や、その記録の保存
  • ばく露低減対策(危険な化学物質から従業員を守る対策)
  • 労働災害が発生した場合の対応
  • 労働者への教育や訓練

これらを通じて、事業所での化学物質管理を安全に行うことが求められます。

化学物質管理者に必要な講習

化学物質管理者になるために必要な講習内容は、以下の通りです。

  • 化学物質の危険性や有害性、そして表示に関する講義:2時間30分
  • 化学物質の危険性や有害性の調査についての講義:3時間
  • 調査結果に基づく対策や必要な記録についての講義:2時間
  • 化学物質が原因で事故や災害が起きた際の対応についての講義:30分
  • 関係法令に関する講義:1時間
  • 危険性や有害性の調査、そしてその結果に基づく対策についての実習:3時間

これらの講習を受けることが、化学物質管理者として必要です。

講習は、中央労働災害防止協会日本規格協会で実施されています。

参考:厚生労働省「化学物質管理者講習テキスト

まとめ

2024年4月から施行された新しい化学物質管理の規制は、企業や事業者にとって重要な転換点となっています。

化学物質管理者の任命が義務付けられ、これにより化学物質の安全な管理が一層強化されることが期待されています。

今後、化学物質管理者が果たす役割はますます重要となり、事業所の安全文化を支える基盤となることでしょう。

安全で健康的な職場環境を実現するために、企業や事業者は積極的に対応していく必要があります。

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