PCB(ポリ塩化ビフェニル)とは?特徴や廃棄物処理の種類、歴史について徹底解説

今回は、「PCB(Poly Chlorinated Biphenyl)」(ポリ塩化ビフェニル)について、特徴や廃棄処理時の注意点、製造・輸入が禁止となった経緯についてまとめます。

PCBとは?

PCBとは「ポリ塩化ビフェニルPoly Chlorinated Biphenyl)」の略称のことです。油状の化学物質で、下記のような特徴から様々な製品に利用されてきましたが、脂肪に溶けて蓄積しやすく、人体へ有害性が認められたことから、現在は製造・輸入禁止されています。

PCBの特徴

  • 水溶性
  • 高沸点
  • 電気絶縁性が高い
  • 化学的に安定した性質
  • 耐熱性、不燃性に優れる

過去にPCBを利用した製品

  • 電気機器の絶縁油(変圧器、コンデンサー、安定器)
  • 熱交換器の熱媒体
  • ノンカーボン紙

<参考>環境省 PCBとは?なぜ処分が必要か?

PCB廃棄物の種類(高濃度PCB廃棄物・低濃度PCB廃棄物)

PCB廃棄物は、高濃度PCB廃棄物低濃度PCB廃棄物2種類に分類されます。PCB濃度が0.5%(=5000ppm)を超えるものを高濃度PCB廃棄物と言います。過去、高圧変圧器や高圧コンデンサー、安定器などに使用されていました。

PCB廃棄物処理の歴史

現在、PCBを利用した製品の製造は禁止され、PCB廃棄物処理に関するあらゆる決まりがあります。そこに至るまでの主な出来事や経緯についてまとめました。

昭和43年 カネミ油症事件

カネミ油症事件は、昭和43年に発生したライスオイル(米ぬか油)による食中毒事件です。食用油の製造過程で、熱媒体として使用されたPCBが混入したことが原因とされ、症状として吹出物、色素沈着、目やになどの皮膚症状、全身倦怠感、しびれ感、食欲不振などが起きたことで、社会問題となりました。

昭和47年 製造中止・回収指導

当時の通産省による行政指導により製造中止、回収などの指示が出たことで、昭和47年から国内で製造は行われていません。

平成13年 PCB 特措法公布

民間主導によるPCB処理施設設置は住民の理解が得られないなどの理由により、30年間ほぼ未処理のまま保管されていました。長期化した保管による紛失・漏洩による環境汚染の進行が懸念されたことから、適正な処理を推進するため、平成13年6月22日に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特別措置法)」が公布され、同年7月15日に施行されました。

平成16年 全国5箇所に処理施設が整備

PCB特別措置法の施行を受け、国が中心となり日本環境安全事業株式会社を活用した処理施設の整備が始まり、平成16年には北九州事業の操業を皮切りに全国5箇所に処理施設が整備されました。

平成24年 処理期間の改正

PCB廃棄物を保管する事業者は、PCB特別措置法により政令で定める期間内の処分義務づけられています。期間は、平成13年のPCB 特措法施行時には平成28年7月までと規定されていました。しかし、施行後に微量のPCBに汚染された電気機器が大量に存在することが判明したことや、処理が遅れていることなどを理由に、平成24年12月、処理期間を令和9年3月末までとする改正が行われました。

平成26年 PCB廃棄物処理基本計画変更

特別措置法に基づき、平成15年に策定されたPCB廃棄物処理基本計画では、当初は全国同じ平成28年3月末を処理期限としていました。しかし、平成26年6月にPCB廃棄物処理基本計画が変更され、5か所のPCB処理事業所ごとに計画的処理完了期限が定められました。これによると、最長で令和7年度までに高濃度PCB廃棄物処理を完了するとしています。

平成28年 PCB廃棄物特別措置法の改正

PCB廃棄物の処理の進捗状況や処分委託しない事業者、PCBを含む製品がまだ使用されているという現状を踏まえ、平成28年にPCB廃棄物特別措置法の改正が行われました。改正されたのは以下の通りです。

  • PCB廃棄物処理基本計画の閣議決定
  • 高濃度PCB廃棄物の処分の義務付け
  • 報告徴収、立入検査権限の強化
  • 高濃度PCB廃棄物の処分に係る代執行

<参考>環境省 ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画の策定について
<参考>環境省 PCB廃棄物処理対策の経緯について

まとめ

昭和43年に発生したカネミ油症事件は、当時福岡県にあったカネミ倉庫社で製造されたライスオイルにPCBが混入した食中毒事件です。原因として、ライスオイルの脱臭工程で、熱媒体として用いられたPCBが混入したとされています。これを口にしたことで、様々な症状があらわれ、現在もその症状に苦しんでいる方がいます。

令和元年にも、第15回となるカネミ油症に関する三者協議が開催され、平成24年に施行された「カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律」の基本方針に基づき、患者に関する施策の推進のために必要な事項について協議が行われました。

そして、この事件の後も、PCB廃棄物処理を巡って様々な法律の施行と改正を繰り返し、30年間保管された廃棄物が、まもなく処分期限を迎えようとしています。現在使用中の変圧器やコンデンサーなどの高濃度 PCB 使用製品であっても期限内に処分するよう注意が必要です。

<参考>厚生労働省 第15回三者協議(カネミ油症)を開催します

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