
10月2日、伊藤忠商事株式会社がフランスのスエズ社と共同で、セルビア共和国ベオグラード市が計画する廃棄物処理発電事業の事業運営権を落札したことを発表しました。
参照エネクトニュース 伊藤忠商事、セルビアで大型廃棄物処理発電事業へ
セルビアとは?
正式名称 | セルビア共和国(Republic of Serbia) |
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人口 | 712万人 |
首都 | ベオグラード |
面積 | 77,474平方キロメートル(北海道の面積に近い) |
民族 | セルビア人83%、ハンガリー人4%など |
日本とセルビアの関係
日本のセルビアに対する国別援助方針によると、重点分野としている環境保全の項目では、セルビアが目標としているEU加盟に向けて、EUが提示する環境基準達成への取り組みを日本の持つ技術や知見をいかし、大気汚染対策や下水道設備などの支援を行っていくとしています。
日本のセルビアに対する貿易額と主な品目については下記の通りです。
輸出額 | 約16億円 |
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輸出品目 | 自動車、自動車部品、金属加工機械、タイヤ・チューブ |
輸入額 | 約313億円 |
輸入品目 | 紙巻たばこ、果実、衣類、化学製品、天然ゴム製品 |
大型廃棄物処理発電事業の具体的な事業内容とは?
セルビアの大型廃棄物処理発電事業では、セルビア共和国のベオグラード市政府とのPPP(官民連携)※契約を結び25年間の運営により、計2000億円の事業収入を見込んでいます。ベオグラード市内で排出される廃棄量のおよそ66%(年間34万トン)の一般廃棄物を焼却処理し、焼却時の余熱によって、セルビア共和国内の家庭消費電力約30,000軒分に相当する発電や熱供給を行う計画です。
さらに、既存の最終処分場は閉鎖し、管理型最終処分場を建設し、建設廃材を年間20万トン処理可能な施設を新設するとしています。
※ PPPとは?
PPPとはPublic Private Partnership (パブリック・プライベート・パートナーシップ)の略で、行政(Public)と民間( Private )が連携( Partnership )し、行政サービスに対して民間の持つ知識・経験・技術を活用することで、行政のサービス向上や財政資金のよりよい使い方や業務の効率化などを図ろうとする考え方のことを言います。
参照伊藤忠商事株式会社 セルビア初大型PPP(官民連携)廃棄物処理発電事業 契約調印について
参照内閣府 PPP/PFIとは
セルビアの抱える問題とEU加盟に向けた環境保全対策
セルビアは、世界金融危機やギリシャ財政危機の影響により2009年-3.5%のマイナス成長となったものの、国際通貨基金(IMF)などの支援を受けたことにより、現在の経済は回復の兆しを見せています。現在セルビアではEU加盟を最大の目標として2023年のEU廃棄物処理基準適合を政策の一つに掲げ、2012年EU加盟候補国に認定、2014年加盟交渉がスタートしました。
今回の事業によって閉鎖・管理される予定の最終処分場は1977年に開設されたもので、欧州地域内に残っている処分場の中では最も大きな旧式処分場と言われています。よって、旧式の最終処分場を閉鎖し、新たな処分場を建設するなど廃棄物の適切処理を行い埋め立て量を削減することで、25年間でCO2を約300万トン削減させるという温暖化ガス削減の実現により、EU加盟に向けた環境保全対策としての役割があると考えられます。
参照伊藤忠商事株式会社 セルビア初大型PPP(官民連携)廃棄物処理発電事業 契約調印について
参照外務省 ODA(政府開発援助)
まとめ
セルビアは、北海道に近い面積で人口が712万人という規模ですが、日本のセルビアに対する輸出額は約16億円、輸入額は313億円とされ、日本と貿易が盛んに行われている国の一つです。同国は世界金融危機やギリシャ財政危機の影響により2009年にマイナス成長になりましたが、国際通貨基金など支援を受けたことで経済が回復しつつあります。
この廃棄物処理発電事業は、セルビアのEU加盟にむけた環境保全対策のためだけでなく、日本企業の廃棄物処理発電の技術や知識が役立てられ事業としての成功実績を作ることで、現在様々な国が直面している廃棄物処理問題に向け、日本にとってさらなるビジネスチャンスがうまれることでしょう。