産業廃棄物の不法投棄について、現状や関連制度について解説

今回は、産業廃棄物の不法投棄について解説します。

産業廃棄物の不法投棄とは?

不法投棄とは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)に違反して廃棄物を投棄することを言います。中間処理施設や処分場において、保管方法や搬入方法が誤っている場合は、不法投棄ではなく不適正処理と呼ばれます。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律において、廃棄物を不法投棄した際は3年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金またはこの併科という厳しい罰則があり、不法投棄を行った法人に対しては罰金の最高額が1億円となっています。

参照産業廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部改正について(依頼通知)

不法投棄件数と不法投棄量の現状

平成29年度に不法投棄事案として判明した不法投棄件数は163件で、前年度より32件増加しています。不法投棄量は3.6万トンで、前年度より0.8万トン増加し、不法投棄件数、量ともに前年度から増加していることがわかります。

不適正処理件数は161件で、前年度より29件増加しています。不適正処理量は6.0万トンで、前年度より1.5万トン減少していることから、不適正処理件数は増加したものの量は減少していることがわかります。
また、このほかに平成29年度末における残存事案件数が2,630件、残存量1,559.4万トンがあります。

事案件数 平成29年度 平成28年度 前年度からの増減
不法投棄件数 163件 131件 +32件
不適正処理件数 161件 132件 +29件
事案量 平成29年度 平成28年度 前年度からの増減
不法投棄量 3.6万トン 2.7万トン +0.8万トン
不適正処理量 6.0万トン 7.5万トン -1.5万トン

注意:数量は四捨五入しているため合計数と違う場合があります。

種類別の不法投棄件数と不法投棄量

不法投棄件数を廃棄物の種類別にわけると、どちらの年度もがれき、建設混合廃棄物※、木くずの順で不法投棄の件数が多く、不法投棄量はどちらの年度でも、建設混合廃棄物、がれき、木くずの順で多いことがわかります。

また、建設系廃棄物が、平成29年度は不法投棄件数の128件(全体に対する割合78.5%)、前年度は103件(78.6%)を占めており、どちらの年度でも不法投棄件数の7割以上建設系廃棄物が占めている結果になっています。

【不法投棄件数】
sannpaitokikennsu
【不法投棄量】
sannpaitoki ryo
出典:産業廃棄物の不法投棄等の現状(平成29年度)について

※建設混合廃棄物とは?

建設混合廃棄物とは、安定型最終処分場で埋め立てが可能な安定型品目(ガラスくずおよび陶器くず、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、がれき類の5種類)と安定型品目以外の品目が混ざっている建設廃棄物のことです。

参照環境省 産業廃棄物の不法投棄等の状況(平成29年度)について

不法投棄実行者別の不法投棄件数と不法投棄量

不法投棄実行者別の不法投棄件数と不法投棄量は、排出事業者、許可業者、無許可業者の順に多く、不法投棄件数の半分以上を排出事業者が行っているという結果になっています。このほかに不明、複数、その他があります。

不法投棄実行者別の不法投棄件数

投棄件数 平成29年度 平成28年度
排出事業者 90 件(55.2%) 68件(51.9%)
許可業者 9件(5.5%) 6件(4.6%)
無許可業者 4件(2.5%) 4件(3.1%)

不法投棄実行者別の不法投棄量

投棄量 平成29年度 平成28年度
排出事業者 16,691トン(46.7%) 11,479トン(42.0%)
許可業者 4,819トン(13.5%) 7,069トン(25.9%)
無許可業者 227トン(0.6%) 1,414トン(5.2%)

注意:数量は四捨五入しているため合計数と違う場合があります。

参照産業廃棄物の不法投棄等の現状(平成29年度)について

産業廃棄物の正しい処理・リサイクル推進のための制度

平成6年に施行された環境基本法の理念に基づき、平成13年に施行された循環型社会形成推進基本法では資源や廃棄物による資源循環を目的に定められました。

産業廃棄物の排出抑制や適正処理を目的に定められた廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)は平成29年に一部改正されたことで関係政省令などの整備を行い、平成30年4月1日より順次施行することになりました。罰則を強化し、適正な処理方法やリサイクル方法を明確に定め、硫酸ピッチ問題などそのときどきの不法投棄問題に応じて法律を改正していくことで、ピーク時と比べ不法投棄は減少していきました。

産業廃棄物に関する施策の例

  • 環境基本法
  • 循環型社会形成推進基本法
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
  • 家電リサイクル法
  • 食品リサイクル法
  • 建設リサイクル法
  • 自動車リサイクル法
  • 小型家電リサイクル法
  • 容器包装リサイクル法など

参照過去のピッチ問題に関する記事
参照環境省 平成29年改正廃棄物処理法について

まとめ

近年、不法投棄される産業廃棄物の7割以上が建設系廃棄物で、不法投棄の実行者は排出事業者が多いという現状が明らかになりました。様々な規制や罰則の強化により、不法投棄の件数は平成10年度のピーク時からは減少しているものの、未だに0にはなりません。

私有地において何者かに無断で不法投棄されるような事案もあるため、排出事業者や許可業者だけでなく一般家庭においても、このような不法投棄の現状を知り、不法投棄を見つけた場合は早期に対応していくことで、大きな被害を未然に防ぐ手立てにもなるでしょう。

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