動物系固形不要物とは?廃棄量統計の現状やBSE問題とリサイクル方法

動物系固形不要物とは?

産業廃棄物のうちの一種である動物系固形不要物とは、と畜場で処分した獣畜、食鳥処理場で処理した食鳥など固形状の不要物のことです。
産業廃棄物は事業活動に伴って生じた廃棄物のことですが、20種類ある産業廃棄物のうちの7種類(木くず、紙くず、繊維くず、動物のふん尿、動物の死体、動植物性残さ、動物系固形不要物)は、特定の業種から発生した廃棄物に限られています。このため、動物系固形不要物は、と畜業、食鳥処理業を発生源とした廃棄物に限られます。
また、動物の解体によって発生した血液など液体の不要物は、産業廃棄物の廃酸または廃アルカリになります。

<参考>公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター) 産廃知識 廃棄物の分類と産業廃棄物の種類

動物系固形不要物の廃棄量統計

平成28年度の産業廃棄物の種類別排出量の統計によると、動物系固形不要物の排出量は産業廃棄物全体の排出量に対する割合が0%になっており、産業廃棄物全体から見ると排出量は少ないことがわかります。平成28年度の動物系固形不要物の排出量は81千トンで、前年度の平成27年度の動物系固形不要物の排出量 92千トンと比べると、排出量は減少しています。

産業廃棄物の種類別の処理状況(図:産業廃棄物の種類別再生利用率、中間処理による減量化率及び最終処分率)の統計によると、動物系固形不要物の処理の比率は再生利用量76%、減量化量21%、最終処分量2%という結果になっています。

<参考>環境省 産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成28年度実績)について

動物系固形不要物の処分方法とリサイクル方法

動物系固形不要物の処分方法は、焼却処理を行い焼却灰となった状態で最終処分場へ埋め立てます。リサイクル方法は、焼却灰をセメント原料や路盤材などへリサイクルする方法があります。
過去に牛の固形不要物を肉骨粉に加工して飼料としてリサイクルしていましたが、牛海綿状脳症(BSE)の牛が国内で確認されたことを受けて、2001年10月に農水省が「肉骨粉等の当面の取り扱いについて」における飼料用や肥料用の肉骨粉などの製造および販売の一時停止を要請し、飼料としてのリサイクルへの流れが変わっていくこととなります。

<参考>環境省 廃棄物棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令の施行について

牛海綿状脳症(BSE)とは?

牛海綿状脳症(BSE)とは、BSEプリオンと呼ばれる病原体に牛が感染することで牛の脳組織がスポンジ状になり、異常行動や運動失調などの症状がみられ、最終的に死にいたる牛の病気の一種です。発症原因として、BSEに感染した牛の脳や脊髄などを原料としたエサを他の牛に与えられたことが考えられ、イギリスなどを中心に感染が広がり、日本では2001年9月以降から2009年1月までに36頭の感染牛が確認されました。

牛海綿状脳症(BSE)に対する日本の対策

BSEが問題化する以前は、と畜場から発生する牛の骨などはレンダリング業者により買い取られ、廃棄物としての排出の実態はないものとされていましたが、2001年9月に千葉県で日本国内初の牛海綿状脳症の牛が確認され、10月1日付けで農水省が「肉骨粉等の当面の取り扱いについて」において、飼料用や肥料用の肉骨粉などの製造および販売の一時停止を要請し、環境省に対してはレンダリング業者が保持する余剰分の肉骨粉などの隔離や焼却の円滑な実施協力を要請したほか、厚生労働省により、と畜場から排出される牛の脳、脊髄の焼却を指導するなどの通知が出されたため、と畜場から新たな廃棄物が生じることになりました。
この新たな廃棄物の発生を受けて、環境省が行った措置をいくつか紹介します。

環境省による措置の一例

・売れ残った製品の肉骨粉は一般廃棄物であることを明確にし、地方公共団体に円滑な処理を要請。
・と畜場から排出される脳や脊髄などの廃棄物を産業廃棄物とする政令改正(廃棄物処理法施行令)について閣議決定し、10月27日から施行。
・肉骨粉の円滑で安全な処理やリサイクル体制を確保し、産業廃棄物のリサイクルに取り組むセメント事業者へのリサイクル活用を図るため再生利用認定制度の適用を行う旨の告示を10月15日公布。
上記以外にも多くの対策がとられた結果、日本では2003年以降に産まれた牛からは、牛海綿状脳症は確認されていません。
<参考>厚生労働省 牛海綿状脳症(BSE)について

<参考>環境省 牛海綿状脳症に関し環境省が講じた措置について

まとめ

動物系固形不要物は、と畜場や食鳥処理場という特定事業から発生した固形状の不要物のことで、解体によって生じた液体の不要物は廃酸または廃アルカリになります。
以前は、と畜場から発生する牛の骨などは廃棄物としての排出の実態がないものとされてきましたが、2001年に千葉県でBSE感染牛が確認されたことを受けて、今まで廃棄物としての排出の実態がないもののとされてきた牛の固形不要物などの廃棄物の排出が明らかとなり、その廃棄方法や、該当する廃棄物に関連する様々な規制がとられることになりました。現在、対策の成果もあり日本国内でBSE感染牛は確認されていません。

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