廃酸とは?廃酸の種類や廃棄量統計の現状とリサイクル方法

廃酸とは?

産業廃棄物のうちの一種である廃酸とは、廃硫酸、廃塩酸などの液体状の酸性廃液のことを言います。
著しい腐食性を有する㏗2.0以下の廃酸は特別管理産業廃棄物※という扱いになり、処理するには十分な注意が必要です。

※特別管理産業廃棄物とは?

特別管理産業廃棄物とは、毒性、爆発性、感染性があり、人の健康や生活環境に対して深刻な被害を及ぼす可能性があるため取り扱いに注意が必要な産業廃棄物のことを言います。

<参考>公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター) 産廃知識 廃棄物の分類と産業廃棄物の種類

廃酸の種類の具体例

廃酸の具体例は以下の通りです。
廃硫酸
廃塩酸
廃リン酸
写真定着廃液
有機廃酸類などの酸性廃液

廃酸の廃棄量統計

平成28年度の産業廃棄物の種類別排出量の統計によると、廃酸の排出量は2,740千トン(全体の0.7%)になっており、前年度の平成27年度の廃酸の排出量2,826千トン(0.7%)と比べると、排出量は減少しています。

産業廃棄物の種類別の処理状況(図:産業廃棄物の種類別再生利用率、中間処理による減量化率及び最終処分率)の統計によると、廃酸の処理の比率は再生利用量27%、減量化量70%、最終処分量3%という結果になっています。再生利用の比率が低い順から見ていくと、汚泥(7%)、廃アルカリ(19%)、廃酸(27%)という結果になっており、産業廃棄物全体から見た排出量の割合は0.7%と比較的には少ないものの、再生利用の比率が低く、リサイクルされにくい廃棄物であることがわかります。

<参考>環境省 産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成28年度実績)について

廃酸の処分とリサイクル方法

廃酸を処分する際の特徴として、廃酸が液体で存在していることから、直に最終処分場で埋め立てるなどの処分ができず、安全面などを考慮した上で焼却や中和が行われます。

焼却

液体状の廃酸をそのまま焼却炉に投入すると燃焼の妨げになる可能性があるため、廃酸を焼却する際には廃酸を焼却炉の中に霧状に噴霧します。

中和処理

中和処理とは、廃酸を中性に近づける処理のことを言います。廃酸の中和処理は、同じく産業廃棄物の廃アルカリなどを使用して中和を行います。
しかし、廃酸の中和処理を行うことによって、廃液に含まれていた不純物が汚泥として発生する場合があるため、汚泥処理という新たな処理課題が生じることや、中和処理を行う際に人間の健康に影響を与える有毒ガスが発生する場合もあるため中和処理は十分な知識が必要とされます。

リサイクル方法

廃酸のリサイクル方法は廃アルカリへの中和剤としての利用や、イオン交換設備などで再生利用する方法があります。

<参考>環境省 特別管理産業廃棄物の処理基準の概要

社会問題化した硫酸ピッチ問題

硫酸ピッチとは、炭化水素油の精製に硫酸を使用した際に生じるもので、強酸性で腐食性を有し、毒性が強いため、人の健康または生活環境に係る重大な被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物である指定有害廃棄物に指定されています。
硫酸ピッチ問題は、脱税目的で重油と灯油から不正軽油を製造・販売し、その製造過程で生じた硫酸ピッチの不法投棄などの不適正処理が急速に増加し、社会問題化しました。平成16年に「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の改正が行われ、硫酸ピッチは指定有害廃棄物に指定され、保管できる上限が設定されるなどの処理基準が定められ、軽油の密造や軽油引取税の脱税に対しても改正地方税法による厳しい罰則を設けるなどの多くの措置がとられたことにより、平成15年度をピークに不適正処理の報告数は減少していきました。

<参考>環境省 硫酸ピッチ問題について
<参考>環境省 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」及び「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令」について

まとめ

身近な廃酸の例として、写真や映像フィルムの現像工程で使用する定着液があります。定着廃液を処分する場合は、廃液に含まれる銀を取り除いた上で中和処理を行います。
廃酸は処理中に人体に有毒なガスが発生するなどの危険性があることから、著しい腐食性を有する㏗2.0以下の廃酸は特別管理産業廃棄物とされ、廃酸の処理には十分な知識と処理技術が必要とされます。過去には硫酸ピッチ問題などの廃酸の不適正処理が問題化したことから、廃酸の処理には厳しい罰則が定められ不適正処理の数は減少したものの、廃酸の排出量に対する再生利用率は他の産業廃棄物と比べて低く、今度いかにしてリサイクルを進めていくかが廃酸処理の課題と言えるでしょう。

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