2015年に世界193カ国で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、持続可能な未来を目指すための国際的な目標です。日本でもこの目標は注目されています。
SDGsには17の目標がありますが、その中には産業廃棄物処理と密接に関連しているものもあります。これらの目標には、廃棄物処理に関する具体的なターゲットや達成方法が示されています。
本記事では、SDGsと産業廃棄物の関係や、どのように取り組むべきかについて解説します。
目次
SDGsと17の目標とは?
SDGs(持続可能な開発目標)という言葉は聞いたことがあっても、具体的に何を指しているのか知らない人もいるかもしれません。
SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳されています。全部で17の目標があり、これらは大きく5つのカテゴリーに分けると分かりやすくなります。
- 人間(People)に関する目標
- 貧困をなくす
- 飢餓をゼロにする
- 健康と福祉を全ての人に
- 質の高い教育を提供する
- ジェンダー平等を実現する
- 安全な水とトイレを全世界に
- 豊かさ(Prosperity)に関する目標
- クリーンなエネルギーを全ての人に
- 働きがいも経済成長も実現する
- 産業と技術革新の基盤をつくる
- 不平等をなくす
- 住みやすいまちづくりを進める
- 地球(Planet)に関する目標
- 「つくる責任、つかう責任」を持つ
- 気候変動に対策を講じる
- 海の豊かさを守る
- 陸の豊かさも守る
- 平和(Peace)に関する目標
- 平和と公正を全ての人に
- パートナーシップ(Partnership)に関する目標
- パートナーシップで目標を達成する
日本国内でのSDGsの認知度
2020年12月に実施された全国の5,000人を対象にした調査によると、SDGsという言葉を「聞いたことがある」と答えた人は45.6%でした。
男女別では、男性の51.4%が認知しているのに対し、女性は39.9%でした。年代別では、若い世代ほど認知度が高く、15〜29歳が52.1%、30代が48.1%、50代が44.8%、40代が43.9%となっています。
また、SDGsのどの目標や取り組みに関心があるかも調査されています。
最も関心が高いのは「健康と福祉を全ての人に」で、39.8%がこの目標に興味を示しました。次いで「貧困をなくす」が36.4%、そして「安全な水とトイレを世界中に」が31.8%でした。
さらに、どのようなSDGsの取り組みに興味があるかについては、約半数が「国の取り組み」に関心を持っていると回答しました。
SDGsに関連した国や企業の取り組み
近年、日本ではSDGsに関する取り組みが本格化しています。
特に、2020年から始まったレジ袋の有料化は、多くの人にSDGsの意識を浸透させる効果がありました。
国の取り組みに加えて、企業のSDGsへの取り組みも目立っています。
企業はSDGsに取り組むことで、ブランディングや企業イメージの向上を図っています。
例えば、使用済みペットボトルを再生して新しいペットボトルを作る企業や、古着25万着からバイオジェット燃料を製造して国内便を飛ばす航空会社など、持続可能な開発に貢献するさまざまな取り組みが行われています。
産業廃棄物とSDGsの関連性
日常生活や事業活動では、私たちはさまざまな物を消費し、使えなくなったものは廃棄します。
このような廃棄物が地球環境に大きな影響を与える可能性があるため、SDGsには目標12として「つくる責任、つかう責任」が加えられました。これには、産業廃棄物の管理や削減に関する具体的な取り組みが含まれています。
この章では、産業廃棄物処理業者と産業廃棄物を排出する事業者の両視点から、産業廃棄物とSDGsとの関係を見ていきましょう。
産業廃棄物処理業者の役割とSDGsとの関係
産業廃棄物処理業者は、産業活動から出る廃棄物を適切に処理する重要な役割を担っています。
廃棄物が適切に処理されないと、土壌や水質、大気が汚染される可能性があります。これに対処するための産業廃棄物処理業は、SDGsの目標に貢献しています。
具体的には、以下の目標に関係しています。
- 目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」:クリーンなエネルギーの使用や廃棄物処理に関連するエネルギーの効率的な利用。
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」:廃棄物の適切な処理が気候変動対策に貢献。
- 目標15「陸の豊かさも守ろう」:廃棄物による土壌や陸地の汚染を防ぐ取り組み。
産業廃棄物処理業者がSDGsに取り組むことは、環境問題の解決に大いに役立ちます。
産業廃棄物を排出する事業者の役割とSDGsとの関係
産業廃棄物を排出する事業者には、製造業、建設業、サービス業などがあります。
これらの事業活動を通じて、以下のような廃棄物が発生します。
- 製造業:廃油や金属くず
- 建設業:コンクリートや木材、鉄骨などの建築廃材
- サービス業:飲食業では食材の残りや使用済み調理油、医療業界では医療廃棄物、オフィスでは紙類や電子機器の廃棄物
これらの廃棄物が適切に処理されないと、環境汚染の原因となります。
そのため、事業者がSDGsに取り組むことは非常に重要です。
このように、目標12「つくる責任、つかう責任」では、持続可能な消費と生産を目指して、廃棄物の削減やリサイクル、再利用が求められています。
産業廃棄物処理業のSDGs取り組み事例
産業廃棄物処理業は、環境保護や社会貢献に向けた多くの取り組みを行っています。この章では、具体的なSDGsへの取り組みを紹介します。
環境に関する取り組み
- 目標6「安全な水とトイレを世界中に」
- 取り組み: 廃水処理施設の運営や、水質を改善するための技術開発。
- 例: 廃水をきれいにするための高度な処理技術を導入し、安全な水を供給する施設を運営しています。
- 目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」
- 取り組み: 産業廃棄物からバイオガスを生成し、再生可能エネルギーとして利用。
- 例: 廃棄物から発生するガスを収集してエネルギーとして活用し、クリーンなエネルギー源を提供しています。
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」
- 取り組み: CO2排出量の削減。例えば、廃棄物の焼却から出るCO2を回収し、再利用する技術の開発。
- 例: 焼却施設で発生するCO2を回収し、他の用途に再利用することで、温室効果ガスの削減を実現しています。
- 目標15「陸の豊かさも守ろう」
- 取り組み: 廃棄物処理場の適切な管理や、廃棄物からの汚染防止の取り組み。
- 例: 処理場での廃棄物管理を徹底し、土壌や生物多様性を守るための対策を講じています。
その他の取り組み
- 目標4「質の高い教育をみんなに」
- 取り組み: 従業員に対して継続的な教育や訓練を提供。
- 例: 従業員に最新の技術や知識を提供するための教育プログラムを実施しています。
- 目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
- 取り組み: 女性の雇用機会を増やし、女性のリーダーシップを促進。
- 例: 女性を積極的に採用し、リーダーシップポジションに就ける機会を提供しています。
- 目標8「働きがいも経済成長も」
- 取り組み: 定年退職後の再雇用制度の導入や、長時間労働の是正。
- 例: 定年後も再雇用の機会を提供し、働きやすい環境を整備しています。
- 目標17「パートナーシップで目標を実現しよう」
- 取り組み: 共同研究や技術交流、情報共有を推進。
- 例: 他の企業や研究機関と協力し、共同で技術開発や情報共有を行っています。
これらの取り組みは、環境保護や社会の発展に貢献し、SDGsの達成に向けた重要なステップです。
まとめ
SDGsは、環境だけでなく、経済や社会の持続可能性にも注目しています。
産業廃棄物処理業者や産業廃棄物を排出する事業者がどのようにSDGsに貢献できるかを考えることは、単に環境保護だけでなく、経済や社会全体の持続可能性を支えることにつながります。
そして、ごみの分別や食品ロスの削減など、身近な取り組みも廃棄物処理の削減に役立ちます。
これらの小さな努力が集まって、SDGsの大きな目標達成につながります。こうした意識を持って生活することは、より持続可能で豊かな暮らしを実現するための大切な一歩です。