リバースロジスティクスとは?基本概念とその活用例や重要性を解説

サステナビリティを叶える手段として、「消費者から生産者へ」という本来の物流とは逆の物流を実現するリバースロジスティクスが注目されています。

この記事では、リバースロジスティクスの基本概念や重要性について解説していきます。

リバースロジスティクスとは?

リバースロジスティクスとは静脈物流とも呼ばれ、顧客側から生産者側へと流れる物流のことを言います。

通常は、生産者から顧客に向けて商品を供給することに重点を置きます。

しかしリバースロジスティクスでは、返品対応などのために顧客側から生産者側へと逆流(リバース)すること、つまり製品が消費の終わりを迎えてからどのように取り扱われるかに焦点を当てているのが特徴です。

従来リバースロジスティクスと言えば、顧客からの返品対応が主な用途でしたが、近年ではSDGsや循環型社会の実現に向けた取り組みとしてリサイクルや再販売をするために利用することが増えています。

リバースロジスティクスの活用例

リバースロジスティックの主な活用例は以下の通り。

  • 顧客からの返品対応
  • 不良品や故障品の回収や修理
  • リサイクル品の回収や再利用・再販売
  • 廃棄物の処理や管理

リバースロジスティクスは比較的新しい概念であり、環境保護の意識が高まる中で重要性を増しています。もう少し詳しく見ていきましょう。

顧客からの返品対応

返品のプロセスは、リバースロジスティクスの中でも特に注目されています。

現在、日本ではEC市場の拡大に伴い、返品率も上昇傾向にあります。返品された商品の迅速な再販売や再処理は、在庫過剰の回避と資源の有効活用に直結します。

ある大手運送会社では、オンラインショップ事業者向けに返品対応プロセスを効率化するためのサービスを提供するなど、受付業務の効率化や対応スピードの向上を図っています。

またあるアパレル系ECサイトでは、顧客側の返品の手間をなるべく減らせるようにQRコードを活用し、送り状伝票の記入が不要なシステムを構築したり、コンビニや宅配ボックスなどから返品できる体勢を構築したりもしています。

不良品や故障品の回収や修理

不良品や故障品の回収や修理は、製造業においてリバースロジスティクスの一環です。

日本の家電リサイクル法では、使用済みの家電商品を回収し資源の再利用が義務付けられてます。これにより、2019年度には約52万トンの家電製品が回収され、約44万トンに上る資源がリサイクルされました。

さらに現代のリバースロジスティクスでは、製品の回収などの作業を行なった後、再度加工して二次マーケットで販売したり、パーツごとに再利用する仕組み(アップサイクル)も検討されています。

リサイクル品の回収や再利用・再販売

リサイクルは、リバースロジスティクスの最も一般的な形態の一つです。

製品や材料を再処理し、新たな商品の生産に再利用することで資源の消費を削減します。

日本では、ガラス・紙・プラスチックなど多岐にわたる素材がリサイクルされています。

特に紙のリサイクル率は2021年度で約66%に達しています。諸外国と比べて見ると、中国62%、アメリカ43%となり、日本は世界トップクラスのリサイクル率を誇っています。

その背景として、古紙から異物やインキを取り出す技術などに優れていることや、国民の環境意識が高く、分別回収がしっかり行われていることが挙げられます。

廃棄物の処理や管理

廃棄物処理は、リバースロジスティクスの中でも環境保護の観点から特に重要な部分です。

適切な処理と分別により、リサイクル可能な資源は再利用され、残りの廃棄物は環境に優しい方法で処理されます。日本では厳格な廃棄物処理法により、有害な廃棄物の適切な処理が義務付けられています。

製品が終生期に達した際に、有効かつ環境に優しい方法で処理されることで、廃棄物の適切な処理とリサイクルの可能性が高まります。

これまで見過ごされてきた廃棄物などに新たな価値を見出すことも、現代的なリバースロジスティクスの考え方にあたります。

リバースロジスティクスの重要性

リバースロジスティクスは、ビジネスにおいてベストプラクティス(最善の取り組み)の一部としての重要性が増しています。ビジネスは、返品商品の再利用やリサイクルを通じて、潜在的なコスト削減と利益増加の機会を見つけることができます。

またリバースロジスティクスは、環境保護やサステナビリティの実現・顧客満足度の向上やブランドイメージの向上に大きく貢献します。

より詳しく見ていきましょう。

利益率の改善

効率的なリバースロジスティクスの構築は、返品対応などにかかる送料や人件費の削減に繋がり、返品業務にかかるコストを抑えるためにも重要です。

また返送された不良品は、今後同様のトラブルが起きないように分析するための材料になります。

そのため、顧客に商品を返品・返送してもらいやすい仕組みを構築することは、今後より良い製品を開発していく上でも重要となってきます。

これらの効果により、リバースロジスティクスの整備は利益率の改善に役立ちます。

SDGsへの取り組み

リバースロジスティクスの整備は、SDGsを実現するためにも役立ちます。

例えば、返品された商品を再利用・再販売することで、新たに商品を生産する必要性を減らし、資源の有効活用を促進できます。

そのままでは再販売できないとされた製品を、部品やパーツ単位では再利用できることもあり、このような取り組みは廃棄物の削減につながるため、環境負荷を軽減するために重要です。

SDGsに貢献する取り組みを推進することは、社会的責任を果たす企業として、企業のブランドイメージの向上にも役立ちます。

顧客満足度の向上

顧客にとって利便性の高いリバースロジスティクスを構築することは、顧客満足度の向上を狙う上で重要です。

不良品や故障品などの返品を行う顧客は、基本的にその企業へ対する不満を抱えていると考える必要があります。

返品方法が分かりにくかったり、手間がかかったりすれば、顧客の不満はさらに大きくなり顧客の離脱に繋がってしまいます。

返品対応・不良品対応を効率的かつ誠実に行うことで、その企業に対する顧客の信頼感を高め、顧客満足度を向上できます。

まとめ

リバースロジスティクスは比較的新しい概念であり、環境保護の意識が高まる中で重要性を増しています。

その活動範囲は広く、顧客からの返品対応・不良品などの回収・リサイクル・廃棄物の処理や管理など多岐にわたります。

リバースロジスティクスは、物流領域にはなくてはならない存在です。

リバースロジスティクスに着目したビジネスを展開することで、顧客との接点が増加し売上増加が見込めます。企業はリバースロジスティクスの重要性を理解し、効率的な仕組みやプロセスを開発することが非常に重要となってきます。

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