建設廃棄物のリサイクル率はどのくらい?現状からリサイクル方法・事例を紹介

建設工事で排出される建設廃棄物は、排出の低減はもちろんのことリサイクル率の向上も重要視されています。平成12年には「建設工事に係る資材の再資源化などに関する法律(建設リサイクル法)」が施行され、今日まで多くの事業者が取り組んできました。2020年代に入り、建設廃棄物の排出量やリサイクル率はどのように変化しているのでしょうか。

この記事では、最新の情報をもとに建設廃棄物の現状・リサイクル率について紹介し、併せてリサイクル方法や事例を解説します。

建設廃棄物の現状

建設廃棄物については、およそ5年ごとに国土交通省が実態を調査・発表しています。最新の調査は平成30年度に実施され、建設廃棄物の排出量は約7,440万トン、最終処分量は約212万トンという結果でした。品目別の排出量を見てみると、「コンクリート塊(50%)」が半数を占めており、次いで「アスファルト・コンクリート塊(28%)」「建設汚泥(8%)」と続いています。

さらに、前回(平成24年度)、前々回(平成20年度)と比較すると、排出量は増加傾向にありますが、最終処分量は減少傾向にあることがわかります。

  • 平成20年度:排出量(約6,380万トン)、最終処分量(約402万トン)
  • 平成24年度:排出量(約7,270万トン)、最終処分量(約290万トン)
  • 平成30年度:排出量(約7,440万トン)、最終処分量(約212万トン)

このことから、建設廃棄物のリサイクル率は高まっており、資源の有効活用が進んでいるといえるでしょう。

参照過年度の建設副産物実態調査結果/国土交通省

参照建設廃棄物/建設副産物リサイクル 広報推進会議ホームページ

建設廃棄物のリサイクル率

平成30年度の建設廃棄物のリサイクル率は97%と非常に高い結果となりました。1990年代には60%程度であったことから考えても、積極的にリサイクルが進められていることがわかります。また、

国土交通省が公表する「建設リサイクル推進計画2020」のなかでは、品目別では次のように報告されました。

品目 指標 実績値 2024年達成基準
建設廃棄物全体 再資源化・縮減率 97.2% 98%以上
アスファルト・コンクリート塊 再資源化率 99.5% 99%以上
コンクリート塊 再資源化率 99.3% 99%以上
建設発生木材 再資源化・縮減率 96.2% 97%以上
建設汚泥 再資源化・縮減率 94.6% 95%以上
建設混合廃棄物 排出率 3.1% 3.0%以下
再資源化・縮減率 63.2%

出典建設リサイクル推進計画2020(国土交通省)

高い再資源化・縮減率を実現しているなかで、建設混合廃棄物だけは低い水準となっています。建設混合廃棄物とは、がれき類・廃プラスチック類・金属くず・カラスくず・陶磁器くず・ゴムくずなどの安定型産業廃棄物と、木くずや紙くずなどの廃棄物が混在している廃棄物です。混合廃棄物は高度選別再資源化施設などで選別した上で再資源化施設製品化工場に送られ、単品の廃棄物と比べると排出から再資源化までの過程が増えてしまう点が結果に繋がっていると考えられます。

国土交通省は建設リサイクル推進計画2020のなかで、維持・安定期に入った建設廃棄物(建設副産物)のリサイクルは今後「質」が重要視されるとしています。そのための施策として新たに次の3点を挙げており、2024年度の目標達成に向けて取り組みが進められている最中です。

  • 廃プラスチックの分別、リサイクルの促進
  • リサイクル原則化ルールの改定
  • 建設発生土のトレーサビリティシステム等の活用

建設廃棄物のリサイクル方法

建設廃棄物は「建設工事に係る資材の再資源化などに関する法律(建設リサイクル法)」により、適正な分別や再資源化が必要とされています。主に対象となるものは、コンクリート塊・アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材の3品目です。それぞれの建設廃棄物は、次のようなものにリサイクルされています。

  • コンクリート塊:路盤材、建築物の基礎材、コンクリート骨材など
  • アスファルト、コンクリート塊:再生アスファルト、路盤材など
  • 建設発生木材:製紙用チップ、固形燃料、セメント燃料化など

建設リサイクル法では、特定建設資材の分別解体・再資源化などが義務付けられており、工事着手の7日前までに都道府県知事に届け出ることが義務付けられているなど、細かく定められています。建設リサイクル法については、こちらの記事で解説しているため併せてご覧ください。

建設廃棄物のリサイクル事例

最後に、建設廃棄物の実際のリサイクル事例をいくつか簡単に紹介します。

解体コンクリートの有効活用で廃棄物の削減・再資源化を実現

老朽化した水力発電所のリニューアル工事の事例では、既設構造物の撤去・解体に伴い大量のコンクリート塊が発生しました。本来、建設廃棄物として廃棄されるはずのコンクリート塊30,600㎥を再生コンクリートや埋戻し材料へとリサイクルし、現場内での再資源化率約90%を達成しています。

建設廃材を利用した熱と電気へのリサイクル

大都市で発生する建設廃材などの木くずをバイオマス燃料と捉え「大都市における新エネルギーの地産地消」を実現した事例です。建設廃材となる26,487トンの木くずを燃料としてリサイクルし、434klの化石燃料の削減を実現しています。

建設汚泥を埋戻し土、セメント材料としてリサイクル

トンネル工事で発生した建設汚泥を現場内に設置したプラントで流動化処理土を製造し、埋戻し復旧に利用した事例があります。その他にも、建設発生土・建設汚泥、石灰灰をセメント材料としてリサイクル事例も報告されています。

護岸復旧工事における100%リサイクルの事例

集中豪雨によって崩壊した護岸復旧工事に置いて、河川に流出した堆積土砂を100%活用した事例があります。この事例では、河道掘削によって発生した土砂を選別ヤードに運搬し、振動スクリーンで粒径ごとにふるい分け、玉石・基礎材・裏込材・盛土材などに再利用しました。

有料処理していた落ち葉を腐葉土にリサイクル

とあるダムでは、取水口や水槽に流れ着く塵芥を除塵機で掻き揚げて人力で分別し、有料処理していました。塵芥のなかで落ち葉を腐葉土として利用するためのふん破砕分別機を制作し、落ち葉から腐葉土を作成・提供しています。

まとめ

建設廃棄物はリサイクルが進められており、平成30年度のリサイクル率は97%と非常に高い数値となっています。今後は高い水準を維持するだけでなく、リサイクルの「質」が重要視されることになるでしょう。国土交通省は「建設リサイクル推進計画2020」を公表し、2024年度の目標達成に向けて取り組みが進められています。

建設リサイクル推進計画2020と併せて、紹介した建設廃棄物のリサイクル事例も参考にし、建設廃棄物のリサイクルについて理解を深めてみてはいかがでしょうか。

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