建設廃棄物の処理を委託するためには?欠かせない委託契約書の作成方法と併せて解説

産業廃棄物は排出事業者の責任で適切に処理しなければなりません。建設工事にともない排出される建設廃棄物に関しても同様です。建設廃棄物の処理は委託できますが、その際には委託契約書の作成が必要になります。しかし、具体的な内容がわからないという方は多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、建設廃棄物の処理に関する基本的な知識と併せて、委託契約書に記載するべき項目や作成方法を解説します。

建設廃棄物とは

建設廃棄物とは、建設副産物のなかでも廃棄物処理法で規定される廃棄物に該当する物品を表します。建設副産物は建設工事にともない副次的に得られたすべての物品であり、例えば「建設発生土」は建設副産物ですが建設廃棄物には該当しません。

建設副産物 建設廃棄物 一般廃棄物
産業廃棄物 安定型産業廃棄物
管理型産業廃棄物
特別管理産業廃棄物
建設発生土
有価物(スクラップなど他人に有償で売却できるもの)

建設廃棄物は排出事業者の責任で最終処分までしっかりと管理する義務があります。

より詳しくは下記コラムをご覧ください。

建設廃棄物の処理方法

建設廃棄物の処理方法は、大きく次の2つに分けられます。

自己処理

自己処理は建設廃棄物の運搬から最終処分までを自社内で完結させる処理方法です。産業廃棄物処理法では、自己処理における運搬・処分の基準も定められています。

◆運搬

  • 産業廃棄物の飛散、流出、悪臭、騒音、振動により、周辺住民に迷惑が及ばないようにする
  • 運搬車や運搬容器などは産業廃棄物が飛散・流出せず、悪臭が漏れるおそれがないものにする
  • 運搬車は社外の両側面に産業廃棄物収集運搬車であることを表示する

◆処分

  • 産業廃棄物の野外焼却は禁止
  • 処分施設は囲いを設ける、掲示板を掲げるなどの基準に従って設置する
  • 償却する場合は焼却設備の構造基準・維持管理基準を守る
  • 一定限度を超えた多量の廃棄物の保管は禁止
  • 帳簿を備え、環境省令で定められた事項を記載する

委託処理

運搬・処理を委託することも可能であり、その場合には受託基準を守って契約書を交わし、マニフェストを交付して処理状況を管理しなければなりません。委託する場合に注意すべき主な点は次のとおりです。

  • 各都道府県の許可を得ている運搬・処理業者を選択する
  • 委託する業者の許可証から許可品目、有効期限、処理能力を確認する
  • 収集運搬業者は排出場所と処分先の両方で許可を得ていることを確認する
  • 受託契約はそれぞれの業者と直接行う(2者間契約)
  • 受託契約書、マニフェストは5年間保管する

「運搬は自社で行ない処理は委託する」ということも可能ですが、その場合には前述の自己処理・委託処理の双方の基準をそれぞれの事業者が満たす必要があります。

建設廃棄物処理の委託契約書とは

委託する場合には収集運搬業者・処理業者のそれぞれとの間で、法令に定められた事項を含む契約を書面で締結する必要があります。この際に用いられる契約書が受託契約書です。

委託契約書の記載項目

委託契約書には必須となる記載項目があり、収集運搬・処分によっても必要となる記載項目は変わります。委託契約書を作成する際には、以下の記載項目の対応表を確認して必須項目の漏れがないように注意しましょう。

必要な条項 収集運搬 処分
委託する産業廃棄物の種類 適用 適用
委託する産業廃棄物の数量 適用 適用
運搬の最終目的地 適用
処分または再生の場所の所在地 適用
処分または再生の方法 適用
処分または再生の施設の処理能力 適用
最終処分の場所の所在地 適用
最終処分の方法 適用
最終処分施設の処理能力 適用
委託契約の有効期間 適用 適用
委託者が受託者に支払う料金 適用 適用
産業廃棄物許可業者の事業の範囲 適用 適用
積替え又は保管 [収集運搬業者が積替え、保管を行う場合に限る]
 積替え保管場所の所在地 適用
 積替え保管場所で保管できる産業廃棄物の種類 適用
 安定型産業廃棄物の場合、他の廃棄物との混合への許否等 適用
委託者側からの適正処理に必要な情報
 産業廃棄物の性状及び荷姿に関する情報 適用 適用
 通常の保管で、腐敗・揮発等の性状変化がある場合の情報 適用 適用
 他の廃棄物と混合等により生ずる支障等の情報 適用 適用
 JISC0950に規定する含有マークの表示に関する事項 適用 適用
 石綿含有産業廃棄物、水銀含有産業廃棄物又は水銀含有ばいじん等が含まれる場合は、その旨 適用 適用
 その他取り扱いの際に注意すべき事項 適用 適用
契約期間中に適正処理に必要な情報(上記6項目)に変更があった場合の情報伝達に関する事項 適用 適用
委託業務終了時の受託者の委託者への報告に関する事項 適用 適用
委託契約を解除した場合の処理されない産業廃棄物の取り扱い 適用 適用

引用東京都環境局(委託契約書)

契約書に添付する書面

契約書と併せて、契約締結時には以下の書面も添付する必要があります。

  • 産業廃棄物処理の収集運搬・処分業者の許可証の写し
  • 受託可能な事業者であることを証明する書面、各種認定制度の認定証の写し

建設廃棄物処理の委託契約書の作成方法

建設廃棄物の処理を委託する場合には委託契約書は必須ですが、前述のとおり契約書に記載しなければならない必須項目も多く、複雑であるため一から作成することは大変です。そこで、委託契約書を作成する場合にはテンプレート(雛形)である「モデル契約書」を利用しましょう。

東京都環境局では、収集運搬用・処分用などに分けられたモデル契約書を公開しています。記入例も含めて公開されているため、こちらのモデル契約書をもとに作成することをおすすめします。

参照委託契約書-2モデル契約書(東京都環境局)

まとめ

建設廃棄物の処理方法は大きく「自己処理」と「委託処理」に分けられますが、いずれの場合も法令で定められた基準に従い適切に処理しなければなりません。また、委託処理の際には委託契約書の作成が必須です。

委託契約書には必須となる記載項目があり、収集運搬・処分によっても記載すべき内容は異なります。作成する際にはこの記事の内容と併せて、公開済みの「モデル契約書」を使って作成してみてはいかがでしょうか。

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