業界・業種によっては事業活動を続けるなかで、産業廃棄物が出ることは避けられません。産業廃棄物は適切に処理する必要があり、排出事業者には責任が伴います。では、具体的に産業廃棄物排出事業者は、どのような場合に対象となるのでしょうか。
この記事では、産業廃棄物事業者の概要や果たすべき責任について解説し、併せて産業廃棄物の処理方法を簡単にまとめます。
目次
産業廃棄物排出事業者とは
産業廃棄物排出事業者とは、事業活動で生じる廃棄物のうち廃棄物処理法で定義された20種類の廃棄物(産業廃棄物)を排出する事業者を表します。企業活動によって排出される廃棄物は、「産業廃棄物」と一「般廃棄物」に大別されます。「燃え殻」や「廃油」「金属くず」などが代表的な産業廃棄物の例であり、産業廃棄物以外の廃棄物が一般廃棄物です。
廃棄物処理法において、産業廃棄物は「自らの責任において適切に管理・処理しなければならない」と記されています。よって、事業活動によって産業廃棄物を排出した事業者が、そのまま産業廃棄物事業者に該当すると考えてよいでしょう。
産業廃棄物排出事業者の責任とは
産業廃棄物排出事業者は、産業廃棄物を自社で処理する場合はもちろんのこと、委託する場合においても果たすべき責任が存在します。
適正に処理する義務
廃棄物処理法の第3条には「事業者は、事業活動に伴って生じた廃棄物を、自らの責任において適正に処理しなければならない」と記されており、これを「排出事業者責任」と呼びます。廃棄物の処理を委託する場合においても、自治体が許可した運搬業者・処分業者に委託しなければなりません。
委託基準を守り契約書を交わす
廃棄物処理法では、明確に「許可のない者に処理を委託してはならない」旨の記載があります。収集運搬業者を選定する場合には排出場所と運搬先の療法で許可を得ていることを確認し、処分業者を選定する場合は廃棄物を適切に処理できる許可を持った施設かどうかを現地に出向いて確認・記録することが重要です。
また、委託の際には「委託契約書」を締結しなければなりません。委託契約書は排出事業者と収集運搬業者、排出事業者と処分業者のように直接2者間で行う必要があります。
マニフェストを利用して管理
また、委託契約書だけでなく「マニフェスト(産業廃棄物管理表の通称)」も作成する必要があります。これも廃棄物処理法によって「排出事業者は、運搬または処分を他人に委託し引き渡す際に、マニフェストを利用して管理しなければならない」と明確に記載されています。これはマニフェストによって廃棄物の移動状況を管理する必要があるからです。マニフェストは紙と電子のどちらでも問題ありませんが、排出事業者が自ら交付して5年間保管しなければなりません。
罰則を受ける可能性がある
もしも、前述の責任を産業廃棄物排出事業者が果たさなかった場合、最大で5年以下の懲役または3億円以下の罰金といった罰則を受ける可能性があります。違反行為としては次のような例が挙げられますが、このような罰則を受けることのないようにしっかりと対応することが重要です。
- 廃棄物の不法投棄
- マニフェストを不交付、虚偽等
- 契約書を作成せず処理
- 無許可業者への委託処理
産業廃棄物の処理方法
産業廃棄物の処理方法は大きく「委託処理」と「自社処理」の2種類に分けられます。それぞれに守るべき基準が法で定められているため、しっかりと基準を確認した上で進めるようにしましょう。ここでは、簡単にそれぞれの処理方法について解説します。
他社に処理を委託する場合
他者に処理を委託する場合はここまでに解説したとおり、委託基準を守って契約書を交わし、マニフェストを作成して管理する必要があります。また、収集運搬業者・処分業者ともに自治体から許可を受けた事業者であることを事前に確認しておくことが重要です。委託する場合には、おもに次のような点に注意して対応を進めましょう。
- 委託する業者の許可証から許可品目、有効期限、処理能力を確認する
- 収集運搬業者は排出場所と処分先の両方で許可を得ていることを確認する
- 受託契約はそれぞれの業者と直接行なう(2者間契約)
- マニフェストを交付し、産業廃棄物の移動・処理状況を管理する
- 受託契約書、マニフェストは5年間保管する
自社で処理する場合
自社で産業廃棄物を処理する場合の基準も定められています。運搬と処分の際に守るべき基準について見ていきましょう。
運搬
- 産業廃棄物の飛散、流出、悪臭、騒音、振動により、周辺住民に迷惑が及ばないようにする
- 運搬車や運搬容器などは産業廃棄物が飛散・流出せず、悪臭が漏れるおそれがないものにする
- 運搬車は車体の両側面に産業廃棄物収集運搬者であることを表示する
処分
- 産業廃棄物の飛散、流出、悪臭、騒音、振動により、周辺住民に迷惑が及ばないようにする
- 処分施設は囲いを設ける、掲示板を掲げるなどの基準に従って設置する
- 産業廃棄物の野外償却は禁止
- 焼却する場合は焼却設備の構造基準・維持管理基準を守る
- 一定限度を超えた多量の廃棄物の保管は禁止
- 帳簿を備え、環境省令で定められた事項を記載する
まとめ
産業廃棄物排出事業者とは、事業活動で生じる廃棄物のうち廃棄物処理法で定義された20種類の廃棄物(産業廃棄物)を排出する事業者を表します。産業廃棄物排出事業者は、産業廃棄物を自ら処理する場合はもちろんのこと、委託する場合にも果たすべき責任が存在します。
「委託したら終わり」ということはなく、委託契約書の作成やマニフェストによる廃棄物の移動状況・処理状況の管理が必要です。もしも、責任を果たさなかった場合には罰則を受ける可能性があります。自社で処分する場合と委託する場合では、果たすべき責任にも違いがあるため、両者の違いを理解した上でしっかりと対応するようにしましょう。