
地球環境の保全、化石資源の枯渇危機への対応として、バイオマス燃料の活用が注目されています。再生可能な生物由来の有機資源(バイオマス)にはさまざまなものが存在しますが、そのなかでもPKS(パーム椰子殻)はご存知でしょうか。
この記事では、PKS(パーム椰子殻)の概要やメリット、使用事例や今後の課題、併せて知っておきたいFIT/FIP制度との関係について解説します。
PKS(パーム椰子殻)とは
PKS(Palm Kernel Shell)はアブラヤシの殻です。植物油の一種であるパーム油は、アブラヤシの実や種から取得できるものであり、油を搾り取ったあとの殻を乾燥させるとPKS(パーム椰子殻)としてバイオマス燃料になります。
ヤシの実というとココナッツ(ココヤシ)を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、PKS(パーム椰子殻)は大きな果房がなるアブラヤシが原料です。果房は20~30Kgほどで小さな果実が詰まっており、果肉はオレンジ色であるためココナッツとは大きく異なります。
PKS(パーム椰子殻)はおもにインドネシアやマレーシアから輸入されており、インドネシアでの生産量は年間1,100万トンといわれています。
PKS(パーム椰子殻)の環境へのメリット
前述のとおり、PKS(パーム椰子殻)はパーム油を搾り取ったあとの残りかす(残渣)といえます。これまではゴミとして処分にもコストがかかっていましたが、バイオマス燃料として利用することで新たな燃料資源となりました。
PKS(パーム椰子殻)は安価な燃料として使用でき、油分を含んでいるため一般的な木材よりも熱量が高い点が特徴です。また、植物由来の燃料であるため、成長時に取り込んだ二酸化炭素とエネルギーとして焼却する際に発生する二酸化炭素の量が相殺される「カーボンニュートラル」を実現できます。
相対的に二酸化炭素の排出量を抑制し、地球環境に優しい燃料としてPKS(パーム椰子殻)は注目されています。
PKS(パーム椰子殻)の使用事例
PKS(パーム椰子殻)は、おもにバイオマス燃料としてバイオマス発電所で利用されています。また、石炭灰を使用している火力発電所でも「混焼」という方法で石炭灰の使用量を減らし、二酸化炭素の排出量を削減する取り組みでも利用されます。
火力発電では燃料を焼却した際に発生する灰を埋め立てる場所の確保が難しい点が課題です。しかし、灰をゼオライト化して処理費用をなくすだけでなく、環境保全にも役立てる取り組みも実施されています。ゼオライトは工業触媒や吸着剤、乾燥剤、肥料、飼料添加物などのさまざまな活用用途があり、灰をゼオライト化することは燃料を使い終わっても余すことなく利用することにつながります。
PKS(パーム椰子殻)の今後の課題
バイオマス燃料として地球環境に優しい一方で、いくつか課題も存在します。
一つは異物の除去や水分含有率のコントロールが難しく、品質面の課題が挙げられるでしょう。PKS(パーム椰子殻)はパーム油の残渣であり、パーム油を抽出する際の生産工程における金属などの異質物を除去する必要があります。異物の除去・水分含有率をコントロールし、安定した品質のPKS(パーム椰子殻)を生成することは今後の課題といえます。
また、おもな生産国であるインドネシアにおいては、買い手となる日本の需要がインドネシア側の供給の能力を超えるようになってきている点も課題です。日本としては安定的な供給を望んでいますが、生産国側が対応しきれない、という現状です。
PKSのFIT制度とは
PKS(パーム椰子殻)は、バイオマス発電の燃料としてFIT制度で認定されています。FIT制度とは、電力会社による固定価格での買取制度です。
現在ではFIT制度は終了し、2022年4月から「FIP制度」が始まりました。FIP制度は再生可能エネルギーの売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せし、電力市場に統合しながら導入を促進する仕組みです。
PKS(パーム椰子殻)をはじめとするバイオマス燃料などを利用する再生可能エネルギーは、発電に天候や自然条件の影響を大きく受けます。一般的な発電方法に比べると不安定な電源といえ、発電事業者にとっては投資対効果が低くなりやすいため導入が進みません。
そこで、発電事業者は需要の多寡によらず、一定の単価で売買することを可能とする制度としてFIP制度がスタートしました。
まとめ
PKS(パーム椰子殻)は、パーム油を取得したアブラヤシの殻を乾燥させたバイオマス燃料です。安価な燃料として利用でき、油分を含んでいるため一般的な木材よりも熱量が高いため、バイオマス燃料として注目されています。
自然由来の燃料であるため、カーボンニュートラルを実現して二酸化炭素の排出量を削減することができ、地球環境の保全に役立てられるなどのメリットがあります。一方で、異物の除去や水分含有率のコントロール、供給の不安定性などが課題です。
PKS(パーム椰子殻)はおもにバイオマス発電所で燃料として利用されていますが、通常の発電所でも混焼によって二酸化炭素の排出量を抑制する取り組みでも利用されています。バイオマス発電の注目度が高まっていることから、今後はPKS(パーム椰子殻)の重要度も高くなっていくでしょう。