産廃メディアでは、「産業廃棄物」略して「産廃」に関する情報を発信しております。
そもそも産業廃棄物とは何か、どのように取り扱ったらよいのか、など、皆さんのちょっとした疑問を解消できる、そんな情報がたくさん詰まった場所になればいいな、と思っています。
目次
産業廃棄物とは
さて、まずは「産廃メディア」が扱うテーマである「産業廃棄物」とは一体何か、まずはそこをお伝えできればと思います。
まず、そもそも「廃棄物」とは、一般的に言う「ゴミ」のことで、我々は、法人・個人を問わず、日常生活を営む中で誰しもが必ず排出しているものです。
「廃棄物」は、大きく「産業廃棄物」と「一般廃棄物」とに分けられます。「産業廃棄物」とは、事業活動によって生じる廃棄物のうち、「廃棄物処理法」で定義された20種類の廃棄物のことです。対して「一般廃棄物」は、廃棄物の中で、「産業廃棄物以外のもの」と定義されます。
産業廃棄物と一般廃棄物との違い
すなわち、産業廃棄物と一般廃棄物の違いは、一言で言えば、「『廃棄物処理法』に規定があるかどうか」ということになります。この「一般廃棄物」はさらに3種類に分けることができます。
まず1つ目、事業活動によって発生する廃棄物のうち、「産業廃棄物」以外のものを「事業系一般廃棄物」と言います。そして2つ目は、事業活動ではなく、我々各個人の日常生活で生じる産業廃棄物である「家庭系一般廃棄物」。そして最後は、感染性であり、取り扱いに特に注意が必要な一般廃棄物のことを指す「特別管理一般廃棄物」です。
以上のことを表形式でまとめると、下記の通りになります。
「廃棄物処理法」に規定が… | 種別 | ||
---|---|---|---|
廃棄物 |
ある | 産業廃棄物 | |
ない |
一般廃棄物 |
事業系産業廃棄物 | |
家庭系一般廃棄物 | |||
特別管理一般廃棄物 |
産業廃棄物の種類
「廃棄物」の分類について分かったところで、今度は、産業廃棄物の種類について見ていきましょう。廃棄物処理法で定義された「20種類の」廃棄物にはどんなものがあるのか、以下の表にすべてまとめました。
中分類 | 種類 |
---|---|
業種によらず発生しうる産業廃棄物 | 1. 燃え殻 2. 汚泥 3. 廃油 4. 廃酸 5. 廃アルカリ 6. 廃プラスチック類 7. ゴムくず 8. 金属くず 9. ガラス・コンクリート・陶磁器くず 10. 鉱さい 11. がれき塁 12. ばいじん |
特定の業種から発生する産業廃棄物 | 13. 紙くず 14. 木くず 15. 繊維くず 16. 動物系固形不要物 17. 動植物系残渣 18. 動物の糞尿 19. 動物の死体 |
20. 上記産業廃棄物の処分のために処理したもので、1~19いずれにも該当しないもの |
産業廃棄物の処理の流れ
さて、ここまで、産業廃棄物の定義や種類についてお話ししてきました。ここからは、産業廃棄物の処理の流れについて、ご紹介します。
実は、産業廃棄物の処理については、「収集・運搬」「中間処理」「最終処分」の3つのステップを踏まなければならない、と決められております。
収集・運搬
まずは産業廃棄物を、排出された場所で収集し、適切な処理が可能な場所まで運搬します。産業廃棄物を排出した業者が、自ら排出した産業廃棄物を収集・運搬する場合には、特段地方自治体などの許可は必要ありませんが、他の業者からこれを委託する場合には、それ専用の許可をもらうことが必要です。
また、こうした許可を出すのは都道府県の仕事ですので、産業廃棄物の収集場所と運搬先が都道府県をまたいでいる場合には、それぞれの都道府県から許可をもらう必要がある、というのは、難点の1つではあります。
中間処理
産業廃棄物の運搬が終わったら、次は「中間処理」といわれる処理が行われます。中間処理では、最終処理に向けて、分別や、粉砕による減量化、脱水、焼却、中和などを行います。
収集した産業廃棄物を、何もしないまま処分すると、膨大な量の廃棄物を処理しなければならなくなったり、処理によって有害物質を発生させたりすることになってしまいます。それを防いで、環境を汚さないようにする、可能な限り産業廃棄物を再利用可能な資源に換えるという意味で、この中間処理は大変重要なステップといえます。
最終処分
中間処理を終えた産業廃棄物は、最終的に土に埋められたり、海に捨てられたりします。そのため、あまりにも大量の産業廃棄物を処分すると、いつか使える土地がなくなってしますでしょうし、海も極めて汚染されてしまいます。また、有害物質を有害なまま処分してしまうと、生態系にも悪影響ですし、我々人間にも悪影響を及ぼしかねません。
だからこそ、我々の健康な生活を守るために、産業廃棄物処理業者が、いかに産業廃棄物の量を減らし、いかに無害化するか、ということが重要になってきます。
そして、それをできる業者はどうしても限られてくるので、産業廃棄物の処理には、地方自治体の許可が必要となる、というわけなんですね。
事業者にかかる基準とは
上記でみてきたように、産業廃棄物の処理は、我々の生活や環境に及ぼす影響が大きいため、産業廃棄物処理を受託する業者に一定の基準があることをお伝えしました。しかし、産業廃棄物処理に際して一定の基準を満たさなければならないのは、受託する側だけでなく、委託する側も同様です。
ここでは、産業廃棄物処理を委託する側の業者にかかる基準について、ご説明します。委託側にかかる基準には、「処理基準」「保管基準」「委託基準」と、大きく3つの基準があります。
これらについて、1つずつ順番に見ていきましょう。
処理基準
まず1つ目の「処理基準」は、産業廃棄物の排出業者が、自ら産業廃棄物を処理する場合に適用される基準で、産業廃棄物の収集・運搬に関する規定である「収集運搬基準」と、処分の方法に関する規定である「処分基準」の2種類があります。
収集運搬基準
収集運搬基準は、排出業者自らが産業廃棄物を収集・運搬する場合に、その途中過程において、産業廃棄物が人々の生活や自然に悪影響を与えてしまうことを防ぐための基準です。
代表的なものに、下記のようなルールがあります。
- 廃棄物の飛び散りや漏出を防ぐため、対策をとること
- 悪臭や騒音、振動などに対してしかるべき措置を講じること
- 運搬車の外側に「産業廃棄物収集運搬者」であると明記すること
- 運搬車に、事業所の名称と連絡先、運搬先、産業廃棄物の種類などを記した、特定の書類を入れておくこと
処分基準
一方、「処分基準」は、産業廃棄物の排出業者自らが、産業廃棄物を処分する場合に適用される基準で、産業廃棄物を適切に処理できるようにするためのものです。
代表的なルールには以下のようなものがあります。
- 中間処理時、廃棄物の飛び散りや、漏出を防止すること
- 中間処理時の悪臭、騒音、振動等に対してしかるべき措置を講じること
- 焼却時には燃焼室ガス温度800℃以上で焼却すること
- 焼却処理には必要な空気量を確保する通風設備を用意すること
- 焼却処理に際して、燃焼室内温度を測定すること
- 焼却処理する場合には、燃焼室温度保持のための助燃装置を設置すること
- 焼却時に煙突先端から火炎・黒煙がでないようにすること
- 焼却時に煙突から焼却灰および未燃物が飛散しないようにすること
保管基準
続いて2つ目の「保管基準」は、排出業者が産業廃棄物を収集運搬、あるいは処分するまでの「保管」に対して適用される基準です。代表的なルールには、以下のようなものがあります。
- 保管期間は、収集・運搬や処理を行うまでのやむを得ない期間のみとすること(つまり、保管期間は必要最小限にしましょう、というルール)
- 保管場所の周囲に囲いを設けること
- 保管場所の見やすい場所に、必要事項を記載した掲示板を設けること
- 積み上げた産業廃棄物が決められた高さを超えないようにすること
- ネズミやハエ、蚊などの害獣・害虫が発生しないようにすること
- 廃棄物の飛散や流出、地下浸透や悪臭の発散などを防止すること
委託基準
そして3つ目の「委託基準」は、排出業者が、産業廃棄物の収集運搬や処理を外部業者に委託する際に守るべき基準です。代表的なルールに下記のようなものがあります。
- 委託する業者との契約は書面で交わすこと
- 収集・運搬と処分を別の業者に委託する場合、それぞれの業者と契約書を交わすこと
- 契約書は契約終了後5年間保存しておくこと
- 産業廃棄物処理の受託業者に、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付し、その処理状況を確認・管理すること
産業廃棄物の問題
さて、ここまで明確で厳密なルールのもとに行われている産業廃棄物処理ですが、残念ながら、残業廃棄物に関する問題はゼロではありません。そこで、産業廃棄物に関連する問題についてもご紹介します。
最終処分場不足
産業廃棄物に関する問題として、真っ先に上げられる問題の1つに、「最終処分場の不足」が挙げられます。
各処分業者とも、中間処理の段階で、可能な限りリサイクル可能な形に変える、適切な処理を施して容積を小さくするなど、産業廃棄物を減らす工夫を様々凝らしていますが、それでも、埋め立てによって処分される産業廃棄物の量は膨大で、今ある最終処分場は、あと10年ほどですべて埋まってしまうと言われています。
不法投棄
これは、上記の最終処分場不足が関連する問題でもありますが、産業廃棄物処理に関しては、不法投棄も大きな問題となっています。最終処分場が不足しているに伴い、産業廃棄物処理に係る費用が増大したことが、不法投棄を増やす大きな原因になってしまっているようです。
環境汚染
そして最後に、避けては通れない問題なのが、環境汚染です。生物にとって有害な産業廃棄物を、埋め立てや海への処分で処理することが環境汚染につながるのは言うまでもありません。
正しく管理され、適切に処分された埋め立て地においても、周囲の人々に健康被害を及ぼすなど、産業廃棄物が環境に与える悪影響は、ことのほか深刻だったりします。
よくある質問
最後に、産業廃棄物に関して、よくある質問にお答えします。
①少量でも産業廃棄物処理をする必要がありますか?
答えは一部の例外を除きイエスです。冒頭でお伝えした通り、産業廃棄物かどうかは、廃棄物の量ではなく、種類で決まります。産業廃棄物に関する規定の中に、量に関する規定がない以上、たとえ少量であっても、産業廃棄物に該当するものであれば、産業廃棄物として然るべき処理をしなければなりません。
②マニフェスト制度って何?
マニフェスト制度とは、産業廃棄物が適切に処理されるよう管理するために、産業廃棄物排出業者が、産業廃棄物の収集運搬や処理が適切になされているか管理・把握することを義務付けた制度です。
排出業者が委託業者に紙または電子で交付する管理票のことを「マニフェスト」と呼ぶことから、この制度の名前があります。
まとめ
以上見てきたように、産業廃棄物処理には、様々な規定があります。しかしそれは、有害な産業廃棄物が適正に処理されるよう仕組みづくりをし、自然環境や我々の健康的な生活を守るためのものなのです。