「水質汚濁防止法」について解説します。
目次
「水質汚濁防止法」とは
「水質汚濁防止法」は。公共用水域及び地下水の水質汚濁の防止を図り、もって国民の健康を保護するとともに生活環境の保全すること等を目的として、昭和45年に制定されました。
工場や事業場などから排出される水質汚濁物質について、物質の種類ごとに排水基準を定めています。
また、平成24年の改正により、有害物質による地下水の汚染を未然に防止するため、有害物質を使用・製造・処理する施設の設置者に対し、地下浸透防止のための構造、設備及び使用の方法に関する基準の遵守、定期点検及びその結果の記録・保存を義務付ける規定等が新たに設けられました。
特定施設の破損その他事故が発生により、有害物質や油を含む水や排水基準に適合しないおそれがある水が公共用水域に排水され、又は地下に浸透したことにより人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがあるときは、直ちに、排出又は浸透の防止のための応急の措置を講ずると共に、速やかにその事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければなりません。
排水基準
水質汚濁防止法では特定施設を有する事業場(特定事業場)から排水される水は、国が定めた一律の排水基準以下の濃度で排水することを義務付けています。
また、自然的,社会的条件から全国一律の排水基準では環境基準を達成維持することが困難な水域においては,都道府県条例で一律排水基準より厳しい排水基準(上乗せ排水基準)を定めることができます。
人の健康の保護に関する28項目:すべての特定事業場が対象
有害物質の種類 | 許容限度 |
カドミウム及びその化合物 | 0.03mg Cd/L |
シアン化合物 | 1 mg CN/L |
有機燐化合物(パラチオン、メチルパラチオン、メチルジメトン及び EPNに限る。) | 1mg/L |
鉛及びその化合物 | 0.1 mg Pb/L |
六価クロム化合物 | 0.5 mg Cr(VI)/L |
砒素及びその化合物 | 0.1 mg As/L |
水銀及びアルキル水銀その他の水銀化合物 | 0.005 mg Hg/L |
アルキル水銀化合物 | 検出されないこと。 |
ポリ塩化ビフェニル | 0.003mg/L |
トリクロロエチレン | 0.1mg/L |
テトラクロロエチレン | 0.1mg/L |
ジクロロメタン | 0.2mg/L |
四塩化炭素 | 0.02mg/L |
1,2-ジクロロエタン | 0.04mg/L |
1,1-ジクロロエチレン | 1mg/L |
シス-1,2-ジクロロエチレン | 0.4mg/L |
1,1,1-トリクロロエタン | 3mg/L |
1,1,2-トリクロロエタン | 0.06mg/L |
1,3-ジクロロプロペン | 0.02mg/L |
チウラム | 0.06mg/L |
シマジン | 0.03mg/L |
チオベンカルブ | 0.2mg/L |
ベンゼン | 0.1mg/L |
セレン及びその化合物 | 0.1 mg Se/L |
ほう素及びその化合物 | 海域以外の公共用水域に排出されるもの:10 mg B/L
海域に排出されるもの:230 mg B/L |
ふっ素及びその化合物 | 海域以外の公共用水域に排出されるもの:8 mg F/L
海域に排出されるもの:15 mg F/L |
アンモニア、アンモニウム化合物、 亜硝酸化合物及び硝酸化合物 |
アンモニア性窒素に0.4を乗じたもの、
亜硝酸性窒素及び硝酸性窒素の合計量:100mg/L |
1,4-ジオキサン | 0.5mg/L |
生活環境の保全に関する15項目:排水量50㎥/日以上の特定事業場が対象
項目 | 許容限度 |
水素イオン濃度(水素指数)(pH) | 海域以外の公共用水域に排出されるもの:5.8以上8.6以下
海域に排出されるもの:5.0以上9.0以下 |
生物化学的酸素要求量(BOD) | 160mg/L (日間平均 120mg/L) |
化学的酸素要求量(COD) | 160mg/L (日間平均 120mg/L) |
浮遊物質量(SS) | 200mg/L (日間平均 150mg/L) |
ノルマルヘキサン抽出物質含有量(鉱油類含有量) | 5mg/L |
ノルマルヘキサン抽出物質含有量(動植物油脂類含有量) | 30mg/L |
フェノール類含有量 | 5mg/L |
銅含有量 | 3mg/L |
亜鉛含有量 | 2mg/L |
溶解性鉄含有量 | 10mg/L |
溶解性マンガン含有量 | 10mg/L |
クロム含有量 | 2mg/L |
大腸菌群数 | 日間平均 3000個/cm3 |
窒素含有量 | 120mg/L (日間平均 60mg/L) |
燐含有量 | 16mg/L (日間平均 8mg/L) |
水質汚濁防止法と廃棄物処理法
以下の廃棄物処理施設は水質汚濁防止法の特定施設となります。
- 一般廃棄物処理施設(廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第八条第一項に規定するものをいう。)である焼却施設
- 産業廃棄物処理施設(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第十五条第一項に規定するものをいう。)のうち、次に掲げるもの
イ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和四十六年政令第三百号)第七条第一号、第三号から第六号まで、第八号又は第十一号に掲げる施設であつて、国若しくは地方公共団体又は産業廃棄物処理業者(廃棄物の処理及び清掃に関する法律第二条第四項に規定する産業廃棄物の処分を業として行う者(同法第十四条第六項ただし書の規定により同項本文の許可を受けることを要しない者及び同法第十四条の四第六項ただし書の規定により同項本文の許可を受けることを要しない者を除く。)をいう。)が設置するもの
ロ 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第七条第十二号から第十三号までに掲げる施設
水質汚濁防止法は特別法(適用対象が特定)、廃棄物処理法は一般法(適用対象が広い)の立場にあります。
そのため、水質汚濁防止法の対象となる廃棄物は、廃棄物処理法によらず水質汚濁防止法が適用されます。
まとめ
工場や事業場から有害物質の漏洩による地下水汚染事例は毎年継続的に確認されています。
中でも周辺住民が利用する井戸水から検出されることもあり、一度汚染すると回復が困難です。
工場や事業場での有害物質の非意図的な漏洩を防ぐためにも、水質汚濁防止法の順守が必要です。
関連するコラムはこちら