近年、地震や豪雨災害など、全国各地で起こる自然災害。
今回は、災害時に発生する廃棄物の対策をまとめた「災害廃棄物対策指針」について解説します。
目次
「災害廃棄物対策指針」とは
「災害廃棄物対策指針」とは、地方公共団体における
- 災害廃棄物処理計画の策定の手助け
- 自然災害による被害を軽減するための平時の備え(体制整備等)
- 災害時に発生する廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理するための応急対策や復旧・復興対策
など、災害廃棄物対策を実施する際に参考となる必要事項を整理したものです。
廃棄物処理法基本指針および災害対策基本法に基づく防災基本計画(第34条)並びに環境省防災業務計画(第36条)に基づき策定されました。
「災害廃棄物対策指針」の構成
基本事項
- 「災害廃棄物対策指針」の位置づけ
引用環境省「災害廃棄物対策指針(概要)」 - 対象とする災害
- 地震災害:地震動により直接に生ずる被害およびこれに伴い発生する津波、火災、爆発その他異常な現象により生ずる被害(地震災害に伴う放射能汚染は対象外)
- 水害:大雨、台風、雷雨などによる多量の降雨により生ずる洪水、浸水、冠水、土石流、がけ崩れなどの被害
- その他自然災害
- 災害時に発生する廃棄物
災害時は、通常の生活ごみに加えて、避難所から排出されるごみ、仮設トイレのし尿、さらには被災したものを片付ける際に排出される片付けごみなどを処理する必要があります。 - 発災後における災害廃棄物対応業務
「体制の構築、支援の実施」、「災害廃棄物処理」、「生活ごみ、避難所ごみ、仮設トイレ等のし尿の処理」など発災後の基本的な流れを解説しています。
災害廃棄物対策
災害廃棄物対策として、
- 平時の備え(体制整備等)
- 災害応急対応
- 災害復旧・復興等
の3段階に分け、自治体で「廃棄物処理計画」を策定する際の参考となる必要事項をまとめています。
平時の備え
- 自衛隊、警察、消防、民間事業者、ボランティアとの連携
- 職員への教育訓練
- 一般廃棄物処理施設等の耐震化
- 災害廃棄物の発生量・処理可能量の推計
- 仮置き場の候補地を設定
- 廃棄物処理の受け入れ施設の検討
- 住民への啓発・広報
など。
災害応急対応
- 組織体制・指揮命令系統
- 労働安全の確保
- 自衛隊、警察、消防、民間事業者、ボランティアとの連携
- 一般廃棄物処理施設等の安全性の確認及び補修
- 災害廃棄物処理実行計画の策定
- 仮置き場の設置・管理・運営
- 各種相談窓口の設置
- 住民への啓発・広報
など。
災害復旧・復興等
- 処理主体の決定
- 自衛隊、警察、消防、民間事業者との連携
- 一般廃棄物処理施設等の復旧
- 仮設トイレ等し尿処理
- 災害廃棄物処理実行計画、災害廃棄物発生量の見直し
- 仮置き場の返却
- 処理事業費の管理
など。
災害廃棄物対策指針の改定
これまでの災害廃棄物対策指針
過去、阪神淡路大震災の教訓をもとにした「震災廃棄物対策指針(平成10年)」や福井豪雨の教訓をもとにした「水害廃棄物対策指針(平成17年)」がありました。
そして、平成26年に東日本大震災の教訓をもとに、過去の指針を統合して「災害廃棄物対策指針」が策定されました。
その後、熊本地震や広島土砂災害、九州北部豪雨災害などをもとに平成30年に改定されています。
災害廃棄物対策指針の改定内容
今回の主な改定のポイントは3つです。
- 廃棄物処理法および災害対策基本法の改正を受けて、指針の位置づけを明記
- 平時、災害応急対応期、復旧・復興期、それぞれのステージで必要とされる事項を具体化
- 上記2をうけた平時の備えの充実
自治体における災害廃棄物処理計画の策定の必要性を明記しました。
また、災害が起こったあとの初動対応で実施すべき事項の具体化や、太陽光パネルや蓄電池など特別対応が必要な廃棄物の取り扱いについてまとめられました。
まとめ
自然災害の被害を軽減するために事前に体制を整備しておく必要があります。
地方公共団体は、災害の規模や地域の特性を考慮してあらかじめ災害廃棄物処理計画を策定することが求められています。
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