2020年10月26日、所信表明演説で宣言された「2050年カーボンニュートラル宣言」について解説します。
目次
2050年カーボンニュートラル宣言とは?
2020年10月26日、菅義偉内閣総理大臣は国会での所信表明演説のなかで、以下の通り宣言しました。
菅政権では、成長戦略の柱に経済と環境の好循環を掲げて、グリーン社会の実現に最大限注力してまいります。
我が国は、二〇五〇年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち二〇五〇年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします。
参照首相官邸「第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説」
「2050年カーボンニュートラル宣言」は2020年から本格的な運用が始まった「パリ協定」が大きく影響しています。
カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラルとは
一般的にカーボンニュートラル(carbon neutral)は、植物由来の原料や燃料の燃焼などで二酸化炭素が排出しても、その植物は成長過程で二酸化炭素を吸収していて、二酸化炭素の排出量は実質ゼロになるという考え方です。
最近では、人間活動で排出する二酸化炭素の量を植林や再生可能エネルギーの導入などと相殺することもカーボンニュートラルの考え方です。
「2050年カーボンニュートラル宣言」におけるカーボンニュートラル
今回の「2050年カーボンニュートラル宣言」では、「カーボンニュートラル=温室効果ガスの排出量ゼロ」を対象としています。
温室効果ガス
人間活動によって増加した温室効果ガスには
- 二酸化炭素(CO2)
- メタン(CH4)
- 一酸化二窒素
- フロンガス
- ハイドロフルオロカーボン類
- パーフルオロカーボン類
- 六フッ化硫黄
- 三フッ化窒素
があります。
2021年4月に環境省が公表した、2019年度(令和元年度)日本の温室効果ガス総排出量は12億1,200万トン。
参照環境省「2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について」
エネルギー消費量の減少(製造業における生産量減少等)や、電力の低炭素化(再エネ拡大)に伴う電力由来の CO2排出量の減少等の要因を受け前年度の総排出量(12億4,700万トン)と比べると、2.9%減少しています。
「2050年カーボンニュートラル」に向けた日本の取り組み
2050年カーボンニュートラル宣言を受けて日本では各種取り組みを進めています。
地球温暖化対策計画等の見直し
- 地球温暖化対策計画
- エネルギー基本計画
- パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略
などの政策の見直しを加速し取り組むよう総理大臣から指示がありました。
地球温暖化対策推進法の改正
- 2050年までのカーボンニュートラルの実現を明記
- 脱炭素に向けた取り組み、投資やイノベーションを加速
- 地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化の取り組みや脱炭素経営の推進
といった内容を盛り込んだ「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」が2021年5月26日に成立しました。
グリーン成長戦略
カーボンニュートラルの実現に向けて、企業などにも取り組みを促すのが「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」です。
成長が期待される14分野に実行計画、工程表が作られています。
- 洋上風力産業
- 燃料アンモニア産業
- 水素産業
- 原子力産業
- 半導体・情報通信産業
- 船舶産業
- 物流・人流・土木インフラ産業
- 食料・農林水産業
- 航空機産業
- カーボンリサイクル産業
- 住宅・建築物産業/次世代型太陽光産業
- 資源循環関連産業
- ライフスタイル関連産業
脱炭素ライフスタイルへの転換
脱炭素社会づくりに貢献する製品への買い替え・サービスの利用・ライフスタイルの選択など、地球温暖化対策に資する「賢い選択」をしていく取組を進めています。
ライフスタイルに関係の深い、住宅の脱炭素化や電動車の導入の支援なども行っています。
まとめ
これを受けて日本だけでなく、多くの国で2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。
2050年カーボンニュートラルの実現には、国だけでなく、企業・個人の取り組みも必要です。
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