全国で始まった新型コロナウイルス感染症ワクチンの廃棄処理について解説します。
感染性廃棄物に分類
医療機関などで発生する注射針は、感染または感染の恐れがある病原体が含まれていたり付着していたりするため、特別管理廃棄物のうち「感染性廃棄物」として取り扱いが必要です。
新型コロナワクチンの取り扱い
ワクチン接種では、注射針だけでなく、シリンジ(注射筒)・ワクチンのバイアル(容器)・ガーゼ・その他手袋など防護具なども排出されます。
本来であれば、血液等が付着する注射針等の廃棄物が感染性廃棄物に該当しますが、今回の新型コロナウイルス感染症にかかるワクチン接種では、
- その他の廃棄物も血液等の付着のおそれがある
- ワクチンの接種作業を効率的に進める中で廃棄物を混同するおそれがある
といった複数の理由から、すべてを感染性廃棄物として取り扱い、一括で廃棄物容器に梱包し処理委託できるものとされています。
排出事業者の留意事項
コロナワクチンの廃棄物については、医療機関が排出事業者に該当します。
排出事業者は廃棄物処理法や「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」に基づき、廃棄物が適正に処理・保管されるように以下の点に留意することが求められます。
- 感染性廃棄物は、密閉でき、収納しやすく、損傷しにくい廃棄物容器に梱包して排出すること。
- 特に、注射針等の鋭利なものについては、プラスチック製容器等の耐貫通性のある堅牢な廃棄物容器を用いること。
- 感染性廃棄物の保管場所は、周囲に囲いが設けられ、当該廃棄物の保管場所である旨等を表示した掲示板が掲げられ、当該廃棄物以外の物が混入するおそれのないよう仕切りを設けること等の必要な措置が講じられていること。
- 腐敗するおそれのある感染性廃棄物が混入している場合にあっては、容器に入れ密閉すること、冷蔵庫に入れること等腐敗の防止のために必要な措置が講じられていること。
- 発生する感染性廃棄物が少量である場合は適当な大きさの容器を選択すること。
- 既存の医療機関において、ワクチンの接種の実施と並行して通常の診療等が行われる場合、ワクチン接種の廃棄物とその他の感染性廃棄物を梱包する廃棄物容器を区別することは、廃棄物容器内の感染性廃棄物が少量の状態で排出されることにつながるため、区別しないことが望ましいこと。
- 産業廃棄物処理業者と収集の頻度や量等についてよく相談すること。
参照環境省「新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの接種に伴い排出される廃棄物の処理について(通知)」
新型コロナワクチンの処理費用
ワクチン接種に係る費用負担は、国が負担することになっています。
この費用の中にはワクチン接種で排出される廃棄物の処理費用も含まれています。
国から市町村へワクチン接種の実績に応じて交付され、市町村から医療機関へ摂取費用単価に基づいて支払われ、その医療機関が産業廃棄物処理業者に処理費用を支払う仕組みとなっています。
まとめ
まだワクチンの供給量が少なく、高齢者へのワクチン接種が始まったばかりです。
これからは医療機関以外の大規模接種会場での接種も始まるため、廃棄物の適切な保管・処理を徹底する必要があります。また、自治体では適切に処理できる産業廃棄物処理業者との連携も必要です。
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