
バーゼル条約の改正により、1月1日から規制対象となるプラスチックの廃棄物を輸出する場合には、事前に輸入国の同意が必要になりました。今回は、具体的な規制対象の判断基準について紹介しています。
目次
バーゼル条約の改正
2019年にバーゼル条約の第14回締約国会議(COP14)がジュネーブ(スイス)で開催されました。
この会議では、輸出されたプラスチックの廃棄物等が、輸入国のリサイクル過程で不適切に処理され環境汚染が生じている問題を受け、プラスチックの廃棄物を新たに条約の規制対象に追加する附属書の改正について決議されました。
この結果、2019年9月24日にバーゼル条約の附属書の一部が改正され、2021年1月1日から効力が生じることになり、1月1日からは規制対象となるプラスチックの廃棄物を輸出する場合、事前に輸入国の同意が必要になりました。
規制対象となるプラスチックの廃棄物とは?
どんなプラスチックが規制対象になるのかを適切に判断するため、日本では2020年10月1日に規制対象となるプラスチックの具体的な判断基準を明記した「プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準」が公表されています。
この該非判断基準は、1月1日以降に輸出入されるプラスチックに適用されます。
この該非判断基準を理解する上で知っておきたいのが、改正された附属書ではプラスチックの廃棄物が以下の3区分 に分類されている点です。
1. 附 属 書 Ⅱ (Y48)
2. 附 属 書 Ⅷ(A3210)
3. 附属書Ⅸ(B3011)
1.附属書Ⅱ(Y48)
全てのプラスチックの廃棄物から、「附属書Ⅷ(A3210)」と「附属書Ⅸ(B3011)」該当のプラスチックの廃棄物を除いたものを言います。
2.附属書Ⅷ(A3210)
他の有害廃棄物の定義と同様で、従来通りの判断方法です。
具体的には以下のように示されています。
附属書Ⅲの特性を示す程度に、附属書Ⅰに規定する成分を含み、又は当該成分により汚染されたプラスチックの廃棄物(当該廃棄物の混合物を含む。)
3.附属書Ⅸ(B3011)
附属書Ⅸ(B3011)については以下のような内容にとどまり、具体的にどのようなものが該当するのかは各条約締約国の解釈に任せられています。
環境上適正な方法で再生利用することを目的とし、かつ、ほとんど汚染されておらず、及び他の種類の廃棄物をほとんど含まないもの
日本では、前述した「プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準」で、附属書Ⅸ(B3011)に該当するプラスチックを明確化することで、附属書Ⅱ(Y48)との違いを明らかにするとしています。
具体的な判断基準
「プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準」は、附属書Ⅸ(B3011)のプラスチックの廃棄物が以下の2つに分類されていることを前提に作成されています。
①複数のプラスチック樹脂の混合がないもの
②複数のプラスチック樹脂※の混合があるもの
※複数のプラスチック樹脂とはPE、PP、PETを言います。
①複数のプラスチック樹脂の混合がないものの判定基準
複数のプラスチック樹脂の混合がないものかどうかを判定する基準として、下記のA~Dの条件を全て満たすものが規制対象外となり、これらの条件を満たすことが外見から確認できることが必要とされます。
A:飲食物、泥、油等の汚れが付着していないこと
B:プラスチック以外の異物が混入していないこと
C:単一のプラスチック樹脂で構成されていること
D:リサイクル材料として加工・調整されていること
規制対象外となる具体例
下図と同じプラスチックでも、何らかの理由で汚れの付着・異物の混入がある場合は、規制対象になります。
参照経済産業省 バーゼル条約第14回締約国会議(COP14)が開催されました
参照プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準
※本コラムでは、上記の「複数のプラスチック樹脂の混合がないもの判定基準」のみ紹介していますが、該非判断基準では「複数のプラスチック樹脂の混合があるものの判定基準」についても詳しく決められています。
まとめ
該非判断基準では、今回紹介した「複数のプラスチック樹脂の混合がないものの判定基準」のほかに、複数のプラスチック樹脂の混合があるものの判定基準、ペットボトル由来のプラスチックに関する判断例など、具体的な写真とともに公表されています。
次回、さらに詳しく規制対象のプラスチックの廃棄物について紹介します。