廃棄物や特定有害廃棄物の輸出入の規制に関する法律として、「廃棄物処理法」、「バーゼル法」があります。今回は、この「バーゼル法」について、また近年行われたプラスチックの廃棄物に関する改正の内容、それに深く関わる「バーゼル条約」についてまとめています。
目次
バーゼル条約とは?
バーゼル条約の正式名称は「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」です。
1980年代に多発した有害廃棄物の越境移動(国境を越える移動)によって、先進国からの廃棄物がアフリカの開発途上国に放置され環境汚染が生じるなどの問題が発生しました。これをきっかけに、国連環境計画(UNEP)が中心となって発行した条約がバーゼル条約です。締約国数は186か国(2019年12月時点)で、概要は以下の通りです。
・有害廃棄物等を輸出する際の輸入国・通過国への事前通告、同意取得の義務付け、非締約国との有害廃棄物の輸出入の禁止
・不法取引が行われた場合等の輸出者による再輸入義務
・規制対象となる廃棄物の移動に対する移動書類の携帯義務等
引用元:外務省 バーゼル条約・バーゼル法
日本のバーゼル条約加盟までの経緯
1989年 | 国連環境計画(UNEP)がスイスのバーゼルにて「バーゼル条約」を採択 |
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1992年 | 「バーゼル条約」を発効、日本では国内法「バーゼル法」を制定 |
1993年 | 日本が「バーゼル条約」に加盟 |
バーゼル法とは?
バーゼル法の正式名称は「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」です。
バーゼル法は、バーゼル条約に対応する国内担保法として1992年に制定されました。目的は以下の通りです。
第一条
この法律は、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約等の的確かつ円滑な実施を確保するため、特定有害廃棄物等の輸出、輸入、運搬及び処分の規制に関する措置を講じ、もって人の健康の保護及び生活環境の保全に資することを目的とする。
引用元:特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律
バーゼル法の規制対象物
バーゼル条約では、廃棄物であり、有害な特性を有するものを有害廃棄物として規制対象にしています。ここでの“廃棄物”とは、バーゼル条約附属書Ⅳにおける最終処分やリサイクル等の処分作業が行われるものを言います。
原則規制対象となる特定有害廃棄物の具体例
- 廃油
- 鉛蓄電池
- シュレッダーダスト
- 医薬品、医療廃棄物など
参照経済産業省 バーゼル条約・バーゼル法の規制対象物、仕組み、手続き等
プラスチックの廃棄物に関するバーゼル条約の改正
2019年4月29日から5月10日にかけて、ジュネーブ(スイス)でバーゼル条約の第14回締約国会議(COP14)が開催されました。この会議では、輸出されたプラスチックの廃棄物等が、輸入国でのリサイクル過程で不適切に処理され環境汚染が生じている問題を受け、プラスチックの廃棄物を新たに条約の規制対象に追加する附属書の改正について決議されました。
この結果、2019年9月24日にバーゼル条約の附属書の一部が改正され、2021年1月1日から効力が生じることになり、1月1日からは規制対象となるプラスチックの廃棄物を輸出する場合、事前に輸入国の同意が必要になりました。
プラスチックの廃棄物に関するバーゼル法の改正
バーゼル条約の改正に伴い、バーゼル条約の国内担保法であるバーゼル法も改正されました。
具体的には、特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律に基づく特定有害廃棄物等の範囲等を定める省令を改正し、規制対象となるプラスチックの具体的な判断基準を明記した「プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準」を公表しています。
参照環境省 「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律に基づく特定有害廃棄物等の範囲等を定める省令の一部を改正する省令」の公布及び「プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準」の公表について
参照環境省 廃棄物・特定有害廃棄物等の輸出入
まとめ
今回のバーゼル条約の附属書の一部改正では、新たな規制対象として有害なプラスチックの廃棄物や特別の考慮が必要なプラスチックの廃棄物が規定されています。
しかし、この“特別の考慮が必要なプラスチックの廃棄物”とは、どのようなものが該当するのかは各条約締約国の解釈に任せられています。日本では、該当する廃棄物を適正に判断をするため、「プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準」が公表されています。こちらもあわせて確認しましょう。