食品業界では、賞味期限を「年月日」表示から「年月」表示へ変更する動きが広がっています。賞味期限を「年月」表示にすることで食品ロス削減につながる取り組みの詳細を解説します。
賞味期限の「年月」表示
まだ賞味期限が残っているのに廃棄処分されてしまう食品ロス問題解決へ向け、食品の賞味期限を「年月日」表示から「年月」表示に変更する企業が増えています。
大手食品メーカーでは以下のような取り組みが行われています。
2018年4月より茶・果汁飲料を中心とした賞味期限8カ月以上の缶・PETボトルなど約80品目を「年月表示」へ移行します。
当社では2013年5月より賞味期限の「年月表示」への移行に取り組み、ミネラルウォーターの全商品やコーヒー、炭酸、茶飲料を中心とした賞味期限12カ月以上の缶、ボトル缶全標品について移行を完了しています。
今回の移行により、賞味期限8カ月以上の缶・PETボトルおよび賞味期限12カ月以上の全商品(約170品目)の移行が完了します。
参照アサヒ飲料株式会社 サステナビリティプロジェクトによる清涼飲料の賞味期限の「年月表示」への移行
賞味期限が1年以上の家庭用商品(常温・冷凍商品)100品目以上を対象に、賞味期限の表示を「年月日」から「年月」表示へ変更する取り組みを2020年2月より順次拡大してまいります。あわせて、賞味期限の延長を行います。
参照株式会社明治 賞味期限「年月日」から「年月」表示へ取り組みを拡大 100品目以上を対象に順次拡大
「年月」表示の場合、「表示月の末日」までが実際の賞味期限となります。例えば、賞味期限が「20年12月」と表示されている商品は、「2020年12月31日」までが美味しく食べられる期限と設定されています。
賞味期限「年月」表示に至った背景
社会的課題への取り組み
出典:外務省
SDGs(持続可能な開発目標)の目標のひとつに「持続可能な消費と生産」があります。具体的には以下のターゲットがあります。
2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
参照農林水産省 SDGsの目標とターゲット
多くの企業では、賞味期限を「年月」表示変更にあわせて、賞味期限自体を延長させて、より食品ロス削減に向けた取り組みに貢献しています
物流効率化
長年、小売店への納品は、賞味期限が前回納入した商品と同じか、それより新しい日付でないと認められないという商慣習があります。そのため、賞味期限が「年月日」表示の場合、メーカーや卸業者は細かく1日単位で在庫管理しなければなりません。
また、食品メーカーと小売店の間では「3分の1ルール」という慣習も存在しています。「3分の1ルール」とは、例えば賞味期限が6か月の場合、商品製造日から2か月以内に小売店に納品し、店舗では賞味期限の2か月前まで販売するといった慣習です。
これにより、商品が製造から2か月過ぎてしまうと小売店へ出荷することができず、メーカーへ返品されて廃棄されるという食品ロスの原因となっています。
最近はコロナ禍の影響で、食品関係の物流は供給が追い付かないこともありました。賞味期限自体を延長することや「年月」表示にすることで、商品到着の遅れによる返品や廃棄を減らすことができます。また、小売店では賞味期限の日付ごとに、商品を細かく並べなおす手間も省くことができます。
まとめ
賞味期限が十分に残っていても、小売店で販売されることなく、廃棄処分となっている食品が多くあるのが現状です。メーカー側や販売側にとって、賞味期限を大括りにすることは食品ロス問題を少しでも減らす糸口になりそうです。