
今回は、PFOS含有廃棄物について解説します。
目次
PFOS含有廃棄物とは?
PFOSまたはその塩を使用した「PFOS使用製品」の製造、使用段階などから排出されたものが廃棄物になったものをPFOS含有廃棄物と言います。
PFOSとは?
PFOSとは、ペルフルオロオクタンスルホン酸(perfluorooctanesulfonic acid)の略称です。撥水性・撥油性・耐熱性・耐薬品性に優れ、光を吸収しないなど安定性を有する性質から、撥水剤・表面処理剤・乳化剤・消火剤・コーティング剤などに用いられてきた化学物質です。
「POPs条約」の附属書Bへの追加
安定性に優れ、様々な製品に用いられてきたPFOSですが、環境中で分解されない「難分解性」と「高蓄積性」を有する点が問題となり、2009年に開催されたPOPs条約第4回締約国会議(COP4)において、PFOSまたはその塩のPOPs条約の附属書Bへの追加が採択されました。
POPsとは?
POPs(Persistent Organic Pollutants)とは「残留性有機汚染物質」を意味し、毒性・難分解性・生物蓄積性・長距離移動性を有し、人の健康または環境への悪影響を与える化学物質のこと言います。
POPs条約とは?
POPs条約(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約)は、環境中での残留性有機汚染物質(POPs)の、製造および使用の廃絶・制限、排出の削減、そして残留性有機汚染物質を含む廃棄物の適正処理などを規定しています。
日本は2002年8月に条約に加入しました。条約を締結している加盟国は、対象物質についての条約を担保できるように国内の諸法令で規制することになっています。
参照国内等の動向について(PFOS)
参照経済産業省 POPs条約
「化審法」で第一種特定化学物質に指定
POPs条約への追加を受け、日本は2010 年4月から「化学物質の審査および製など等の規制に関する法律(化審法)」において、PFOSまたはその塩を第一種特定化学物質に指定し、製造・輸入の許可制、使用の制限などの措置を講じています。
しかし、代替の見通しが立たないことを理由に、例外としてエッチング剤の製造のためのPFOSまたはその塩を使用できることも定めています。
また、当該物質が使用されている製品を取り扱う場合には、省令で定める技術上の基準に従うこと、譲渡・提供する際は告示で定める表示義務が発生します。
化審法における不可欠用途による例外的使用
代替の見通しが立たたず、人の健康、動物や植物の生育に被害を及ぼす恐れがないないことを前提に、PFOSまたはその塩は以下の3つの用途に限り、例外的に使用を認められています。
- エッチング剤の製造
(ただし、フィルタまたは無線機器が3メガヘルツ以上の周波数の電波を送受信できる化合物半導体の製造に使用するエッチング剤に限る) - 半導体用のレジストの製造
- 業務用写真フィルムの製造
参照パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びその塩について
PFOS含有廃棄物の処分方法
POPs条約では、PFOS含有量が少ない場合を除き、人の健康や動植物の生育に被害を及ぼすような有害性を示さなくなるよう破壊または不可逆的に変換するような処分方法にすることを規定しています。
よって、PFOS含有廃棄物の処分には、分解処理が必要となります。
参照環境省 令和元年度PFOS及びPFOA全国存在状況把握調査の結果について
参照PFOS含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項
参照朝日新聞 普天間の泡消火剤流出、発端は米軍のBBQ 防衛省発表
まとめ
2020年4月、沖縄県の米軍普天間飛行場でPFOSを含む泡消火剤が基地外に流出したことを防衛省が発表しました。泡消火剤に接触後、3人が一時軽度の症状を示したとされています。米軍普天間飛行場での泡消火剤の流出事故は、過去にもあったことを指摘されています。
現地では、PFOSによる発がん性などの人体への影響が問題とされており、まだ基地内に現存するPFOSを含む泡消火剤への早急な対策が求められています。