動物のふん尿とは?動物のふん尿の種類や廃棄量統計の現状と課題

動物のふん尿とは?

産業廃棄物の1種である動物のふん尿とは、畜産農業から排出された牛、馬、豚、めん羊、山羊、にわとりなどのふん尿のことを指します。

動物のふん尿の廃棄量統計

平成28年度の種類別排出量の統計によると、上位3品目(汚泥、動物のふん尿、がれき類)が前年度と同じで、この3品目が総排出量の8割以上を占めます。動物のふん尿の排出量は2番目に多く、前年度に比べ総排出量は減ったものの割合は高くなっています。
また、再生利用率は、がれき類97%に次いで95%という比較的高い結果になっています。

1 汚泥     約1億6,732万トン(43.2%) (前年度 約1億6,932万トン(43.3%))
2 動物のふん尿 約8,047万トン(20.8%) (前年度 約8,051万トン(20.6%))
3 がれき類   約6,359万トン(16.4%) (前年度 約6,421万トン(16.4%))
<参考>産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成28年度実績)について

動物のふん尿のリサイクル方法

動物のふん尿のリサイクル方法は、肥料化が一般的ですが、近年はメタン発酵や焼却・炭化による高度利用が注目されています。

肥料化(コンポスト)

窒素やリン酸などの肥料に必須な要素を含んでいる動物のふん尿を発酵や攪拌することで、高品質な堆肥として再生利用することができます。また、堆肥のペレット化により、散布性や防かびなどの貯蔵性の改善や、乾燥や圧縮による貯蔵容積や輸送コストの削減が可能です。

メタン発酵や焼却・炭化によるバイオマスエネルギーの高度利用

注目を集めているリサイクル手法として、メタン発酵や焼却・炭化によるバイオマスエネルギーの高度利用があげられます。種類は以下のものがあります。
メタン発酵
 密閉した発酵槽で液状の動物のふん尿を発酵させて排出されたメタンガスを燃焼させることで熱利用や発電を行う。
焼却
 水分量の少ないブロイラーなどのふん尿を完全燃焼させ、熱利用や発電を行う。灰は肥料としても利用できる。
炭化
 水分量の少ないふん尿を不完全燃焼させて生じた炭を土壌改良材脱臭剤として利用する。

動物のふん尿を処理する際の課題

今後の畜産業の健全な発展のために重要な課題を3つにまとめました。

1.堆肥利用の課題

耕地面積当たりの動物のふん尿の発生量は、都道府県間で大きな格差が生じています。全国各地で生産された堆肥が全農地に均一に還元されず、過剰状況にある地域が発生しています。
過剰状態にある地域では高度利用化も行い、耕畜連携の強化による地域を越えた広い範囲での堆肥利用を推進が課題とされています。

2. 高度利用の課題

高度利用は光熱費の削減や売電による収益、土壌改良材や脱臭剤に利用できるというメリットがありますが、施設整備費が高いという課題があります。

3.畜産経営への苦情

畜産経営への悪臭水質汚濁の苦情という問題があります。
家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」(家畜排せつ物法)の管理基準による、適正な管理の徹底と処理施設の整備に対する支援、悪臭防止技術の開発や水質汚濁防止法により所定の水質を満たすような処理を行うことを義務付けるなど対策はとっていますが、畜産経営の大規模化や専業化を進める上で、苦情対策を適切に講じていくことは、畜産業の健全な発展という観点から重要な課題になります。

まとめ

動物のふん尿は再生利用率が95%と高いものの、堆肥の地域間による需要と供給の課題、高度利用における設備費の課題、悪臭や水質汚濁の苦情という課題を抱えています。
今後、動物のふん尿の再生利用をすすめていくためにも、再生利用に対する正しい知識を得ることと、コスト削減に特化した機材などの設備確保は重要な取り組みになると思われます。

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