
今回は、水銀使用製品産業廃棄物について解説します。
目次
水銀に関する規則改正と新たな措置
平成25年に熊本で開催された水銀に関する水俣条約外交会議で「水銀に関する水俣条約(水俣条約)」が採択され、平成28年に日本が締結、平成29年には締約国数が50か国に達し、平成29年に発効されました。
「水銀に関する水俣条約」による水銀廃棄物の適正な管理確保のため、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令」が平成29年6月9日に公布され、平成29年10月1日施行(適用日)されました。
この改正では、水銀使用製品産業廃棄物および水銀含有ばいじんなどについて定義され、適用日からこれらの廃棄物に対して新たな措置が必要となりました。
参照水銀廃棄物の適正処理について、新たな対応が必要になります。
水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじんなどに共通する新たな措置
規則の一部改正により「水銀使用製品産業廃棄物」と「水銀含有ばいじんなど」それぞれに新たな措置が必要となりました。
新たな措置の中で、2種類の廃棄物に共通する項目は業の許可証・委託契約書・マニフェスト・廃棄物保管場所の掲示板・帳簿の5項目です。
マニフェストの交付と注意点
今回は、上表の「マニフェスト」にあたる “産業廃棄物の種類欄に「水銀使用製品産業廃棄物」または「水銀含有ばいじんなど」が含まれる旨、およびその数量を記載すること” について解説します。
排出事業者は、産業廃棄物の運搬・処分を委託業者に委託する場合、産業廃棄物が適正に処理されていることを確認するために受託者にマニフェストを交付します。交付は、処理受託者※に産業廃棄物を引き渡す際にマニフェストを交付します。以下のポイントに注意して交付します。
- 産業廃棄物の種類ごとに交付
- 運搬先が複数ある場合は、運搬先ごとに交付
- 当該産業廃棄物の種類・数量・受託者の氏名または名称がマニフェストへの記載事項と合っているかを確認して交付(水銀使用製品産業廃棄物または水銀含有ばいじんなどが含まれる場合は、その旨を記載)
水銀含有ばいじんなどの排出事業者は、マニフェストの「産業廃棄物の種類欄」に、ばいじん・燃え殻・汚泥・廃酸・廃アルカリまたは鉱さいのいずれかの記載とともに、水銀含有ばいじんなどが含まれる旨、数量を記載する点に注意しましょう。
※処理受託者とは?
受託者とは、委託を受けた者のことです。上記の「処理受託者」とは、運搬のみを委託する場合は運搬の受託者、処分のみを委託する場合は処分の受託者を言います。運搬と処分を委託する場合は、運搬の受託者に産業廃棄物を引き渡す際に、マニフェストを交付します。
マニフェストの写しの返送と注意点
処理受託者は、運搬または処分が終了した時にマニフェストの写しを、マニフェストを交付した排出事業者に送付します。
収集・運搬または処分する産業廃棄物が水銀使用製品産業廃棄物または水銀含有ばいじんなどであった場合は、マニフェストの産業廃棄物の種類欄に水銀使用製品産業廃棄物または水銀含有ばいじんなどが含まれる旨、その数量が正しく記載されているか注意しましょう。
また、運搬・処分した廃棄物が水銀含有ばいじんなどの場合は、「産業廃棄物の種類欄」にばいじん・燃え殻・汚泥・廃酸・廃アルカリまたは鉱さいのいずれかの記載に加え、水銀含有ばいじんなどが含まれる旨、その数量も記載されているか注意しましょう。
マニフェストによる適正処理の確認・保管・電子マニフェストの活用
マニフェストを交付した排出事業者は、交付したマニフェストの控えと処理受託者(委託業者)から送付されるマニフェストの写しの内容に違いがないか、適正な処理が行われたかを確認します。規定の期間内にマニフェストの写しが送られてこないとき、虚偽の記載があるときなど問題が生じた場合はすぐに産業廃棄物の処理状況を把握し、都道府県知事に報告します。排出事業者は、交付したマニフェストの控えを、返送されたマニフェストの写しとともに5年間保存します。
また、紙マニフェストに代わり、環境大臣の指定を受けた情報処理センター「財団法人日本産業廃棄物処理振興センター」の運営する電子マニフェストシステムの利用も可能です。
参照財団法人日本産業廃棄物処理振興センター
参照水銀廃棄物ガイドライン第2版
参照環境省 水銀廃棄物関係
まとめ
マニフェストを正しく交付していない場合や嘘の記載があった場合、虚偽マニフェストの交付が行われた場合、保存義務違反など、マニフェストに関する義務違反は「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という罰則が科せられます。マニフェストを交付する際には「水銀使用製品産業廃棄物」または「水銀含有ばいじんなど」が含まれる旨、その数量が正しく記載されているか注意するなど、正しくマニフェストを活用しましょう。