今回は、水銀使用製品産業廃棄物についてまとめます。
目次
水銀使用製品産業廃棄物とは?
水銀使用製品産業廃棄物とは、水銀を使用した製品が産業廃棄物となったものを言います。
水銀使用製品産業廃棄物は他の産業廃棄物に比べ、水銀の大気への飛散防止などの多くの処理基準が存在します。水銀使用製品産業廃棄物は、環境に影響を与えない適正処理の確保・処理に関する許可・契約書・マニフェストなどで取り扱い方法を明確化することで、廃棄物焼却施設に投入される水銀量を削減し、水銀の大気排出を抑制することなどを目的として設定された廃棄物区分です。
水銀使用製品産業廃棄物の対象になる廃棄物とは?
水銀使用製品産業廃棄物の対象は、産業廃棄物として排出された廃棄物のうち、排出事業者により水銀が使用されていると判別可能な水銀使用製品で、以下の製品が挙げられます。
- 製品本体に記載された製品名・品番・容器などについているラベルにより水銀などが使用されていることが判別できるもの
- 製品の用途などにより水銀などが使用されていることが判別できるもの
- 水銀の使用が目視で確認できる
具体的には、下記の①~③いずれかに該当する製品が産業廃棄物となった場合、水銀使用製品産業廃棄物の対象になります。
- 「新用途水銀使用製品の製造等に関する命令」第2条第1号または第3号に該当する水銀使用製品のうち、上の表に該当する製品
- 材料または部品として1に該当する水銀使用製品を用いて製造される組込製品(ただし、上の表の右側に×印のある物は除く)
- 1や2の他に、水銀またはその化合物の使用に関する表示がある水銀使用製品
対象になる水銀使用製品の種類とは?
水銀使用製品産業廃棄物の対象になる水銀使用製品には大きく分けて2種類あり、「水銀の使用表示の有無に関わらず対象となる製品」と「水銀が目視で確認できる場合に対象となる製品」があります。
水銀使用製品の組込製品とは?
上記の②にあたる「水銀使用製品の組込製品」とは、材料または部品として①に該当する水銀使用製品を使用していることが判別可能な組込製品のことで、水銀使用製品産業廃棄物の対象になります。ただし、上の表(水銀使用製品産業廃棄物の対象となるもの)に×印がある製品は除きます。
排出事業者が、水銀使用製品が組み込まれているかどうか判別することが難しいために、以下の水銀使用製品は対象外になります。ただし、対象外の組込製品であっても、部品として用いられている水銀使用製品を容易に取り外せる場合は取り外して廃棄する必要があり、取り出された水銀使用製品は水銀使用製品産業廃棄物の対象となります。
判別が難しいことから対象外になる組込製品
- スイッチおよびリレー
- 蛍光ランプ
- HIDランプ
- 放電ランプ
- 弾性圧力計
- 圧力伝送器
- 真空計
- 水銀充満圧力式温度計
- 顔料が塗布された製品
- 放電管
- 周波数標準機
水銀またはその化合物の使用表示がある水銀使用製品とは?
上記の③にあたる、「①や②に書かれている製品以外に水銀またはその化合物が使用されている表示がある水銀使用製品」は、水銀使用製品産業廃棄物の対象になります。具体的に、製品本体に水銀の使用表示がある水銀使用製品産業廃棄物の例として、以下のようなものがあります。
水銀使用製品産業廃棄物の対象と判断される「表示」には、以下のようなものがあります。
水銀またはその化合物の使用表示例
- 化学記号「Hg」
- 日本語による表記「水銀」
- 英語による表記「mercury」
- J-83Moss 水銀含有マーク(下図参照)
参照水銀廃棄物ガイドライン第2版(平成31年3月)
参照水銀廃棄物の適正処理について、新たな対応が必要になります。
参照環境省 水銀廃棄物関係
参照外務省 水俣条約
まとめ
水銀は人体への毒性が強く、発達途上の神経系に有害なため、適切な処理を行わずに水銀が排出されれば、様々な自然環境に影響を与え、食物連鎖によって野生生物へ影響を及ぼすと考えられています。
このような問題を踏まえ、平成25年に熊本で開催された「水銀に関する水俣条約外交会議」で、“水銀および水銀化合物の人為的な排出から人の健康および環境を保護すること”を目的に「水銀に関する水俣条約(水俣条約)」が採択され、平成28年に日本が締結、平成29年には締約国数が50か国に達し、平成29年に発効されました。