今回は、建設汚泥の再生利用について解説します。
目次
「建設汚泥の再生利用に関するガイドライン」の策定
国土交通省では平成18年6月に「建設汚泥の再生利用に関するガイドライン」を策定しました。建設汚泥の再生利用の促進・最終処分場への搬出量の削減・不適正処理の防止を図ることを目的とし、建設汚泥の処理に関する基本方針や具体的実施手順などを示しています。
ガイドラインが適用されるのは国土交通省所管の直轄事業とされており、その他の事業ではガイドラインに準拠することが期待されています。環境基本法による土壌環境基準や土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の含有量基準に適合しない建設汚泥は対象外としています。
また、各自治体によって、自治体関連工事で発生した建設汚泥・泥土※の処理に関するマニュアルや指針などが存在し、それぞれ用語の定義や分類、取り扱いについて細かく決められているため注意が必要です。
※泥土とは?
泥土とは、掘削工事などから発生する泥状の掘削物および泥水を言います。
参照千葉県 建設副産物対策
参照東京都建設泥土リサイクル指針
参照福岡市役所 環境局 建設汚泥の「自ら利用」に係る事務処理要領
建設汚泥の再生利用で基本となる方策
「建設汚泥の再生利用に関するガイドライン」においては、「自ら利用」「有償譲渡」「再生利用制度の活用」の3つの方策を基本とし、以下のように利用方法によっていずれかの方策が必要となります。
- 産業廃棄物として扱われる建設汚泥を「建設汚泥処理土※」として再生利用する場合は「自ら利用」と「再生利用制度の活用」
- 製品として再生利用する場合は「有償譲渡」
※建設汚泥処理土とは?
建設汚泥処理土とは、建設汚泥を脱水・乾燥・安定処理などの改良を行って工作物の埋戻しや土木構造物の裏込めなどの土質材料として利用できる性状のものを言います。また、改良を行って再生利用できる状態の建設汚泥再生品は 「建設汚泥処理土」と「製品(市販品)」に分けられます。製品とは、スラリー化安定処理土、路盤材、ブロック、軽量骨材などがあります。
自ら利用とは?
「自ら利用」の対象になるのは、建設汚泥が発生した現場内で再生利用する場合、建設汚泥の排出工事者と利用工事者の元請業者が同じ場合です。自ら利用を実行する際には、各都道府県の環境部局への届出などは不要ですが、適正な再生利用を図るため以下のようなことが必要となります。
自ら利用で必要な書類・手続き
- 元請業者は工事着手前に「利用計画書(処理方法、利用用途などを記載)」を作成
- 実施状況の記録
自ら利用で必要な書類・手続きの注意点
- 上記の書類は、排出側工事と利用側工事の発注者から確認を受ける
- 上記の書類を、各都道府県など環境部局から提示を求められた場合は応じる
- 一部の自治体では「個別指定制度」などの手続きを必要とする場合があるため、各都道府県などの環境部局に事前確認が必要
- 自ら利用をする場合に以下の3つが主な利用ケースになりますが、ケースCの場合は運搬を他者に委託するため、廃棄物処理法に基づき産業廃棄物処理業者の許可を有する収集・運搬業者に委託しなければいけない点に注意が必要です。
有償譲渡とは?
有償譲渡とは、建設汚泥処理物を有価物として、他人に有償で譲渡する行為のことを言います。この建設汚泥処理物とは、再資源化施設などで処理された処理物です。
有償譲渡における価格設定の注意点
譲渡行為が経済合理性に基づき、適正な対価である必要があります。具体的には、名目に関わらず処理の対価が品物などを含む金品でないこと、諸経費(資材価格や運送費など)を勘定した上でも営利活動として合理的な金額であることという点に注意する必要があります。
参照環境省 建設汚泥の再生利用指定制度の運用における考え方について
参照建設汚泥の再生利用に関するガイドライン
まとめ
ガイドラインが策定された背景には、建設汚泥の低い再資源化率、最終処分場の残余容量の逼迫、建設廃棄物の不法投棄問題があります。これらの課題解決のためにも、建設汚泥について正しい知識を身につけ、適正な処理を行うことが求められています。
建設汚泥処理を行う際には、各自治体のマニュアルなどの確認や必要な手続きも確認しましょう。
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