フロン排出抑制法とは?制定の背景と経緯について徹底解説

今回は「フロン排出抑制法」について、制定の背景や経緯についてまとめます。

2020年4月施行「フロン排出抑制法」の改正とは?

2019年6月に改正された「フロン排出抑制法(正式名称:フロン類の使用の合理化および管理の適正化に関する法律)」は、2020年4月1日に施行されました。この法律によって、フロン類※ライフサイクル(製造から廃棄まで)を見据えた包括的な対策が定められています。

今回の改正において、10年以上低迷していたフロン類の廃棄時回収率を向上させるため、機器廃棄時にフロン回収を行わないという違反に対して直接罰の導入、抜本的な対策を講じるといった改正が行われました。

※フロン類とは?

フロン
  • フルオロカーボン(フッ素と炭素の化合物)の総称
  • フロン排出抑制法における「フロン類」とはCFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)のことをいう
性質
  • 化学的安定性に優れる
  • 人体に対して毒性が小さい
使用されている業務用製品の例
  • エアコン
  • 建物の断熱材
  • 冷蔵・冷凍庫の冷媒
  • スプレーの噴射剤など

参照フロン排出抑制法の概要ポータルサイト フロン排出抑制法の概要

フロン排出抑制法の背景「オゾン層の破壊」と「地球温暖化」とは?

大気中に放出される一部のフロン(CFC、HCFC)によって、有害な紫外線を吸収して地球上の生物を守っているオゾン層が破壊され、南極でオゾンホール(オゾン層に穴が空いたような状態)が発生し、1980年から急激に拡大しました。現在は拡大傾向を脱し、予想では今世紀末に元の状態に回復するとされていますが、対策が必要なことに変わりありません。

このように、オゾン層破壊の原因となるCFC、HCFCは温室効果もあり、現在は生産・輸入が規制されています。CFC、HCFCの代わりとなる代替フロンとしてHFCへ転換が進められましたが、HFCはオゾン層破壊の原因にはならないものの、二酸化炭素の100倍から10,000倍以上温室効果があることが問題となり、地球温暖化防止のために既存のフロン使用製品によるフロン排出の抑制・低 GWP(地球温暖化係数)化・ノンフロンや温室効果の低い物質への転換が今後の課題となりました。

参照フロン排出抑制法の概要ポータルサイト フロン排出抑制法の概要

フロン排出抑制法の改正にいたるまでの経緯

フロン回収について定められた2001年の「フロン回収・破壊法」の制定から「フロン排出抑制法」へ法改正されるまでの経緯をまとめました。

2001年「フロン回収・破壊法」制定

正式名称:特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律
業務用のエアコンディショナー、冷蔵機器、冷凍機器でフロン類が充てんされているものを「第一種特定製品」と規定し、これらの整備時や廃棄時のフロン類の回収、回収されたフロン類の破壊を基本内容としています。

2007年10月「フロン回収・破壊法」改正

フロン類の回収をさらに徹底するため、以下の事項が新たに規定されました。

  1. 第一種特定製品の部品リサイクル時におけるフロン類の回収義務
  2. 第一種特定製品の整備時におけるフロン回収の適正化
  3. 建築物等の解体時における第一種特定製品の設置有無の確認義務
  4. フロン類の引渡し等を書面で管理する制度(行程管理制度)の創設
  5. 都道府県知事の指導権限等の強化

2013年6月「フロン排出抑制法」に法改正

正式名称:フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律
フロン類の回収・破壊に加え、以下のような現状を改善すべくフロン類のライフサイクル全体(製造から廃棄まで)への包括的な対策を目的として平成27年4月1日施行されました。

  1. 冷媒HFCの急増
  2. 冷媒回収率の低迷
  3. HFC の世界的な規制
  4. 機器使用中の大規模漏えいの判明
  5. ノンフロン・低GWP製品の技術開発・商業化の進展

参照フロン排出抑制法の概要ポータルサイト フロン排出抑制法の概要
参照環境省 フロン回収・破壊法の概要
参照フロン回収・破壊法の改正内容等について

まとめ

現在、世界各国で地球温暖化への対策が注目される中、フロン排出抑制法の改正・施行が行われました。適正なフロン回収を行わずに、フロンがむやみに大気中に放出されてしまうことでオゾン層破壊や地球温暖化につながることを深く理解した上で、適正な処理を行っていかなくてはなりません。

次回は、「フロン排出抑制法」改正の要点をまとめたコラムになります。

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