衣服ロスとは?日本の現状やロスが発生する原因、対策について徹底解説
Casual clothes hang on clothes rack for sale.

今回は「衣服ロス」について、日本の現状やロスが発生する原因、対策方法を解説します。

衣服ロスとは?

衣服ロスとは、衣服生産者の過剰生産や納期の遅れ、注文キャンセルなど様々な理由によって、まだ使用することができるにも関わらず廃棄される衣服のことを言います。同じような意味を含む言葉として、ファッションロス衣料廃棄ロスなどが、近年メディアで使用されています。

他国や日本の衣服ロスの現状

2018年イギリスの高級ブランドであるバーバリーが、ブランド価値をまもることを理由に、衣料品やアクセサリー、香水など売れ残り商品41億円相当を焼却処分していたことがわかり、世界から批判を浴びました。しかし、このような問題はイギリスに限った話ではありません。

小島ファッションマーケティングの調査によると、2018年に日本国内市場に出回った衣料品約29億点のうち、15億点が売れ残っていると推測されています。この売れ残った衣料品の一部が、新品のまま廃棄処分され、衣服ロスとなっていると考えられています。

参照BBCニュース
参照KFM WWD 小島健輔リポート

日本のアパレル市場規模の減少と供給量の増加

国内で衣服ロスが発生する背景として、国内のアパレル市場規模がバブル期は15兆円でしたが、現在は10兆円にまで落ち込み、減少傾向となっている現状があります。市場規模が減少傾向であるのに対し、供給量はバブル期の20億点から、現在は40億点へと増加しています。また、衣料品の購入単価や輸入単価が、1991年を基準とすると、現在はその6割程度の価格にまで下落しています。

参照繊維産業の課題と経済産業省の取組

衣服ロスが発生する原因

国内で衣服ロスが発生する原因として、過剰生産や納期の遅れ、注文のキャンセルなどが考えられます。そして、過剰生産や余剰在庫となってしまう大きな原因として、予測の難しい気象問題や流行の変化、生産者が商品を多く売りたいがために機会ロス対策として多くの商品を発注してしまうなどの問題があります。

気象問題

衣服を生産・販売する際、販売時期より前に生産発注を行います。発注する段階での予測が難しい気象の変化によって、売れる商品・売れない商品が変化します。2019年は暖冬により、暖かさを重視した衣服の売れ行きに影響を及ぼしました。

ファストファッションの流行

流行は衣服の売れ行きを左右し、生産者側が流行を見誤ることは過剰在庫を抱えてしまう原因の一つになります。近年は「ファストファッション(低価格で流行ファッションを提供すること、ファッションブランドや業態のこと)」を多くのアパレルメーカーが採用しています。

ファストファッションは、短いサイクルで大量生産し販売することが特徴です。商品を低価格で大量に販売するために、発展途上国へ生産を依頼し、仕事提供の貢献になっているという利点もあるものの、低賃金で長時間という過酷な労働環境問題も新たな課題となっています。また、最先端の流行ファッションであることから、翌年以降の着回しが難しく、低価格で手軽に購入しやすい点から無駄な消費として批判されることもあります。

機会ロス(機会損失・チャンスロス)

機会ロスとは、商品の欠品や発注数不足により、商品を売る機会を逃してしまうことを言います。機会損失、チャンスロスと呼ばれることもあります。商品販売者が売り逃しを防ぐために、売れると予測される量より多く発注してしまうことは、衣服ロスにつながる原因の一つでもあります。

商品の需要を考慮したマーケティング発注・在庫管理の徹底により売り逃しを防止することが、過剰在庫を減らし、無駄な処分をなくすことにもつながります。

参考となる企業の取り組み

こうした衣服ロスなどのファッション業界を取り巻く様々な問題に対して、企業が具体的な対策を打ち出しています。

株式会社ファーストリテイリングの取り組み

株式会社ファーストリテイリングは、ユニクロなど世界中でブランド展開しているアパレル製造小売会社です。素材から生産、商品の流通と販売、使用済み衣服の回収とリユース・リサイクルまでを一貫し、サステナビリティ活動を実施しています。デジタル活用により販売する数量の予測精度を改善、ICタグによる商品管理、自動倉庫の活用など、衣服を通しての持続可能な社会へ向けた活動を積極的に行っています。

日本環境設計株式会社のポリエステルリサイクル

衣料品の中に使用されているポリエステルを溶かし出し精製して、ポリエステル樹脂という衣服の原料として再利用することで、「廃棄しない」という取り組みを行っています。ポリエステルだけを溶かし出すという技術により、ボタンやファスナーのある衣服もリサイクルが可能となります。

参照繊維産業の課題と経済産業省の取組

まとめ

バブル期に比べ、国内での衣服の単価は下がり、消費者はファストファッションを中心に、流行りの衣服を安く購入することができるようになりました。しかし、低価格商品を大量生産するために低賃金・長時間で働くという発展途上国の労働環境問題、流行ファッションゆえに同じ衣服を長期間着るということが難しく、せっかく消費者が購入してもほとんど着られずに家庭で廃棄してしまうなど、今後解決すべきファッション業界を取り巻く問題は衣服ロスだけではありません。

これらの問題に対し、徹底したマーケティングや在庫管理、労働環境の改善やリサイクルへの取り組みなどの生産者側・企業側の活動に頼るだけでなく、一消費者として、現在持っている衣服を大切に着ること、衣服の購入の際には本当に買うべき商品か考えること、処分する際のリサイクル・処分先の確保(フリーマーケットの利用、販売店にある中古衣服の回収箱への持ち込み)など身近なところから努力をしていきたいものです。

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