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世界の地球温暖化対策
近年、世界規模で地球温暖化対策を目的とした温室効果ガスの抑制が課題とされています。環境問題に積極的なフランスなどの他国では、温室効果ガスをゼロとする脱炭素※社会を目指して、二酸化炭素排出量の多い石炭火力発電を減らし、自然エネルギーによる発電などに重点を置く国が増えています。
2019年12月に行われた第25回気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)では小泉環境相による演説が行われましたが、脱石炭に意欲的な姿勢を示さなかったことなどを理由に、世界的な環境団体「気候行動ネットワーク」から化石賞を受けることとなりました。
※脱炭素とは?
脱炭素とは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素排出を防止するために、化石燃料(石油、石炭、天然ガス)からの脱却をすることを言います。
日本の地球温暖化対策の歴史
地球温暖化対策について、化石賞を受けるといった世界からの批判もある日本ですが、日本の温室効果ガスに向けた取り組みは近年に始まったわけではありません。2012年には環境省が「廃棄物処理部門における温室効果ガス排出抑制等指針マニュアル」を公表し、廃棄物の効率的な設備の使用の改善や再生利用を目的とした廃プラスチックの適正な分別収集などをまとめ、廃棄物分野において循環型社会・低炭素社会形成に向けた取り組みがとられました。2016年に作成された「地球温暖化対策計画」では、2030年度には2013年度の温室効果ガス排出量より26%削減する目標が立てられるなど意欲的な活動を行ってきました。
<参考>環境省 廃棄物部門の指針
日本の廃棄物分野における温室効果ガス対策の現状と課題
環境省と国立環境研究所が公表した2018年度の国内の温室効果ガス総排出量は12億4,400万トンで、前年度から3.6%減少しました。
いくつか種類のある温室効果ガスの中でも、最も排出量の減少に成功したのが二酸化炭素です。その二酸化炭素排出量を排出部門別にわけた表によると、廃棄物(焼却等)に関しては増加していることがわかります。
海外への廃棄物輸出問題や、地震や台風、豪雨による災害ごみの大量発生など、国内の廃棄物に関する問題はたびたびメディアでも取り上げられています。こうした廃棄物問題に対して、廃棄物の排出量を減らすことはもちろんですが、温室効果ガス対策など地球環境という側面から見たとき、廃棄物を単純に焼却処分するのではなく、焼却処分する際に発生する熱やエネルギーを利用し、発電エネルギーとして有効活用を行い、地球の資源を有効利用していくことは廃棄物分野における今後の課題の一つと言えます。
<参考>環境省廃棄物処理に関する統計・状況
<参考>環境省 2018年度(平成30年度)の温室効果ガス排出量(速報値)について
熱回収施設設置者認定制度とは?
熱回収施設設置者認定制度とは、一般廃棄物処理施設または産業廃棄物処理施設で、環境省令が定める熱回収※施設の技術上の基準や技術者の能力が基準に適合している施設設置者が、都道府県知事から認定を受けることができる制度のことで、平成23年4月から施行されました。
※熱回収とは?
熱回収とは、廃棄物を単純に焼却処理するだけでなく、焼却処理で発生する熱エネルギーを回収・利用することを言います。
熱回収施設設置者認定制度の目的
循環型社会形成推進基本法により、熱回収できるにも関わらず再利用されていないものは、熱回収しなければならないとしています。これを受けて、熱回収施設設置者認定制度により廃棄物の熱回収を促進することで、循環型社会と低炭素社会の統合的な実現を目的としています。熱回収施設設置者認定制度により、環境省令で定める熱回収可能な技術基準と能力基準を満たす施設が、排出業者などに広く認識されることで、熱回収施設設置者認定制度を受けた熱回収施設設置者への処理委託が促進され、熱回収が推進されることをねらいとしています。
熱回収施設設置者認定制度活用の現状
熱回収施設設置者認定制度を認定するにあたり、熱回収率が年間10%以上であることを条件としています。この条件を満たすための設備コストが一般的な廃棄物処理より大幅に必要なことから、認定取得数が飛躍的に増加していません。
まとめ
日本では、温室効果ガス対策をCOP25で課題とされる以前から行ってきたにも関わらず、世界の脱炭素社会に向けた対策に遅れをとっていると指摘されています。化石賞を受けた要因として、脱炭素に向けた意欲的な姿勢を示さなかったことが挙げられます。脱炭素社会に向けて、温室効果ガスを排出させる化石燃料に頼るという発電方法の改善は、日本の課題の一つです。発電方法に関して、日本が大きな変換を起こせない理由として、コストや風土に合った水力・風力発電の開発が遅れていることや、火力発電に力を入れてきた過去などが背景にあると考えられます。
また、二酸化炭素排出量の減少に成功したという日本ですが、廃棄物部門に関しては増加しています。日本の食品ロスや災害廃棄物、海外への廃棄物輸出など廃棄物に関する問題は山積みです。こうした廃棄物問題と温室効果ガス、脱炭素社会に向けた対策として、熱回収施設設置者認定制度など国の制度をうまく活用し、地球規模の問題に積極的に取り組んでいきたいものです。