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アスベストとは?
アスベスト(石綿)とは、蛇紋石や角閃石が繊維状になった天然鉱石のことを言います。日本では安価で入手可能なことから積極的に建築材料の吹き付け材として使用された時期がありましたが、アスベストによる健康被害が問題となり、例外を除き1975年以降は吹き付けアスベストの使用が禁止されました。
アスベストを含む製品の一例
自動車の部品
電気製品
建築材料(床、壁の断熱材・保温材、天井、屋根、煙突など)
アスベストのメリット
比較的安価で入手できる
高温に強い
紡織性に優れる
電気絶縁性に優れる
抗張⼒・柔軟性に優れる
酸・アルカリなどの耐薬品性に優れる
<参考>⽯綿に関する基礎知識
<参考> ⽯綿含有建築材料の商品名
アスベストによる健康被害とその歴史
WHO(世界保健機関)により、繊維状のアスベストは肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫、肺がんの原因になる可能性があると報告されています。アスベストを原因とした発病には、アスベストに関わってから何十年後という長い潜伏期間を有する場合が多いとされています。日本では、このような健康被害の訴えを受け、アスベスト(石綿)による健康被害を受けた方やその遺族で労災補償の対象とならない人の救済を目的に、平成18年3月「石綿による健康被害の救済に関する法律施行令」が施行されました。現在は、労働安全衛生法によって、仕事でアスベストを扱う労働者の健康診断の実施義務が、事業主にあると定め、健康被害が現れた場合には労働基準監督署の認定を受けて「業務上疾病」と確認されると、労災保険で治療が可能となります。
<参考>環境省 石綿(アスベスト)って何?石綿による健康被害って何?
特別管理産業廃棄物の廃石綿(アスベスト)とは?
感染性・爆発性・毒性のある産業廃棄物を「特別管理産業廃棄物」と言います。特別管理産業廃棄物は、廃油・廃酸・廃アルカリ・感染性産業廃棄物・特定有害産業廃棄物の5種類があります。この特定有害産業廃棄物の中に廃石綿が属し、飛散性のある廃石綿が肺に入ることで中皮腫やがんの原因になる可能性が高いことが、特定有害産業廃棄物とされる要因です。
特定産業廃棄物に属する廃石綿の一例
・石綿建材除去作業で発生した吹き付け石綿
・石綿建材除去作業で発生した石綿を含む断熱材・保温材
・石綿除去作業に使用した作業着、防塵マスク、器具、廃棄されたプラスチックシートなど
・特定粉塵発生施設で発生し石綿で、集塵装置で回収された飛散の恐れのある石綿
アスベストの運搬・処分方法
飛散する恐れのあるアスベストは運搬や処分だけでなく、除去作業であっても飛散防止など徹底した注意が必要で、環境省のホームページでは「石綿含有建材除去作業等チェックリスト」が公表されています。建造物に使用されていた吹き付け材や保温材など飛散する恐れのあるアスベストは、厳重な梱包により飛散しないように運搬し、溶解処理などの無害化処理を行い、管理型最終処分場で埋め立て処分されます。また、処分業を行う物は、廃石綿等、石綿含有一般廃棄物、石綿含有産業廃棄物などそれぞれの当該業において、区域を管轄する都道府県知事または市長の許可が必要となります。
<参考>石綿含有建材除去作業等チェックリスト
<参考>石綿含有廃棄物等処理マニュアル(第2版)
まとめ
アスベストは安価で入手可能で、建築材料としての利便性が高いことから、建設物に積極的に使用されていた時期があります。吹き付け材としての使用は1975年には原則禁止されていますが、現在もアスベストを使用した過去の建築物の解体・除去作業では、飛散するアスベストの取り扱いに注意が必要なことは言うまでもありません。アスベストによる発病には長期の潜伏期間があることを考慮し、現在アスベストに関わる仕事をしている方だけでなく、過去にアスベストに関わる仕事をしていた方も定期的な健康診断は必要です。一見、過去の話ととらえがちですが、アスベストによる被害問題は現在も続いており、令和元年11月には環境大臣が「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づき、石綿による健康被害に関する医療費などの申請88件、特別遺族弔慰金等の請求21件についての医学的判定結果を独立行政法人環境再生保全機構に通知しました。